美術作品

イエス・キリストを象徴!ムリーリョ、バルトロメ・エステバン作「善き羊飼い」|国立西洋美術館「スペイン王室コレクションの美と栄光 プラド美術館展」より

プラド美術館展 バルトロメ・エステバン・ムリーリョ「善き羊飼い」

2002年(平成14年)、国立西洋美術館にて開催された「スペイン王室コレクションの美と栄光 プラド美術館展」では、イエス・キリストを描いた作品が数点展示されました。

その中のひとつが、バルトロメ・エステバン・ムリーリョが描いた「善き羊飼い」です。

「善き羊飼い」とは、イエス・キリストを象徴しています。

「スペイン王室コレクションの美と栄光 プラド美術館展」の図録を基に振り返ってみます。

  • 制作年:1655年~1660年頃
  • サイズ:123.0 × 101.0cm
  • 油彩、カンヴァス

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ作「善き羊飼い」とは

プラド美術館展 バルトロメ・エステバン・ムリーリョ「善き羊飼い」

バルトロメ・エステバン・ムリーリョは、17世紀のスペインで活躍した画家です。
おそらくムリーリョ自身はセビリアとその近郊で過ごしていたと思われますが、彼の作品はヨーロッパ中に渡っています。

おもに宗教画を描いたムリーリョ。

今回ご紹介している「善き羊飼い」も新約聖書から主題を得ています。

そしてタイトルの「善き羊飼い」とは、イエス・キリストを象徴しているのです。

バルトロメ・エステバン・ムリーリョは、ヨハネによる福音書 第10章に記載されているイエス・キリストの説教を基に「善き羊飼い」を描きました。
その話でイエス・キリストは、ご自身を「よい羊飼」だと言われました。

わたしはよい羊飼である。よい羊飼は、羊のために命を捨てる。羊飼ではなく、羊が自分のものでもない雇人は、おおかみが来るのを見ると、羊をすてて逃げ去る。そして、おおかみは羊を奪い、また追い散らす。彼は雇人であって、羊のことを心にかけていないからである。わたしはよい羊飼であって、わたしの羊を知り、わたしの羊はまた、わたしを知っている。それはちょうど、父がわたしを知っておられ、わたしが父を知っているのと同じである。そして、わたしは羊のために命を捨てるのである。

出典:『新約聖書 ヨハネによる福音書 第10章11~15節』
156ページ 日本聖書協会

「よい羊飼」であるイエス・キリストは、羊(イエス・キリストに従う人々)のことを、彼らのためにご自分の命を捨てるほど愛しておられるのです。

実際にイエス・キリストはゲツセマネの園で全ての人の罪・とがの報いを背負い、ゴルゴタの丘の十字架上でご自身の命をお捨てになられました。
そして3日後に蘇られた(復活した)のです。

これは決して自殺を推奨する教えではありません。

イエス・キリストは父親を神様としているため、ご自身の命を捨てる力と再び得る(復活する)力を授かっていたのです。

そしてその力を行使されることで、人々がイエス・キリストとその教え(儀式を含む)を信じ、従うならば、神様の御もとに戻れるように道を備えてくださいました。

これらを踏まえたうえで、バルトロメ・エステバン・ムリーリョの「善き羊飼い」を観てみましょう。

ムリーリョは、イエス・キリストを幼い子供として描いています。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
このシチュエーションで、大人ではないイエス・キリストを描いたのは珍しいんじゃないかな?

その左側には羊がいて、羊を気にかけている様子を表現しています。
羊飼いを象徴する杖も手にしていますね。

表情に着目すると、眼光は鋭く、成熟した大人を思わせます。
(視線の先が羊ではなくこの作品の鑑賞者に向けられているのもムリーリョが意図したものでしょう。)

成熟した雰囲気に対して、頬(ほお)や唇からは幼さや温かみを感じます。
カールのかかった髪の毛もやわらかさを表現しているかのようです。

背景には、崩れた建物と他の羊の群れが描き込まれていますね。
羊の群れは、ヨハネによる福音書 第10章16節にある「この囲いにいない他の羊」を表しているのか、99匹の羊を残して1匹の迷い出た羊を探す例えばなしを象徴しているのか、それはわかりません。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
単純に、羊飼いには多くの羊の群れがいることを表現したのかもしれないね。

衣類の襞(ひだ)の表現もすばらしいです。
やわらかい筆触が、作品全体の温かみを醸(かも)し出しているように思えます。

ムリーリョの「善き羊飼い」はともすると中世の田園風景のようにもみえますが、イエス・キリストを主題に描かれた作品です。

バルトロメ・エステバン・ムリーリョとは

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わたなびはじめの感想・ムリーリョ「善き羊飼い」

羊

子供が幼かったころ、地方の牧場に連れて行ったことがありました。
そこでは羊が飼育されていて、囲いに入り、触れ合うことができたのです。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
あのときは写真を撮ることに夢中になっていたなぁ...

ちなみに、上の羊の画像はそのときのものではないぞ!

ところが...羊を撫でようとした子供が、羊に軽く押されて尻もちをついてしまったのです。

私と妻は良い思い出として記憶していますが、おそらく子供にとっては恐怖かイヤな思い出として記憶に残っていることでしょう。
(覚えていればの話ですが...)

ムリーリョの「善き羊飼い」をあらためて観直したとき、その主題ではなく、過去の想い出を連想してしまいました。

「善き羊飼い」を主題にした作品についての個人的感想としては、イエス・キリストが大人として描かれている方がしっくりくるのですが...

それでもムリーリョの「善き羊飼い」が、すばらしい作品であるとはと思っています。

最後に、いつものわたなび流の感想で終わります。
バルトロメ・エステバン・ムリーリョの描いた「善き羊飼い」は、「自宅で鑑賞したい(欲しいと思える)作品」です。

羊飼い(イエス・キリスト)の、やわらかで愛らしい姿が魅力的です。

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まとめ

ムリーリョ作「善き羊飼い」
  1. ムリーリョは、新約聖書 ヨハネによる福音書 第10章を主題に「善き羊飼い」を描いた。
  2. 「善き羊飼い」が幼い子供の姿で描かれているのが印象的。
  3. ムリーリョのやわらかな筆触が、作品の温かみを増している。

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