2020年1月18日にリニューアルオープンしたアーティゾン美術館(旧ブリヂストン美術館)についての記事は、これで3回目となります。
今回は美術鑑賞初心者の方に、わたなび流の楽しみ方をご紹介します。アーティゾン美術館の所蔵作品の一部を撮影したきましたので、その作品を紹介しながら話を進めていきますね。
私は「見えてくる光景 コレクションの現在地」展(2020年1月18日[土]~2020年3月31日[火]まで開催)の初日に鑑賞に行ってきました。
アーティゾン美術館の入館は日時指定予約制になっています。これから行こうとされる場合にはご注意ください。
「見えてくる光景 コレクションの現在地」展では、禁止されている作品を除いて写真撮影がOKとなっていました。また、所蔵作品の画像については、美術館の方にブログへの掲載許可をいただいております。
作品の画像関連の取り扱いについて、アーティゾン美術館の方は次のこともおっしゃっていました。
- アーティゾン美術館の方針として、所蔵作品については写真撮影を認める方針に決めたとのこと(フラッシュはNG)。
- 商業利用はNG。
撮影OKというのは、アーティゾン美術館の所蔵作品に限られていることだと思います。
今後、企画・開催される特別展など、収蔵作品以外の展示物についてはこの限りではないと思われます。
ご自身で、ご確認ください。
わたなび流 初心者向け美術鑑賞の楽しみ方①【有名画家の作品は見逃さない】

私は家族から「ミーハー」だと言われていて、自分自身でも自覚しています。可能であれば、書籍には著者のサインをいただきたいですし、CDには演奏者や指揮者のサインを並んでももらおうとします。そんな私ですから、絵画についても有名画家の作品は観ておきたくなります。
誤解しないでいただきたいのは、有名画家の作品しか関心がないというわけではありません。
初心者の方に有名画家の作品を見逃さないようにおすすめするには理由があります。その理由とは、「これ教科書で観たことある!」とか「画家の名前は知っている!」などのように、自分の記憶にとっかかりがあると作品がより身近に感じやすいからです。
自分の記憶に名画の印象がコネクトして、さらなる記憶が形成されていきます。これを何度も繰り返せば、美術鑑賞の初心者ではなくなります。
美術史や絵画技法などの知識、創作経験がないとダメみたいなことをおっしゃる人もいる可能性はあります。気にしないでください。ご自身が創作活動や美術史の勉強に関心を持ったなら取り掛かればいいのです。まずは、本物を実際に目にして、感じることからはじめましょう。
それでは、「見えてくる光景 コレクションの現在地」展における有名画家の作品たちをご紹介します。
01)ピカソの作品です。ピカソと言えば、その名を知らない人は少ない画家のひとり。ゲルニカなどは美術の教科書にも載っていたかもしれませんね。
鮮やかな色使いで、明るい気持ちになりますね。

02)モネは印象派を代表する画家のひとりで「睡蓮」の作品でも有名です。
私の場合は、写実的な絵画から印象派の作品へと関心が広がっていったタイプです。リニューアルされる前のブリヂストン美術館時代に「モネ展」に行きました。(だいぶ昔の話です…)



03)ルソーも個性的な作品を描いた画家ですよね。見ただけでルソーっぽさが伝わってくる作品が多いです。
この作品からは、ちょっとメルヘンチックな印象を受けませんか?

04)シャガールの作品です。パリ・オペラ座の天井画もシャガールが描いています。(以前は別の画家でした。)
シャガールは、愛をテーマに描いた作品が多いと言われています。

06)レンブラントの作品です。私が最初に好きになった画家です。
「夜警」で有名なレンブラント。
「夜警」はもともとは夜を描いた作品ではないと言われています。
汚れなどで絵が暗くなってしまったのだとか… 実物を見てみたいものです。

05)ルノワールの作品です。可愛らしいお嬢さんなのに、脚を組んでちょっと大人びたポージングですね。
華やかなドレスと相まって、美しい作品です。
ルノワールと聞くと、喫茶店をイメージされるかもしれませんね。

06)マネも有名な画家です。モネと名前が似ていますね。マネもモネ同様、印象派の画家です。


07)セザンヌも有名です。セザンヌも独特な絵を描いていますね。この作品は少し暗い印象を受けます。
絵画は明るくなければならないなどといった決まりはありませんから、画家の個性が出ていても何ら不思議ではありません。
セザンヌ独自の描き方は、その後の画家にも大きな影響を与えたと言われています。
そういったことから、「近代絵画の父」とも言われています。

08)細長い人物の顔が特徴的なモディリアーニの作品。
この「若い農夫」も細長いですよね。
絵画を観ているとつくづく感じます。いろいろな個性の出し方が存在するのだな~と。

わたなび流 初心者向け美術鑑賞の楽しみ方②【有名作品を自分の目で見よう!】

わたなび流 初心者向け美術鑑賞の楽しみ方①でご紹介したように、有名画家の絵を見逃さないようにしていると自然と有名作品に巡り合うこともあります。
楽しみ方の2つ目は、有名作品に注目することです。有名作品は、展覧会のチケットやチラシ、ポスターなどに掲載されていることが多いもの。いわば、その展覧会の目玉作品といったところです。
「見えてくる光景 コレクションの現在地」展では、私も驚いた作品がありましたのでご紹介します。
09)作者は不明ですが、「洛中洛外図屏風」については知っていました。
実物をズドーンと鑑賞できてうれしかったです。
この2点のために薄暗いブースが用意されていて、ガラス越しの鑑賞となりましたが、そのすばらしさは圧巻でした。
人が入り込まないように撮影するのには、少々時間がかかりました。


わたなび流 初心者向け美術鑑賞の楽しみ方③【日本人作家に注目する!】

日本人画家もステキな作品を数多く残しています。現在も活躍中の方々もたくさんいらっしゃいます。
私が以前購入した絵画は、現在も活躍されている方の作品です。個人的にお世話になった方でもありますが、それで絵を購入したわけではありません。その方の作品が好きだったのです。これは妻も同じでした。
いつか、自由になるお金が貯まったら、私の家族を描いて欲しいと思っています。(私のささやかな願望です。)
とはいえ、東京・日本橋の画廊に初めて入ったときには緊張しました。そのときには絵が欲しくて行ったからよかったですが、ブラッと入って何も購入せずに画廊を後にするなんて、若い頃にはできませんでした。
10)草間彌生さんの作品は、私と妻が共にステキだと感じています。
何とも魅力的な作品ですよね。
この作品を撮影するときには、少しでもキレイに撮ろうと苦心しました。
他の方々の迷惑にはなりたくないですから、遠慮しつつタイミングを待ちました。

11)青木繁さんのこの作品は横に長くて、しかも人だかりができていたため、正面から撮影できませんでした。
近づくとフレームに入りきらないし、下がると人が前に立つし…。
それでこの角度になりました。

12)ただただ美しい作品です。
藤島武二さんのことについては、この作品に出合うまで意識したことがありませんでした。
おこがましいのを承知で書かせていただきますが、「欲しい」と感じる作品です。
空と海が絶妙な色合いで淡い感じに混じり合っているのが魅力的ですね。
美しい…

わたなび流 初心者向け美術鑑賞の楽しみ方④【印象に残った作品をじっくり鑑賞!】

私が美術館に足を運ぶ際に、展示されている作品すべてに同じ印象を受けるわけではありません。ここでおすすめする初心者の方への鑑賞法は、画家の有名・無名は関係なしに、作品に主眼を置いて感じるものです。印象に残った作品のところに戻って、じっくりと鑑賞するのです。
こうやっていると、自分の好みの傾向を認識しはじめることでしょう。このような経験を重ねると、自分なりの絵画作品に対する鑑賞基準ができてきます。
基準に合わないものは排除するというのではなく、どの作品をより楽しみたいのかを認識するのです。
おそらく作品の好みは、美術館に行く回数が増えると変化してくると思います。私自身がそうでした。そうやって、関心の幅を広げていくのも楽しいですよ。
私の場合は、最初はいかに正確に描くかがすばらしい画家の基準でした。しかし、上述の通り好きな作品の幅は広がっていきました。「正確に描くこともスゴイけれど、それを追求するだけなら写真でいいじゃない?」と思うようになったからです。
写真が登場する前の時代と現代を同じ土俵で比べることはできないのかもしれませんが、自分の心がステキだと感じる要素は他にもあったんだと気付いたのだと思います。
作品を観る基準には、技法や技術、絵の配色、構図などさまざまな要素が絡んでいます。私は作品全体の雰囲気と存在感を感じて、その作品を「欲しいと思うか否か」で観ています。
これが正解とかそういったことをお伝えしたいのではありません。あなた自身の美術作品鑑賞法の構築に、少しでもお役に立てれば幸いだと思っています。
ここでは、私が個人的に印象に残った作品をご紹介します。いわば、わたなびの好みの作品とも言えます。あなたならどう感じるでしょうか?
13)何とも言えない雰囲気の作品です。
「パリの風景と人物をこんな風に描けるのか?」と思いました。
右側の茶色いのは犬ですよね。
お部屋に飾るとその雰囲気に溶け込んで、かつ明るいムードにしてくれそうな気がします。

14)こういうタッチの絵も好きなんですよ。
こんなこと言ったら失礼ですが、「なんか描けそうな気がする」作品です。
実際のところ私には描けませんよ!
色彩感覚がステキに感じさせるのでしょうね。

15)クラシック音楽好きでもある私にとっては興味をそそられる作品です。
どちらかというと、賑やかな音が聞こえてきそうな雰囲気ですよね。
このような感じの作品も大好きです。

16)この作品、画像からは上手く伝わらないかもしれませんが、画面中央のツボのようなモノがりますよね。
実物では、このターコイズブルーの物体が、浮き上がってくるような軽い錯覚を覚えました。
ピンポイントでインパクトのある不思議な作品でした。

17)シスレーの、純粋にステキな風景画です。
6月よりももう少し暑い季節の印象を受けました。
心が和みますね。

18)これもルソーの作品です。
個人的に右上の飛行船が気になりました。
レッドツェッペリンのファーストアルバムのジャケットを連想させられました。
ルソーの意図とは全く関係ないであろう、個人的な視点での感想です…

19)正直に言って、どこが円卓なのかよくわかりません。
でも…そんなこと関係なしに、この作品の雰囲気が好きです。
落ち着いた色使いも好みです。

20)メアリー・カサットの作品です。
女性画家の作品は少し珍しいですよね。
実は私、アーティゾン美術館のオープン前に開催されたセミナーに参加させていただく機会がありました。
そのときにテーマとなっていたのがメアリー・カサットの「日光浴(浴後)」でした。
とても興味深いお話を聞くことができ、オープン前の美術館に入る機会もいただき、ダブルでうれしかったです。
当然の成り行きで、メアリー・カサットの作品にも注目するようになっていました。
彼女の作品を観ることができて感激です!

わたなび流 初心者向け美術鑑賞の楽しみ方⑤【美術館のお気に入りスポット探し!】

わたなび流 初心者向け美術鑑賞の楽しみ方①~④は、いかがだったでしょうか?
本当はまだまだご紹介したい作品がありますが、今回はここまでにしようと思います。

最後におまけとして、作品だけでなく美術館を楽しむことを提案させていただこうと思っています。楽しむと言っても、騒いだりするわけではありませんよ!
美術館は、落ち着いた雰囲気を楽しめるスポットでもあります。休憩用の椅子なども配置されていたりします。作品が見える位置にイスがある場合もあります。
そういったスポットで、ゆっくりと過ごしてみるのも悪くないですよ。
私は絵画などの作品を鑑賞するだけでなく、美術館自体の雰囲気も好きです。そのため趣味のひとつに「美術館探訪」も含めています。
いくつかの美術館に足を運ぶうちに、あなた好みの美術館スポットが見つかると思いますよ。そういった話をして通じる相手がいると、シンパシーを感じると思います。
そうそう、私の趣味の話ついでにもうひとつ。私は展覧会で観た作品が載っている図録のコレクターでもあります。自分が実際に観た作品をずっと覚えていられないことと、この収集がいつしか個人的な美術図鑑のようになるはずと思ってはじめたことです。
そんな図録などを販売しているミュージアムショップも楽しいですよ!


※ちなみにミュージアムショップの画像撮影も確認の許可を得ています。
わたなび流 初心者向け美術鑑賞の楽しみ方・まとめ

- 美術鑑賞経験が少ない方は、知っている画家や作品を探してみるのもおすすめ!
- 日本人の作品もすばらしいものが数多く存在している!
- 美術館に行く回数が増えてくると、好みの変化を経験したり、あなた自身の鑑賞基準が形成されてくる。
あなたも美術館で美術作品や美術館自体のすばらしさを体験しませんか?