ベートーヴェンの音楽はお好きですか?
ベートーヴェンはクラシック音楽好きか否かに関係なく、広く知られている音楽家のひとりです。
「第九」や「運命」といった交響曲や「悲愴」や「月光」などのピアノソナタは、きっとどこかで耳にしているはず。
古典派の音楽家として知られるベートーヴェン。
今回はベートーヴェンの序曲「コリオラン」をご紹介します。
ディスクユニオン お茶の水クラシック館で購入した中古レコードで楽しんでみました。「序曲って何?」といった質問にも答えられたらと思っています。
■カラヤン/ベートーヴェン「交響曲第8番」,コリオラン序曲,歌劇「フィデリオ」序曲,レオノーレ序曲第3番
- 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
- 演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- グラモフォンレコード
- 発売元:ポリドール株式会社【28MG 4558[415 507-1]】
ベートーヴェン作曲「コリオラン序曲」とは

コリオラン序曲をルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが作曲したのは、1807年(文化4年)のことでした。
「序曲」という言葉は、フランス語の始まりを意味する「ouverture」の邦訳です。
通常、序曲は歌劇や古典組曲などの前に演奏される音楽です。
特に歌劇の前に演奏される序曲の場合は、ストーリーを彷彿とさせるものが多いです。序曲によって気分を盛り上げてから、歌劇の世界に誘い込む作用が期待されているのでしょう。
もちろん、歌劇とは関係のない序曲も存在しています。
今回ご紹介している序曲「コリオラン」は歌劇用ではなく、演奏会用に作られたものです。
ベートーヴェンが観た戯曲「コリオラン」での感動が、序曲「コリオラン」制作のキッカケになったと言われています。
戯曲「コリオラン」とは、古代ローマの英雄コリオラヌスの悲しい物語です。ベートーヴェンの友人で劇作家でもあったハインリッヒ・ヨーゼフ・フォン・コリンの作品です。
序曲「コリオラン」が初めて演奏されたのは、1807年(文化4年)3月のロプコヴィッツ侯爵邸で開かれた予約演奏会でのことでした。
ハ短調のソナタ形式で書かれたコリオラン序曲は、迫力を伴う大胆さと美しさを伴った作品になっています。
ベートーヴェンの序曲「コリオラン」は、友人のハインリッヒ・ヨーゼフ・フォン・コリンに献呈されています。
戯曲「コリオラン」の主人公・コリオラヌスとはどんな人?

戯曲「コリオラン」で描かれたグナエウス・マルキウス・コリオラヌス(ガイウス)とはどのような人物だったのでしょうか?
その誕生はBC519年かそれに近い頃とされています。古代ローマにおける貴族出身で、共和政ローマの将軍になった人物です。
BC493年、ローマ軍は敵軍ウォルスキ族のコリオリ(街の名前)を包囲していました。ところが、敵軍に背後を攻撃されて挟撃(挟み撃ち)の状態になってしまいます。
そのような状況のもと、コリオラヌスは敵の城門で奮闘し勝利へと導くのでした。「コリオラヌス」とは 「コリオリの勇者」という意味があり、グナエウス・マルキウスに与えられた二つ名でした。
そんなコリオラヌスでしたが、食糧不足に端を発した政争に敗れローマを追放されてしまいます。故国に対する復讐心を胸に、かつての敵ウォルスキ族のもとに身を寄せたコリオラヌス。
ローマを相手に連戦連勝のコリオラヌスでしたが、ローマの人々(女性)はコリオラヌスの母親を説得し、彼の家族とともに説得を試みます。
母親に詰め寄られ、哀願する女性たちの姿を見たコリオラヌスは陣を引き払うのでした。
コリオラヌスの最後については諸説あるようですが、悲しい最後だったようです。
コリオラヌスについては、ギリシア人著述家プルタルコスによる記録をもとにシェイクスピアも戯曲「コリオレイナス」を残しています。
ハインリッヒ・ヨーゼフ・フォン・コリンの戯曲「コリオラン」も、プルタルコスの作品をもとに作られています。
■コリオラン序曲が収録されているCDのご紹介です。
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ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンとは

ベートーヴェンについては『すぐわかる!ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンとは|その生涯と作品たち』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:ベートーヴェン「コリオラン序曲」について

コリオラヌスの強さと悲劇が音で表現されているコリオラン序曲。【 】は今回聴いたレコードの演奏時間です。
■コリオラン序曲【8分32秒】
冒頭部分は重苦しく激しい響きで始まります。これが3回繰り返されます。
その後まもなく、何かに駆り立てられるような第1主題に移ります。コリオラヌスの性格と強さを表現しているかのようです。
常に緊張感をキープしてはいますが、所々、柔らかな旋律(第2主題)が束の間の落ち着いた表情を見せます。
決して明るい表情は見せず、緊張と激しさが曲の大部分を構成しています。うなるような度重なる緊張感が、悲劇へと続いているかのようです。
コリオラン序曲の終盤、音量は大きくはありませんが、コリオラヌスがゆっくりと息を引き取っていく姿をイメージしてしまいます。
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮のもと、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が劇的に演奏している序曲「コリオラン」は、聴きごたえ抜群です。
コリオランのお話を知った上で聴くと、曲から受ける印象に物語性が付加されて、頭の中で勝手に視覚的イメージが形成される感覚を覚えます。
ヘルベルト・フォン・カラヤン&ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の組み合わせによるすばらしい演奏なので、先入観なしに聴いても愉しめると思います。
ベートーヴェン生誕250年の今年。あなたも序曲「コリオラン」を聴いてみてはいかがですか?
まとめ
- コリオラン序曲は演奏会用に作られた楽曲。
- 劇作家の友人に献呈された。
■コリオラン序曲が収録されているCDのご紹介です。
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