シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」をもとに、チャイコフスキーが作曲した幻想序曲「ロメオとジュリエット」。
プロコフィエフのバレエ音楽とは違い、演奏会用の序曲です。
序曲好きの私としては聴いておきたい作品のひとつ。
今回はカラヤン・ゴールドシリーズ【CD】により、カラヤン指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で楽しみました。
■チャイコフスキー 幻想序曲「ロメオとジュリエット」/バレエ組曲「くるみ割り人形」
- 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
- 演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- ドイツ・グラモフォン カラヤン・ゴールドシリーズ
- 発売:ポリドール株式会社【POCG-9509】
チャイコフスキー 幻想序曲「ロメオとジュリエット」

チャイコフスキー はウィリアム・シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」に着想を得て、幻想序曲「ロメオとジュリエット」を作曲しました。
チャイコフスキーに作曲を勧めたのは、ロシア5人組のひとりミリイ・バラキレフでした。バラキレフはチャイコフスキーに作曲のアドバイスなどもしています。
幻想序曲「ロメオとジュリエット」は、1800年代に確立されるクラシック音楽のジャンルのひとつである演奏会用序曲です。そのため、歌劇(オペラ)の上演前に演奏される序曲とは異なります。
チャイコフスキーは幻想序曲「ロメオとジュリエット」を1869年(明治2年)の9月から約3ヶ月ほどで作曲しました。しかしその後も改定が続けられ、現在演奏される形式に落ち着いたのは1881年(明治14年)のことでした。
幻想序曲「ロメオとジュリエット」の初演は1870年(明治3年)3月16日のモスクワでのことでした。指揮は、ロシアの作曲家・ピアニストでもあったニコライ・ルビンシテインが行なっています。
現在では傑作とも呼ばれる幻想序曲「ロメオとジュリエット」も、初演時の評判はイマイチだったようです。
チャイコフスキーとは

チャイコフスキーについては、『すぐわかる!チャイコフスキーとは|チャイコフスキーの生涯と代表作について』をご参照ください。

わたなびはじめの感想・チャイコフスキー 幻想序曲「ロメオとジュリエット」

ここからはカラヤン・ゴールドシリーズ【CD】により、カラヤン指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団で幻想序曲「ロメオとジュリエット」を聴いた感想をご紹介します。
【 】は今回聴いたCDの演奏時間です。
■幻想序曲「ロメオとジュリエット」【22分02秒】
「ロメオとジュリエット」といえば、モンタギュー家とキャピュレット家という仇敵のお家問題の間で揺れ動くロメオとジュリエットの悲しい物語です。
序奏はローレンス僧侶の情け深さを表現しているかのようです。ファゴットとクラリネットが荘厳に奏でられます。
不穏な空気が常に漂います。それでいて優美で美しさも感じさせられるのが不思議です。
その後雰囲気は一変し、モンタギュー家とキャピュレット家の闘争を思わせる場面へと移ります。耳馴染みのある旋律が聴こえてきました。一気に盛り上がり、劇的な場面が演出されます。
静けさが戻ってきたところで聴こえるヴィオラやホルンは、ロメオとジュリエットの愛情を甘美に表現しています。おそらくはこの楽曲で一番幸せを感じられる部分です。
再び不穏な空気が戻ってきます。激しさは増し、シンバルやティンパニーが鳴り響き、ロメオとジュリエットに現実を叩きつけているかのようです。それでいてカッコいい!
壮麗で優美な旋律が奏でられ、曲の世界にグッと引き込まれてしまいそうになります。
美しさと激しさが交差し、止めることのできない悲劇へと突き進んでいるかのようです。まるでジュリエットが死んだと思っているロメオの心情が伝わってくるようです。
ティンパニーが1音鳴り響き、ロメオを追ってジュリエットが死を選ぶことを暗示させます。葬送行進曲のような旋律の中、穏やかさも感じます。
最後はティンパニーが連打され、悲劇は幕を閉じます。
約22分間の中にロメオとジュリエットのストーリーが凝縮されていて、耳で聴くドラマのようです。
チャイコフスキーがシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」という作品を愛していたと感じずにはいられません。
ダイナミズムと流麗な旋律で構築された楽曲は、チャイコフスキーの傑作のひとつと言っても過言ではないでしょう。
序曲好きの私にとって幻想序曲「ロメオとジュリエット」は、まさに大満足の1曲です。
まとめ
- 幻想序曲「ロメオとジュリエット」はチャイコフスキー初期の傑作のひとつ。
- 初演の評判がイマイチだったのが不思議…
- まるでドラマを耳で聴いているような感じになれる楽曲。