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独特の色合いと自由な仕草!ジョヴァンニ・フランチェスコ・カロート作「キリストの降誕」|東武美術館「ハンガリー国立ブダペスト美術館所蔵 ルネサンスの絵画」より

ルネサンスの絵画_ジョヴァンニ・フランチェスコ・カロート「キリストの降誕」【アイキャッチ】
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ジョヴァンニ・フランチェスコ・カロートの描いた「キリストの降誕」は、独特の色合いと登場人物の仕草が印象的な作品です。

イエス・キリストの誕生をテーマにしていますが、繊細で美しい反面、あっさりとした感じがする作品です。

1994年(平成6年)に東武美術館にて開催された「ハンガリー国立ブダペスト美術館所蔵 ルネサンスの絵画」の図録をもとに考察してみました。

ジョヴァンニ・フランチェスコ・カロート作「キリストの降誕」とは

ルネサンスの絵画_ジョヴァンニ・フランチェスコ・カロート「キリストの降誕」
  • 制作年:1505年頃
  • サイズ:28.3 × 58.5cm
  • 油彩、板(ポプラ材)

この「キリストの降誕」は、ジョヴァンニ・フランチェスコ・カロートの初期の作品に分類されます。

全体的に黄色味を帯びていますが、赤色や黄色など鮮やかな色彩で描かれています。

「ハンガリー国立ブダペスト美術館所蔵 ルネサンスの絵画」の図録解説によると、画面左の男性(マリアの夫ヨセフ)の黄色い衣類の襞(ひだ)の感じが、後述するアンドレア・マンテーニャの影響だとのこと。

ヨセフの後ろに立つ葉の生い茂った木の表現からは繊細さを感じます。もしかすると、この作品中で一番入念に描かれているようにも見えます。

地面に敷かれた白地の布に寝かされているのが幼子のイエス・キリストです。その右で赤い衣服を身に纏(まと)ってひざまずいているのが母マリアですね。

マリアは、イエス・キリストが神様の御子(おんこ)であることを知っているので、生まれたばかりの我が子を礼拝しています。もしかすると、父なる神様に祈りを捧げているのかもしれません。

翼を持った3人は天使を表現しているのでしょう。

マリアの右の天使とヨセフとマリアの間にいる天使は、どこに視線を向けているのでしょうか? ポーズも違いますよね。

画面奥の桃色の衣服の天使と話をしている黄色い衣装の女性は誰なのでしょう? よくわかりません。

画面右端には馬も描かれています。イエス・キリストが馬小屋でお生まれになったことを表現していますね。

画面中央奥には山が重なり合っていますが、遠近法で遠くに行くほど薄く描かれています。

あらためて左側のヨセフに目を向けると、この作品で唯一鑑賞する私たちを見つめています。その仕草は、私たちにイエス・キリストを紹介しているかのようです。

この作品からは独特の味わい深い色合いと、人物のユニークな姿勢による自由な表現を感じます。

劇的とまでは言えないですが、ポージングで作品中に動きを感じさせられますね。

ジョヴァンニ・フランチェスコ・カロートとは

イタリア・ヴェローナイタリア・ヴェローナ

ジョヴァンニ・フランチェスコ・カロートは、ヴェローナ出身の画家です。

カロートが誕生したのは、1480年(文明12年)頃と考えられています。

カロートはリヴェラーレ・ダ・ヴェローナの工房で修行しました。修業時代のカロートに影響を与えた人物としては、イタリア・ルネサンス期の画家アンドレア・マンテーニャの存在が挙げられます。

アンドレア・マンテーニャは、パドヴァ派を代表する画家の一人です。

パドヴァ派とは、15世紀に北イタリアのパドヴァを中心に盛んになった美術の一派のことです。

カロートはアンドレア・マンテーニャと共に、ヴェローナから約35km南のマントヴァを訪れた時期があったようです。

1502年(文亀2年)には、ヴェローナで自身の工房を構えていました。その後カロートは、フェラーラ、ボローニャ等も訪れています。

カロートは、1506年(永正3年)にマントヴァでロレンツォ・コスタの影響を受けているとか。ロレンツォ・コスタ作品にみられる細やかな描写力や穏やかさ、憂うつ感の漂う雰囲気は、カロートの作品にプラスに作用したようです。

カロートは絵画制作の活動場所を変えながら、様々な美術様式を受け入れた画家でした。

カロートはヴォラルニェのヴィラ・デル・ベーネのフレスコ画の制作も行なっています。そのプロジェクトには、弟のジョヴァンニやヴェローナの画家らが参加していました。

ジョヴァンニ・フランチェスコ・カロートは1555年(天文24年・弘治元年)にヴェローナで亡くなりました。

わたなびはじめの感想:ジョヴァンニ・フランチェスコ・カロート「キリストの降誕」について

イタリア・マントヴァ【ドゥカーレ宮殿】イタリア・マントヴァ【ドゥカーレ宮殿】

イエス・キリストの誕生を描いた絵画で、幼子イエスが屋外に寝かされている作品はあまり見た記憶がありません。飼い葉桶に寝かされているイメージが強いですから。

イエス・キリストがお生まれになってから1500年程の期間が経過した時代に描かれたからなのでしょうか。聖書の記述を忠実に表現しているという感じではなさそうです。

個人的には不思議(不自然?)な印象を感じてしまいますが、作品全体の雰囲気は非常に穏やかで温かみを感じます。特にヨセフの表情に人柄の良さを感じます。

屋外という広い空間を大胆に使っていながら余白をそれほど感じさせないのは、カロートの技量のスゴさなのでしょう。どことなく、あっさりと描かれている感じがしませんか? それもこの作品の魅力の1つと言えるでしょう。

最後に、いつものわたなび流の感想で終わりたいと思います。
ジョヴァンニ・フランチェスコ・カロート作「キリストの降誕」は、「自宅で鑑賞したい(欲しいと思える)」作品です。

何と言っても作品の持つやわらかい印象とシチュエーションのユニークさに驚かされました。

まとめ

カロート「キリストの降誕」
  1. カロートはヴェローナ出身の画家。
  2. カロートの描いた「キリストの降誕」はシチュエーションがユニーク。
  3. 左側のヨセフの表情が印象的。

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