聴くと心が晴れやかになるクラシック音楽。
私にとってはヨハン・シュトラウス2世が作曲した「こうもり」序曲がそのような存在です。オペレッタ(喜歌劇)「こうもり」自体も楽しいですが、序曲も魅力満載です。
ヨハン・シュトラウス2世の曲が好きだということをあらためて実感しています。
昨日に引き続き、指揮リオール・シャンバダール、ベルリン交響楽団の演奏で楽しみました。
■ベルリン交響楽団 Lve in Concert - Strauss,Brahms
- 指揮:リオール・シャンバダール
- 演奏:ベルリン交響楽団
- Solo MUSICA【SM134】
オペレッタ(喜歌劇)「こうもり」とは

昨日は、ヨハン・シュトラウス2世が「ワルツ王」と呼ばれることをご紹介しました。しかし、シュトラウス2世には別の異名もあるのです。それが「オペレッタ(喜歌劇)の王様」です。
喜歌劇「ジプシー男爵」と並び高い評価を得ているのが喜歌劇「こうもり」です。
喜歌劇「こうもり」は、ヨハン・シュトラウス2世が1874年(明治7年)に作曲しました。その製作期間は1ヶ月半ほどだったと言われています。
原作・台本については少し混乱しそうになるのですが、順を追ってお伝えしますね。
- おおもとの原作はロデリヒ・ベンディックスの喜劇「牢獄」です。
- 「牢獄」をもとに、アンリ・メイヤックとリュドヴィック・アレヴィの二人が喜劇「夜食」を作りました。
- カール・ハフナーとリヒャルト・ジュネが喜劇「夜食」の原作に手を加えて「こうもり」の台本を作りました。
いうなれば、喜劇が別の喜劇を生み、さらに喜歌劇「こうもり」が誕生したのでした。
喜歌劇「こうもり」は作品全体にウィンナ・ワルツの要素が散りばめられています。ドイツ語を話す国々の歌劇場では大晦日に上演するのが恒例になっているそうです。それだけ愛されている作品であり、人々の生活に溶け込んでいる部分を持った作品なのでしょう。

元旦に開催されるウィーン・フィル ニューイヤー・コンサートでも「こうもり」序曲が度々演奏されています。カラヤンと小澤征爾氏が指揮者を務めた際にも「こうもり」序曲が演奏されました。
喜歌劇「こうもり」は1874年(明治7年)4月5日に、アン・デア・ウィーン劇場にて初演されました。
オペレッタ(喜歌劇)「こうもり」のあらすじ
まずは喜歌劇「こうもり」の主な登場人物からご紹介しましょう。
- ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン男爵:銀行家でお金持ち
- ロザリンデ:アイゼンシュタイン男爵の妻
- フランク:刑務所の所長
- オルロフスキー公爵:ロシア貴族、遊び人
- アルフレード:声楽の教師、ロザリンデのかつての恋人
- ファルケ博士:アイゼンシュタイン男爵の友人
- アデーレ:ロザリンデのメイド
- イーダ:アデーレの姉妹
- ブリント:アイゼンシュタイン男爵の弁護士
- フロッシュ:刑務所の看守
この話は愉快な復讐劇であり、男女の欲望をコメディタッチで描いた作品です。
まずは、なぜ「こうもり」なのか?
それはこの話の3年前の出来事に由来しているのです。
3年前、ファルケ博士とアイゼンシュタイン男爵はとある仮面舞踏会に参加します。しかし舞踏会で酒に酔いつぶれたファルケ博士をアイゼンシュタイン男爵が森に置き去りにしてしまったのです。翌日、目覚めたファルケ博士は真昼間に、仮面舞踏会に出席するための「こうもり」仮装姿のまま家路につくことに… その姿を目にした子どもは、ファルケ博士のことを「こうもり博士」と言って揶揄するのでした。
そしてここからが本題です。
ある日アイゼンシュタイン男爵の妻ロザリンデは頭を抱えていました。
- アイゼンシュタイン男爵(夫)が役人を殴ったため、5日間の禁固刑になったこと。
- ブリント弁護士に助けを求めるも、かえって状況は悪化し8日間に刑期が伸びたこと。
- かつての恋人アルフレードがロザリンデに会うために、毎日のように自宅前をうろつくこと。
なんとアルフレードは、その晩にアイゼンシュタイン男爵が刑務所に入るのを知っていて、ロザリンデと逢引きしようとたくらんでいたのでした。ロザリンデの方も満更ではないようで、人様の視線だけが気がかりといった状態でした。
そんな折、アイゼンシュタイン男爵の友人であるファルケ博士(こうもり博士)がアイゼンシュタイン邸にやって来ます。ファルケ博士は友人に「刑務所に入る前に、今夜オルロフスキー公爵邸で開催される舞踏会に参加すればいい」と言ってそそのかしたのです。アイゼンシュタイン男爵は妻ロザリンデのことを心配しますが、「黙っていればごまかせる」と言われてその気になります。
アイゼンシュタイン男爵は全く気づいていませんでした。この誘いがファルケ博士(こうもり博士)の復讐だということを。
ファルケ博士が帰った後、アイゼンシュタイン男爵は妻ロザリンデに礼服の用意をさせます。ロザリンデは、夫が自分を残して遊びに行くことに勘づきます。そして自分も愉しもうと決心し、メイドのアデーレに暇を与えます。
実はこのアデーレもオルロフスキー公爵邸の舞踏会に行く気満々だったのです。
夫とメイドを見送ったロザリンデのもとに、かつての恋人アルフレードがやって来ます。浮気に浮かれるロザリンデ。そんなとき、アイゼンシュタイン男爵を連行するために刑務所長のフランクがやって来ます。
夫の居ぬ間に男性と密会していたことを知られてはまずいと考えたロザリンデは、とんでもないことを恋人アルフレードにやらせます。それは…夫の身代わりに刑務所に入るというものでした。アルフレードはアイゼンシュタイン男爵として、刑務所に連行されたのでした。
その夜、オルロフスキー邸では盛大な舞踏会が開かれていました。退屈気味でおもしろいことに飢えているオルロフスキー公爵に対して、ファルケ博士(こうもり博士)は「こうもりの復讐」が行なわれるのだと伝えます。
舞踏会には素性を偽った面々が到着します。
まずはロザリンデのメイドのアデーレです。彼女は主人であるロザリンデのドレスを勝手に借用し身に纏い、女優オルガと名乗ります。
アイゼンシュタイン男爵は、フランス人の侯爵ルナールとしてやってきます。もちろん舞踏会のあとには刑務所に入るのですが…
ルナールことアイゼンシュタイン男爵は女優オルガを見て、妻のメイドに似ていると伝えますが、女優に扮しているアデーレに軽くあしらわれます。
そこに刑務所長のフランクまでもが、偽名「シュヴァリエ・シャグラン」を使って参加してきます。さらにはハンガリーの伯爵夫人に成りすましたロザリンデが仮面をつけて登場します。
ロザリンデは夫とメイドが楽しんでいる様子を見て、意地悪を画策するのでした。夫は刑務所に行くはずですし、メイドは勝手に自分のドレスを着ているのですから。
あろうことかアイゼンシュタイン男爵は、自分の妻と気付かずに伯爵夫人に成りすました妻を口説きはじめます。ロザリンデは、夫がその場にいた証拠として懐中時計を言葉巧みに取り上げるのでした。(何だか水戸黄門や遠山の金さんみたいな感じになりそうですよね!)
ファルケ博士のもとにも人が群がり、3年前の例の件(こうもり事件)について話をせがむのでした。(詳細まではいざ知らず、誰しもが知っているネタだったのでしょうね。)
やがて晩餐の時間となり、夜も更けて舞踏会の締めのワルツへと移ります。
出頭時間となったアイゼンシュタイン男爵は、あわてて刑務所に急ぎます。さらには刑務所長のフランクも急ぎます。すでに仲良くなっていた二人は、互いに正体を知らぬまま別々に同じ刑務所に向かうのでした。
刑務所にはアイゼンシュタイン男爵という設定で、ロザリンデの恋人アルフレードがすでに収監されていました。
看守のフロッシュが酔っ払っているところに、同じく酒に酔った所長のフランクが戻ってきます。酔った二人が漫才のようなことをしているところに、ロザリンデのメイドのアデーレとその姉妹イーダがやって来ます。
アデーレは看守のフロッシュに「女優になりたいからパトロンになって」と迫るのでした。
ところが、ルナール侯爵(実はアイゼンシュタイン男爵)が来るというので、刑務所長フランクは二人の姉妹を留置場の空き部屋に隠します。
舞踏会で仲良くなり、そして分かれたはずの二人が、刑務所で再び顔を合わせるのでした。互いに素性を確認するも、アイゼンシュタイン男爵はすでに収監されています。それを知って驚いたのはアイゼンシュタイン男爵でした。
そこに、すでに収監されているアルフレートの要請を受けたブリント弁護士が登場します。ブリントはアイゼンシュタイン男爵の弁護士を務めている人物です。
混乱の最中、アイゼンシュタイン男爵はブリントの服を取り上げて弁護士に化けます。
さらにはロザリンデが刑務所に姿を現します。昨日の経緯を夫が扮する弁護士に話します。アルフレートも混じります。
そのやり取りで我慢の限界に達したアイゼンシュタイン男爵は、自分の正体をばらして妻とアルフレートをなじるのでした。
しかし、妻ロザリンデには夫から奪った懐中時計があったのです。立場は逆転し、アイゼンシュタイン男爵の方が妻にタジタジに…
追い詰められていくアイゼンシュタイン男爵。
そこにファルケ博士が登場し、舞踏会は自分が「3年前のこうもりの復讐」のために仕組んだものだったことを告げます。
浮気も芝居だと安心するアイゼンシュタイン男爵。(本当は少し違うのですが。)
メイドのアデーレは、オルロフスキー公爵がパトロンを申し出たことで女優になる夢を叶えます。
最後はロザリンデが歌い、フィナーレとなります。
喜歌劇「こうもり」は壮大なスペクタクル感はありませんが、人々の欲望がコミカルに描かれている作品です。
この記事を書きながら、また観たくなってきました。
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ヨハン・シュトラウス2世とは

ヨハン・シュトラウス2世は「ワルツ王」とも呼ばれるオーストリアの作曲家、指揮者です。その生涯については『すぐわかる!ヨハン・シュトラウス2世とは』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:ヨハン・シュトラウス2世「こうもり」序曲について

もうだいぶ前のことになりますが、東京MXテレビがテレモンディアルが制作したカラヤンの映像を放送していた時期がありました。その番組のオープニングに流れたのが、カラヤン指揮する「こうもり」序曲だったのです。
何日にも渡って放送されていたので、観るたびに「こうもり」序曲の出だし部分を聴くことに。それで耳に馴染んだことが、私が「こうもり」序曲に関心を持つキッカケだったように思います。
今回はカラヤン指揮ではなく、リオール・シャンバダール&ベルリン交響楽団で楽しみました。
ここからは「こうもり」序曲の感想です。
出だしから華々しさを感じます。
木管楽器による穏やかな旋律のあとテンポが上がっていき、一旦静まります。その後は舞踏会を感じさせる流麗な雰囲気に。弦楽器によりさらに盛り上がっていきます。
中盤に差しかかると、それまでとは違う表情を見せ、哀愁を感じる場面に変わります。
徐々に明るさを増していき、リズムも軽やかに! 冒頭の旋律が様子を変えて繰り返されます。
ワルツを踊る場面が展開されたかと思った途端に急展開。奇抜さは感じませんが、メリハリがあってテンポがいい曲です。
「序曲っていいなぁ」と素直に思える名曲です。
「こうもり」序曲を聴くと、ヨハン・シュトラウス2世のすごさを感じます。
まとめ
- 喜歌劇「こうもり」はJ.シュトラウス2世の代表作のひとつであり、名作でもある。
- 全体的に陽気で明るく、テンポのよい序曲。
- なぜタイトルが「こうもり」なのかは、ストーリーを知らないと不思議に思うかも?