今回ご紹介するのはチャイコフスキー 三大バレエ組曲のひとつ『くるみ割り人形』です。
カラヤンとウィーン・フィルの演奏する「くるみ割り人形」の感想とあらすじをお伝えします。
■チャイコフスキー:三大バレエ組曲 カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー
- 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
- 演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
- DECCA【UCCD-4401】
くるみ割り人形とは?

「くるみ割り人形」はチャイコフスキー作曲のバレエ音楽を用いたバレエ作品(2幕3場)です。1891年(明治24年)~1892年(明治25年)頃に完成した作品です。
その原作者はチャイコフスキーではありません。お話の原作者はE.T.A.ホフマンです。今から約200年前に書かれた童話「くるみ割り人形とねずみの王様」(1816年)が原作なのです。
ロシアのサンクトペテルブルクにある有名なマリンスキー劇場の支配人だったイワン・フセヴォロシスキーという人物が、ホフマンの「くるみ割り人形とねずみの王様」を原作にしたバレエの作曲を依頼したのです。
チャイコフスキーは1890年(明治23年)に公開された「眠れる森の美女」でも成功を収めていました。それに続く第2弾として「くるみ割り人形」のバレエ曲を依頼されたわけですね。当時としては珍しいチェレスタも使用されています。
話によると、チャイコフスキーが参考にした原作は、ホフマン原作のものではなく、デュマのフランス語版小説だったとか…
ところが1892年(明治25年)12月6日に行なわれた初演は「まずまず」といったところで、成功したとは言えない感じだったそうです。
この展開、チャイコフスキーのバイオリン協奏曲に似ていませんか?名作と認識されるまでには、時間が必要だったのですね。
チャイコフスキー作曲・組曲「くるみ割り人形」とは?

1892に作られた組曲「くるみ割り人形」ですが、そもそも「組曲」とは何かを理解する必要がありますよね。
組曲は「古典組曲」と「近代組曲」に分類されるようです。
古典組曲は18世紀中ごろにバッハを最高峰として隆盛し、その後姿を消していきました。特徴は一定の形式を持っていること。
対する近代組曲は19世紀後半に確立されました。こちらは一定の形式を持たない自由な側面を持っています。バレエ音楽やオペラなどから数曲を選び出して、一連する管弦楽曲に仕上げたもの。ビゼーの「アルルの女」、グリーグの「ペール・ギュント」などと共に有名なのがチャイコフスキーの組曲「くるみ割り人形」なのです。
ですから組曲「くるみ割り人形」は、演奏会用に再編された管弦楽曲といえますね。
組曲「くるみ割り人形」は、チャイコフスキー自身がセレクトしたものです。後世の誰かではなく、作曲家自身によるものだったのでした。
当時、自ら指揮する演奏会を企画していたチャイコフスキー。
ところが手元に新作がなかったため、急遽、作曲途中のバレエ音楽「くるみ割り人形」の中から8曲を演奏会用に組み合わせたとのこと。そのため、バレエ「くるみ割り人形」の初演(1892年12月18日)よりも、組曲「くるみ割り人形」の公開(1892年3月19日)の方が早かったのです。
おもしろいエピソードですね。
でも、もしかするとくるみ割り人形の音楽を先に聴衆に聴かせておくことで、バレエの方の宣伝にもなったかもしれません。あっ、バレエ「くるみ割り人形」の初演の評判はあまりパッとしなかったんでした。宣伝効果は薄かったというところでしょうか。
組曲「くるみ割り人形」の構成

組曲「くるみ割り人形」は作曲者のチャイコフスキー自らがセレクトしているため、構成はそのまま演奏されるのが通例です。
- 小さな序曲
- 行進曲(第1幕)
- こんぺい糖の踊り(第2幕)
- トレパック(第2幕)
- アラビアの踊り(第2幕)
- 中国の踊り(第2幕)
- あし笛の踊り(第2幕)
- 花のワルツ(第2幕)
くるみ割り人形のストーリー(あらすじ)

くるみ割り人形のお話のあらすじを、かいつまんでご紹介しましょう。
舞台となるのは、とある国に王子様が生まれます。
ところがその場にいた人が、ネズミの女王様を踏んで殺してしまったのです。そのせいで、生まれたばかりの王子は呪われてくるみ割り人形にされてしまったのです。
めでたいと思いきや、なかなか残酷な幕開けです。
場面は変わってクリスマス・イブの夜。
ドイツにあるシュタールバウムさんの家で、クリスマスパーティーが開かれます。
そこに登場するのは、少女クララ。クララはドロッセルマイヤーという老人からくるみ割り人形を贈られます。
くるみ割り人形をもらってうれしいのかな?と素朴な疑問を持ったりしますが…
ですが、いたずらっ子のフリッツ(弟)と奪い合いになって壊すくらいですから、クララはうれしかったのかもしれません。結局は贈り主のドロッセルマイヤー老人が修理することに…
パーティーも終わり寝静まった夜、可哀想に思いベッドに寝かせてあったくるみ割り人形を慰めながら眠るクララ。
そこでとんでもないことが起こります。時計が真夜中の12時を知らせると、クララの体が小さくなってしまったのです。
そんな混乱しているクララのもとに、はつかねずみが大勢でやってきます。「襲い掛かった」という表現の方がふさわしいかもしれません。
それを迎え撃つのが、くるみ割り人形と兵隊の人形でした。
兵隊人形のリーダーであるくるみ割り人形とはつかねずみの王様が対決しますが、くるみ割り人形が劣勢に立たされます。そのピンチを救ったのがクララでした。
そしてくるみ割り人形が起き上がると、なんと…なんと…カッコいい王子様になっているではありませんか。王子は感謝の気持ちを込めて、クララをお菓子の国へ誘います。そして二人は旅立つのでした。
話はここで終わりません。
お菓子の国に到着した二人。
王子は魔法の城の女王であるこんぺい糖の精にクララを紹介します。お菓子の精により歓迎のパーティーがはじまります。
バレエのエンディングは2通りあります。
- お菓子の国で終わるバージョン
- クララがクリスマスツリーの側で夢から目覚めるバージョン
あなたはどちらのエンディングがお好きですか?
チャイコフスキーとは

チャイコフスキーについては、『すぐわかる!チャイコフスキーとは|チャイコフスキーの生涯と代表作について』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:チャイコフキー作曲・組曲「くるみ割り人形」について

視覚でも楽しめるクラシック音楽を考えた場合、私はオペラ(歌劇)よりもバレエに興味があります。通常の管弦楽団の奏でる姿も視覚で楽しめなくはないですが、ここでは舞台の演出的側面の話と思ってくださいね。
正直なところ私は、どちらかというとオペラ歌手の歌い方が苦手なのです。もちろん全てではありませんよ。
その点バレエには歌がありません。踊りと音楽で表現しています。そこがいいのだと思います。
実はミュージカルは大好きです。
やはり歌い方の好みの問題なのでしょう。
組曲「くるみ割り人形」のように演奏形式に編集されているものも好きです。要するに、オーケストラ演奏とバレエが好きということですね。
組曲「くるみ割り人形」はクリスマスシーズンに限らず聴いています。心が弾むような躍動感が楽しいのです。バレエの場面だけでなく、想像力も膨らませることができるのも魅力的ですね。
くるみ割り人形の曲は、ソフトバンクのCM等でも使用されているので、どこかで聞いたことのあるメロディだと感じる人が多いと思います。
何らかのカタチで耳に馴染んでいるメロディは、受け入れられやすくなっていると私は思っています。
そういった意味で、バレエ組曲「くるみ割り人形」はクラシック音楽をあまり聴いたことのない方や興味を持ちはじめた方におすすめです。1~5分程度の曲8つで構成されていますから、聴くのにそれほど時間も必要ありませんよ。
まとめ
- 組曲「くるみ割り人形」はチャイコフスキー自らが選曲した。
- CMなどで使用されている聴き馴染みのある曲が複数含まれている。
■関連CDのご案内です。
↓