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ひとつの山を2つの作品で見比べ!ポール・セザンヌ作「ビベミュの石切場からのサント=ヴィクトワール山」|伊勢丹美術館「コーン・コレクション展」より

コーン・コレクション_ポール・セザンヌ作「ビベミュの石切場からのサント=ヴィクトワール山」【アイキャッチ】
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同じ画家が描いたひとつの山を見比べてみました。

その画家とはポール・セザンヌで、山とは「サント=ヴィクトワール山」です。

■ポール・セザンヌ

  1. ビベミュの石切場からのサント=ヴィクトワール山【コーン・コレクション展】
  2. サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール【見えてくる光景展】

1996年(平成8年)、伊勢丹美術館で開催された「コーン・コレクション展」の図録と、2020年(令和2年)にアーティゾン美術館で開催された「見えてくる光景展」に展示された作品を見比べました。

サント=ヴィクトワール山について

サント=ヴィクトワール山サント=ヴィクトワール山

サント=ヴィクトワール山は、フランス南部のエクス=アン=プロヴァンス郊外にある標高1,011メートル程の石灰岩でできた山です。全長は約18km以上にも及び、「馬の背中」のような姿をしています。山の最高点には「ピックデムッシュ」という呼び名が付けられています。

セザンヌが多く描いたことでも有名で、ハイキングや登山者に愛されている山です。

セザンヌのエクス=アン=プロヴァンス近郊の住まい近くからは、サント=ヴィクトワール山を眺めることができ、1880年代中頃からこの山をモティーフに連作を描いています。

セザンヌがサント=ヴィクトワール山を登っていたのかはわかりません。私の乏しい知識において、少なくともサント=ヴィクトワール山の山頂から描いた作品は無かったように思います。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
そういえば、僕の故郷にある函館山は、牛が伏しているような姿に例えられ、「臥牛山(がぎゅうざん)」とも呼ばれていたな。

ポール・セザンヌ作「ビベミュの石切場からのサント=ヴィクトワール山」とは

コーン・コレクション_セザンヌ「ビベミュの石切場からのサント=ヴィクトワール山」

■ビベミュの石切場からのサント=ヴィクトワール山

  • 制作年:1897年頃
  • サイズ:65.1 × 80.0cm
  • 油彩、カンヴァス

その描かれた数から推察するに「サント=ヴィクトワール山」のモチーフは、セザンヌにとって非常に重要度の高いものだったといえます。少なくとも油彩画40点以上、水彩画40点以上、その他に素描も残されています。

セザンヌは「サント=ヴィクトワール山」を1870年(明治3年)から描き始めます。

セザンヌはいろいろな角度から「サント=ヴィクトワール山」を描いていますが、この作品では山の手前に石切場が展開されています。

この場所は、幼い頃からセザンヌにとってゆかりのある土地でした。ビベミュの石切場には、度々親友とピクニックに行っていたのです。

セザンヌはよく知っている場所からの風景を描くに当たって、石切場の岩肌から感じる迫力を最大限に活かそうとしたのではないでしょうか。

前方に望むサント=ヴィクトワール山の白い山肌と石切場の茶色の対比も、作品に鮮やかさを添えています。さらに手前に描かれている木々の緑からは温かみを感じ、切り立った山、ゴツゴツした岩を殺風景なものにしていません。

一見平たい印象を受ける作品ですが、木・岩・山の配置を考えると非常に奥行きのある作品だと気付きます。

ポール・セザンヌとは

すぐわる!ポール・セザンヌとは

20世紀の美術に大きな影響を与えたフランスの画家ポール・セザンヌの生涯については、『すぐわる!ポール・セザンヌとは』をご参照ください。

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わたなびはじめの感想:2つの「サント=ヴィクトワール山」作品について

アーティゾン美術館「見えてくる光景展」ポール・セザンヌ【サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール】

私のセザンヌ作品に対する印象は、どちらかというと「暗くて・平たい」といった感じです。屋外風景を描いた作品の空は、澄みきったイメージが少ない気がします。

今回見比べる2作品からも晴々とした印象は受けません。

  1. ビベミュの石切場からのサント=ヴィクトワール山【コーン・コレクション展】
  2. サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール【見えてくる光景展】

描かれた順番は、①「ビベミュの石切場からのサント=ヴィクトワール山」の方が10年程先です。

①「ビベミュの石切場からのサント=ヴィクトワール山」は石切場の迫力が強調されているのに対して、②「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」の方は木々の緑が画面に溢れています。

同じサント=ヴィクトワール山を描いていても、受ける印象が大きく違うのでおもしろいところです。

②「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」の方は、これから嵐でもやってくるのではないかという感じがします。一部茶色い岩肌が顔をのぞかせていますが、荒々しさは木々で和らげられていますよね。

他方、①「ビベミュの石切場からのサント=ヴィクトワール山」は石切場の荒々しい岩肌が描かれているにも関わらず、温かみを感じます。

筆のタッチは①「ビベミュの石切場からのサント=ヴィクトワール山」の方が繊細ですね。

作品の奥行に関しては②「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」の方がハッキリと描かれているともいます。画面右上の木の緑がその効果を高めているからです。

同じモチーフを数十作品描いた画家ですから、どちらの作品も甲乙はつけ難いです。

あえてお伝えさせていただくなら、個人的には構図で選ぶなら②「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」が、雰囲気(明るさなど)で選ぶなら①「ビベミュの石切場からのサント=ヴィクトワール山」が好きです。

どちらか一方を選ぶなら、構図重視で②「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」です。正直、難しい判断です。

最後に、いつものわたなび流の感想で終わりたいと思います。

セザンヌの描いた「ビベミュの石切場からのサント=ヴィクトワール山」は、「非常に美しい風景画ですが、美術館で鑑賞したい作品」です。

ちなみに②「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」は、「家で鑑賞したい(欲しい)と思える作品」です。

あなたは、どのように感じられましたか?

まとめ

セザンヌ「サント=ヴィクトワール山」
  1. セザンヌはサント=ヴィクトワール山をモチーフに数十点(油彩、水彩、素描)の作品を遺している。
  2. サント=ヴィクトワール山はエクス=アン=プロヴァンス近郊のセザンヌの自宅近くからも見ることができた。
  3. セザンヌ作品に対する評価は晩年から高まり始め、彼の死後より高まりをみせた。

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