あなたには、好きな楽器がありますか?
私がヴァイオリンを好きになったのは、テレビCMで流れたメロディがキッカケでした。
それが今回ご紹介する、ヴァイオリニスト・古澤巌氏が奏でる「ショーロ・インディゴ」です。
この「ショーロ・インディゴ」を耳にしたとき、瞬間的に感動を覚えました。
「ヴァイオリンの夜」というアルバムに収録されているこの曲は、今でも大切な想い出です。
■古澤巌「ヴァイオリンの夜」
- ヴァイオリン:古澤巌
- ピアノ:Masahiro Satoh、Michio Kobayashi、Rikuya Terashima、Tomoyuki Asakawa
- ベース:Jun Saitoh、Jean-Philippe
- クラリネット:Tatsuzoh Akasaka
- ラテン・パーカッション:Masato Kawase
- ダルシマー:Keiji Azami
- ギター:Hiroshi Inoue、Mare Fosset
- Epic / ソニー・レコード【ESCK 8028】
ヴァイオリン 古澤巌「ショーロ・インディゴ」/作・編曲 佐藤允彦

「ショーロ・インディゴ」は私が20代前半の頃に、佐藤允彦氏により作曲・編曲されました。
古澤巌氏のアルバム「ヴァイオリンの夜」のライナーノーツによると、1993年度の「ピース・ライト・ボックス」のテレビCM用に作・編曲されたオリジナル楽曲です。
以下、ライナーノーツより、ショーロ・インディゴの解説をご紹介します。
'93年度「ピース・ライト・ボックス」CMオリジナル曲として作・編曲されました。ショーロとは、ポルトガル語のショラール(Chorar=泣く)という動詞の名詞形で、日本でいう”泣き節”とでもいうような意味が語源となっています。この形式は19世紀後半に生まれたブラジル民族音楽が都市化された形であり、ジャズとの共通点も多いため、ブラジルでは「ブラジルのジャズ」と呼ぶ人も少なくありません。インディゴは「ブルーの」の意。
出典:『古澤巌「ヴァイオリンの夜」』ライナーノーツ 5ページ
この解説を基に直訳すると「ショーロ・インディゴ」は「泣き青」になるのでしょうか?
「泣く」の名詞形とは「泣き」でいいんですよね?
う~ん・・・
やっぱり「ショーロ・インディゴ」の方がいいですね。カッコいいだけでなく、しっくりきます。
テレビCMでは、古澤巌氏の演奏している姿も映し出されていたと記憶しています。曲のイメージにピッタリでした。
ヴァイオリニスト・古澤巌氏の略歴

古澤巌氏は1959年(昭和34年)に茅ケ崎でお生まれになっています。
1979年(昭和54年)には、第48回日本音楽コンクール バイオリン部門第1位レウカディア賞を受賞しています。1981年(昭和56年)には、ヴィニャフスキ国際コンクールで入賞。
その後、桐朋学園大学音楽学部を首席で卒業されています。日本が誇る世界的指揮者の小澤征爾氏に推薦されて、タングルウッド音楽祭に参加した際にはコンサートマスターも務めました。
1984年(昭和59年)、ミケランジェロ・アバド・コンクールで第1位を受賞。1985年(昭和60年)に開催されたカーネギーホールでのデビューリサイタルは、ニューヨーク・タイムズで絶賛されたそうです。
1988年(昭和63年)からの4年間は、東京都交響楽団のソロ・コンサートマスターも務めています。
面白いのは、古澤巌氏がヴァイオリンを演奏する際の弓についてです。ヴァイオリン用よりも短いチェロの弓を使用しているとか。
自分の弓を忘れたのがキッカケだったようですが、商売道具の一部を忘れるなんて、なんだかお茶目ですね。
古澤巌「ヴァイオリンの夜」の収録曲

CD「ヴァイオリンの夜」の裏面を撮影した上の画像ですが、だいぶ傷んでいますよね。
もっと大切に扱っておけばよかった…。
それはさておき、古澤巌氏のアルバム「ヴァイオリンの夜」の収録曲をご紹介します。
ショーロ・インディゴ | 佐藤允彦 |
---|---|
チャールダーシュ | モンティ |
ツィゴイネルワイゼン | サラサーテ~バンド・ヴァージョン |
ノクターン | ショパン~ミルシティン編 |
セレナーデ作品4 | ダンブロジオ |
マドリガル | シモネッティ |
コンソレーション(慰め) | リスト~ミルシティン編 |
クレモナのヴァイオリン作り | フバイ |
愛の悲しみ | クライスラー |
ひばり | ディニーク |
そんなことはどうでもいいさ | ガーシュウィン~ハイフェッツ編 |
感傷的なワルツ 作品51-6 | チャイコフスキー |
タイスの瞑想曲 | マスネ |
スパニッシュ・ダンス | ファリャ |
瞑想曲作品32 | グラズノフ |
以上、全15曲が収録されています。
今後、この中の曲についても書いていく予定です。
わたなびはじめの感想:古澤巌(ヴァイオリン)「ショーロ・インディゴ」について

まずは、「ショーロ・インディゴ」にまつわる想い出を語らせてください。
私はタバコは吸いません。しかし、ピース・ライト・ボックスのコマーシャルがテレビに映ると釘付け状態になっていました。テレビCMという限られた時間の中で、「曲のタイトルは何か?」「演奏者は誰なのか?」といった情報を収集しなければならなかったからです。
初めて「ショーロ・インディゴ」を聴いたときには、衝撃を受けるだけでした。正確には覚えていませんが、おそらく3回くらいは情報収集に費やしたと思います。
パソコンやインターネットも一般には普及しておらず、ましてスマホなるものは存在すらしていませんでした。アナログな努力で情報を集め、CDショップのクラシック音楽コーナーに。
幸い、すぐに「ショーロ・インディゴ」が収録されているCD「ヴァイオリンの夜」を見つけることができました。
微かな記憶ですが、発見したCDにはシールが貼られていて、「ピース・ライト・ボックスのCMで使用されている曲」といった内容の文言が書かれていました。店員さんにも尋ねたような気もします。
とにもかくにも、「ヴァイオリンの夜」を見つけた瞬間、すぐに購入しました。
それから、現在に至るまで25年以上の時が経過しています。私のこれまでの人生に度々訪れた引越にも耐えています。(ケースの一部にはヒビや傷が…)
「ショーロ・インディゴ」は私のなかで、ヴァイオリンの音色が好きになった曲として明確に刻み込まれています。
残念ながら、古澤巌さんのコンサートには未だ足を運んだことはありません。近い将来、その機会に恵まれることを願ってやみません。そのときに「ショーロ・インディゴ」が演奏されるかどうかはわかりませんが…
「ショーロ・インディゴ」は、ノスタルジックでラテン情緒漂う曲です。流麗で魅惑的なバイオリンの音色と、小刻みなパーカッション、そして時折オリエンタルなムードを醸し出すギターの融合体です。
主題部の演奏において、音を溜めつつ段階的に低・高・低音へと遷移する過程を見事にコントロールしている古澤巌氏の高いヴァイオリン演奏能力なしに、「ショーロ・インディゴ」は成立しえないと思います。古澤巌氏の深みを感じる低音も魅力的。別のヴァイオリニストが演奏していたら、数十秒のテレビCMに魅せられることもなかったかもしれません。
この意味において、作曲者である佐藤允彦氏の楽曲「ショーロ・インディゴ」と、古澤巌氏を中心とした演奏者のマッチングは完璧と思えるほどです。
この曲に関しては、他のヴァイオリニストの演奏する姿が全くイメージできません。
私にとって「ショーロ・インディゴ」をはじめとする古澤巌氏の演奏作品との出会いは、クラシック音楽ファンとして幸せなことだったと思います。
それだけにとどまらず、私の人生においても心の豊かさを提供してくれた貴重な機会だったと思わざるを得ません。
まとめ
- 古澤巌氏のヴァイオリン演奏力の高さを感じる曲。
- 個人的には一瞬で心を奪われた曲。
- 是非、聴いて欲しい曲。
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