1994年(平成6年)、東京都美術館で開催された 「ニューヨークを生きたアーティストたち」展。
今回はその図録から、ウィンズロー・ホーマーの作品「黄色いジャケット」をご紹介します。
19世紀のアメリカ美術において重要な画家と言われるウィンズロー・ホーマー。その作品に興味が湧いてきませんか?
ウィンズロー・ホーマー作「黄色いジャケット」とは

■ウィンズロー・ホーマー作「黄色いジャケット」
- 制作年:1879年
- サイズ:57.8 × 39.4cm
- 油彩、キャンヴァス
この作品はウィンズロー・ホーマーが、ローソン・ヴァレンタインの別荘(農場)で描いた作品です。ローソン・ヴァレンタインは、ウィンズロー・ホーマーの友人でありパトロンでした。
ウィンズロー・ホーマーは、1881年(明治14年)にイギリス旅行に出発しますが、その2年ほど前の作品になります。
アメリカ写実主義の画家としても知られるウィンズロー・ホーマーですが、「黄色いジャケット」は印象派の画家が描いた作品のようにもみえます。
黄色いジャケットを着た女性は画面の中央に立っていますが、左右の空間の面積を比べると背中側(右側)の方が広いことがわかります。幹は見えませんが、木の枝と花を描くためだったのでしょう。
女性の前側の空間が狭いことで、少し窮屈さを感じます。その反面、背中側の木がどのような姿をしているのかが気になり、想像が膨らみます。ちょっぴりミステリアスでもありますね。
さらに小道を挟んで広がる背景の草原は淡くにじむ(遠くがぼやけている)ような描かれ方をしているため、空間の奥行を感じさせます。
勝手な空想だけれど...
個人的には作品のタイトルが、なぜ「黄色いジャケット」と名付けられたのか、今ひとつピンときません。木の枝に咲く白い花と香り嗅ぐ女性の美しい雰囲気に、視線と意識が奪われてしまうからです。
メインとして描かれているはずの人物に、日光がほとんど当たっていないことも気になります。もしかすると、モデルの女性に配慮(紫外線対策?)したのかもしれませんね。あるいは、より自然な雰囲気を描きたかったのかもしれません。
いずれにしても、いくら木陰とはいえ、もっと明るい色調で描くこともできたはず。空の色も曇りがちですよね。でも、ウィンズロー・ホーマーはそうしませんでした。
敢えて木陰の暗い色調に、少しだけ差し込んだ日光に照らされることで映える「黄色いジャケット」の対照的な光景を、ウィンズロー・ホーマーは描きたかったのかもしれません。
これも私の憶測にすぎませんが…
あなたは、どう感じましたか?
ウィンズロー・ホーマーとは

ボストンに生まれ、19世紀のアメリカ美術界を代表する画家のひとりとなったウィンズロー・ホーマーの生涯については、『すぐわかる!ウィンズロー・ホーマーとは』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:ウィンズロー・ホーマー「黄色いジャケット」について

上述した通り、なぜ「黄色いジャケット」という作品名にしたのだろう?と思ってしまう私。
何でもストレートに名付けるのがいいとは思いませんが、せっかく美しい女性と自然を描いているのですから、もう少しロマンチックなタイトルでもよかったのではないかと考えてしまうのです。
大きなお世話であることを承知の上で、仮に私が作品名を付けるとするならばどうなるか…
いくつか列挙してみましょう。
- 花と女性
- 花のにおいを嗅ぐレディー
- 木陰で花の香りを嗅ぐ少女
- 初夏
- 白い花
これが私の精一杯。
もっと素敵な作品名にできると思ったのですが、全ッ然、ロマンチックな作品名が浮かびませんでした。ウィンズロー・ホーマーの作品名の方が断然ステキです。
やっぱりこの作品は「黄色いジャケット」で正解ですね。
ここで、いつものわたなび流の感想を書かせていただきます。
ウィンズロー・ホーマーの描いた「黄色いジャケット」は、「美術館か喫茶店、またはシックな雰囲気のお部屋で鑑賞するのがいい(欲しいとまでは思えない)作品」です。
ちなみに、わたなび流の感想では「欲しい!」が最上級の表現。
自分にふさわしいかどうかは別として、家に飾りたいと思った作品にはそう書くね。
蛇足ですが、「黄色いジャケット」はウィンズロー・ホーマーの写実的要素の強い他の作品と比較すると、タッチが随分と違う気がします。
個人的にはどちらも好きです。
私の場合、「レンブラントの作品に驚きと感動を覚えて、その後、印象派の魅力に誘惑されて~」といった経緯があるので、ウィンズロー・ホーマーの描き方は概ね好きと言えます。
特に1873年(明治6年)の「二枚貝の篭」という作品は、すばらしいと思います。
まとめ
- 作品名に戸惑いを感じるも、納得せざるを得ない魅力的な作品。
- 花と女性という、美しさの相乗効果を感じる。