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印象・日の出が重なる!ターナー「ヴェネツィア-東のジュデッカ島の方角を見る」|横浜美術館「テート・ギャラリー所蔵 ターナー展」より

横浜美術館・ターナー展_J.M.W.ターナー作「ヴェネツィア-東のジュデッカ島の方角を見る」【アイキャッチ】
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モネが描いた「印象・日の出」の約50年前、ターナーは「ヴェネツィア-東のジュデッカ島の方角を見る」を水彩で描き上げていました。

この2つの作品には、どこか似た雰囲気を感じます。

しかし…油彩と水彩、キャンヴァスと紙、ル・アーヴル(フランス北西部の港湾都市)とベネツィア(イタリア北東部の水の都)といったように、違うことだらけです。

1997年(平成9年)に横浜美術館で開催された「テート・ギャラリー所蔵 ターナー展」の図録を基に、いろいろ考察してみました。

この記事は私の勝手な空想(ファンタジー)のようなものですが、よろしければお付き合いください。

ターナー作「ヴェネツィア-東のジュデッカ島の方角を見る」とは

横浜美術館・ターナー展_J.M.W.ターナー作「ヴェネツィア-東のジュデッカ島の方角を見る」
  • 制作年:1819年
  • サイズ:22.3 × 28.7cm
  • 水彩、紙

ジュデッカ島は、イタリアにあるヴェネツィア潟の島のひとつです。ヴェネツィア本島とジュデッカ島はジュデッカ運河を挟んで並ぶように位置しています。

ターナーがこの作品を描いたのは1819年(文政2年)のことです。紙に水彩で描かれています。

タイトルに「東のジュデッカ島の方角を」という文言が含まれているのですから、この作品は日の出とは言わないまでも、午前中の景色を描いたことになるのでしょう。太陽は東から昇って、西に沈むのですから。

ターナーは初めてヴェネツィアを旅行した際に水彩画を4作品描いていますが、この「ヴェネツィア-東のジュデッカ島の方角を見る」はその中の1枚です。

画面手前に描かれている茶色の物体は数艘ゴンドラでしょう。ヴェネツィアを象徴する乗り物ですよね。

画面中央の雲間からは朝日が顔をのぞかせているようです。それとも、雲が赤く染まっているだけなのかもしれません。

ターナーは紙の白さを活かして、やさしく淡いタッチで描いています。あたかも遠くで雲と一体化しているような街並みも、水分をたっぷりと含ませることで距離感を表現しています。

水面と雲と街が、同系統の色の濃淡でここまで表現できるものかと驚くばかりです。

サラッと描いたようでありながら、実に美しい作品だと思います。

ターナーとは

すぐわかる!ターナーとは

J.M.W.ターナーについては『すぐわかる!J.M.W.ターナーとは』をご参照ください。

ここでは、ターナーがイギリス・ロンドン出身ということだけお伝えしておきます。

すぐわかる!ターナーとは
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わたなびはじめの感想:ターナー作「ヴェネツィア-東のジュデッカ島の方角を見る」について

ベネツィアベネツィアのイメージ

ターナーはこの作品を描くのに、どれくらいの時間を必要としたのでしょうか?

学校を卒業して以来、ほとんど水彩画を描いていない私の想像では何の説得力もありませんが、短時間で仕上げたのではないかと推察しています。下絵と彩色を同時にはしていないかもしれませんが、合計しても30分くらいなのではないかと。

水彩画の場合、「作品に手を加え続けること」と「作品の出来映え」は必ずしも比例しないように思います。

ヴェネツィア-東のジュデッカ島の方角を見る」からは、ターナーの迷いのようなものは一切感じません。

それでは、今回私が注目しているもう1つの作品と比べてみましょう。

クロード・モネが「印象・日の出」を描いたのは、1872年(明治5年)のこと。「印象・日の出」は、「印象派」の名前の由来となった作品です。

クロード・モネは、フランス出身の印象派の画家です。1840年(天保11年)に生まれ、1926年(大正15年・昭和元年)に亡くなっています。

ターナーは上述の通りロンドン出身で水彩と油彩を描いた画家です。1775年(安永4年)に生まれ、1851年(嘉永4年)に亡くなっています。

ターナーとモネの生きた時代は11年間ほど重なっていますが、二人の交流は無かったことでしょう。イギリスとフランスという国の違いもありますしね。

しかし、モネがターナーの作品を目にしなかったとは言えないですよね。(これは可能性の話であって、モネが真似をしたとか言いたいわけではありません。)

ここではモネの描いた「印象・日の出」をご紹介できませんが、「ヴェネツィア-東のジュデッカ島の方角を見る」との共通点を考えてみました。(「印象・日の出」の図録はあるのですが、別の機会にご紹介します。)

  1. 両作品ともに、朝日のある光景を描いている。
  2. 水面と空が描かれている。
  3. 小型の舟が描かれている。

といったところでしょうか。

「ヴェネツィア-東のジュデッカ島の方角を見る」を観て、「印象・日の出」を連想しても不思議ではないと思うのですが、いかがでしょうか?

しかし、この2つの作品には大きな違いもあります。油彩と水彩といった違いは別として、作品における水の占める面積比率の違いです。

私が「水面・空・陸」を描くとしたら、手前に特徴的な建物などが無い限り、水平線の位置は中央よりも下に描くと思います。今回の作品で例えるならば、ターナーの「ヴェネツィア-東のジュデッカ島の方角を見る」に近くなると思うのです。

それに対してモネの「印象・日の出」の場合、水面が6割以上を占めているように見えます。すなわち、水平線の位置が画面中央と同程度かそれより上に位置しています。

どちらが優れているかということではなく、「モネは何を意図したのだろうか?」と考えてみました。

これは勝手な想像ですが、「モネは水面の光を描きたかったのではないか」という考えに行きつきました。

水彩の特性を活かしたターナーのサラッとした美しさとは対照的に、モネは水面にきらめく光を絵の具を塗り重ねることで表現しているように思うのです。

どちらも幻想的な雰囲気を漂わせた作品ですが、画家が何を描きたかったのかを想像(妄想?)できる機会になって楽しかったです。

モネについて詳しく調査すれば、より的を射た考察に行きつくのかもしれません。美術の専門家の方のような調査はできませんが、図録や美術関連書籍などを読んでみようと思います。

最後にいつものわたなび流の感想で終わりたいと思います。

ターナー作「ヴェネツィア-東のジュデッカ島の方角を見る」は、「自宅に飾って鑑賞したい(欲しい)と思える作品」です。

寝起きにこの作品を目にすることができたなら、爽やかな朝になりそうな気がします。

まとめ

ターナー「ヴェネツィア」
  1. ターナーはヴェネツィアの午前の光景を描いた。
  2. 紙に水彩で描かれた作品。
  3. 個人的に、モネの「印象・日の出」を連想してしまう。

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