本物を実際に観てみたい!
絵画でこのような気持ちを感じられたことはありませんか?
私にとって、ヨハネス・フェルメール・ファン・デルフト作「画家のアトリエ(絵画芸術)」もそのひとつ。
2004年(平成16年)に東京都美術館で開催された「ウィーン美術史美術館所蔵 栄光のオランダ・フランドル絵画展」は本当に感激しました。
図録をもとに回想してみます。
ヨハネス・フェルメール・ファン・デルフト作「画家のアトリエ(絵画芸術)」とは

- 制作年:1665~1666年頃
- サイズ:120.0 × 100.0cm
- 油彩、カンヴァス
「画家のアトリエ(絵画芸術)」はフェルメールの作品の中では大きなサイズの絵画です。フェールメール作品中、「真珠の耳飾りの少女」と並び人気の高いことでも有名です。
画面に描かれている人物は二人です。
- 青い衣服に月桂樹、右手にトランペット、左手に史書?を持つ少女。
- 画家(フェルメール自身)と思われる人物。
①「少女」について、「ウィーン美術史美術館所蔵 栄光のオランダ・フランドル絵画展」の図録解説に興味深い記述がありましたので引用紹介します。
恐らくフェルメール自身であるだろう画家が、アトリエの中でイーゼルに向かい、一人のモデルを相手にして制作をしているという場景であるが、このモデルは芸術家に霊感を与える古代ギリシャの歴史を司るミューズ、クリオ(元来のギリシャ名はクレイオ)としてポーズを取っている。
出典:『ウィーン美術史美術館所蔵 栄光のオランダ・フランドル絵画展図録』
カール・シュッツ著 西村規矩夫翻訳監修 148ページ
フェルメールが少女に「クリオ」のポーズと取らせているのはなぜなのでしょうか?
どうやら歴史画(神話や聖書、歴史的場面等を題材にした絵画)は、静物画や風景画、肖像画よりも格が上にみなされていたようです。
そうだとするならばフェルメールは、アトリエといった身近な空間を使って歴史画のエッセンスを取り込んだのかもしれません。
少女に関しては、青い衣服のフェルメール・ブルーが美しいですよね。さらには左腕に抱えている黄金色の史書?と相まって、ケバケバしさではなく上品な印象を受けます。
背景に目を向けると、真っ先に壁に掛けられた大きな地図が目に入ります。
地図には南北分断前のネーデルラント連邦共和国(主要17州)が描かれています。地図の制作者は、地図製作や版画家でもあったクラエス・ヤンスゾーン・フィッセルです。
天井から吊り下げられているシャンデリアには高級感を感じます。ハプスブルク家の象徴「双頭の鷲」が飾られています。
部屋の床もまたオシャレですよね。白と黒のタイルは現代的にも非常にモダンな感じを漂わせています。
画面左側に束ねられているのは、アトリエを仕切っているカーテンでしょうか。花や人の顔のような模様が見えますね。
画面いっぱいに盛り込まれたさまざまな品物が作品に彩を添えています。それでいて奥に描かれた少女に視線が釘付けさせられてしまうのも、フェルメールの構図の妙なのでしょう。
ヨハネス・フェルメールとは

ヨハネス・フェルメールについては『すぐわかる!ヨハネス・フェルメールとは|詳しくは知られていないその生涯』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:ヨハネス・フェルメール「画家のアトリエ(絵画芸術)」について

「フェルメール・ブルー」の美しさは、絵画好きにとって魅力的な要素ですよね。
これまでにフェルメールの作品を何点か鑑賞する機会がありましたが、作品の小ささに驚いたこともありました。その点「画家のアトリエ(絵画芸術)」は、見応えがありました。
もう16年も前のことですが、東京都美術館に向かう途中、気が馳せてしまい足取りが早まったのを記憶しています。
そして「フェルメール・ブルー」を目にしたときには感動を覚えました。
もう一度、「画家のアトリエ(絵画芸術)」を鑑賞する機会を得られたなら、もっとじっくりと作品と向き合ってみたものです。
テーブルの上の石膏のようなものや地図の周囲に描かれている景観図?、少女の衣服の襞(ひだ)、画家の髪の毛の表現等々…
最後に、いつものわたなび流の感想で終わります。
ヨハネス・フェルメール作「画家のアトリエ(絵画芸術)」は、「自宅で鑑賞したい(欲しい)と思える作品」です。
少女の伏し目がちな表情も魅力的ですよね。
まとめ
- 「画家のアトリエ(絵画芸術)」はフェルメールの風俗画としては大きめの作品。
- フェルメール・ブルーの青い衣装が美しい。
- 室内でありながら、明るい印象を受ける作品。