田舎で生まれ育った私にとって、世界的に有名な画家の作品とのファースト・コンタクト。
それが1994年(平成6年)に国立西洋美術館で開催されたバーンズ・コレクション展でした。
すばらしい絵画作品との出会いは、私の絵画に対する情熱を膨らませてくれました。
絵画鑑賞と美術館探訪のキッカケ|国立西洋美術館「バーンズ・コレクション展」

1994年(平成6年)当時、私は新聞広告にまつわるアルバイトをしていました。
その年は大学を4年で卒業できるかどうかの瀬戸際で、必死になっていました。その原因は、私が人の忠告を聞かずに、1・2年時にしっかりと単位を取得していなかったためでした。
大学は夜間学部に通っていたため、平日の昼間はアルバイトに精を出し、平日夜と土曜日は取れるだけの授業を受けていました。
なぜ、このような話をしたかというと、「アルバイト」が少なからず私の絵画鑑賞&美術館探訪に関係しているからです。もう少し正確な表現をするならば、「アルバイトの仲間たちの影響」と言えます。
そのアルバイト先は、北海道から上京した私にとって、個性的で刺激的。いい意味でのカオスと言うか、ダイバーシティ感あふれる人たちが集まっていたのです。
真面目に忍術を学んでいた人や映画監督を目指していた人、音楽活動をしていた人など、私の人生のなかで出会ったことのないような顔ぶれが揃っていました。
そんなある日、先輩のひとりが「バーンズ・コレクションを観たかい?」といったことを口にしました。
何のことか理解できなかった私でしたが、先輩の「観てきた方がいいよ!」の勧めの言葉に後押しされて上野に行くことにしました。
もともと音楽や美術には興味がありました。創作する側ではなく、鑑賞する側としてですが…

上野公園にある国立西洋美術館に行った私は、人の多さに相当な衝撃を受けました。私の記憶が他の展示会とごちゃ混ぜになっていなければ、国立西洋美術館の周囲には数人ずつ並んだ列がかなりの距離で続いていました。
初回はその光景に圧倒されてしまい、帰宅しました。確か土曜日に行ったんですよね。さらに田舎者の私にとって、そんな人混みは未体験の出来事だったのです。テレビでパンダを見るための行列は目にしたことがありましたが…
平日に休みを取って再度チャレンジしました。その時も人は多かったですが、バーンズ・コレクション展を観ることができました。
ルノワールやモネ、ゴッホ、セザンヌ、ロートレックといった、学校で教わった有名画家の作品を観ることができたのですから感動しました。
初めての体験だったため、その時の私には自分なりの絵画鑑賞の仕方が確立されていませんでした。美術館の空間を楽しむことについても同様でした。
ですが、私の美術鑑賞&美術館探訪の楽しみは、ここからはじまったのです。図録のコレクションもスタートしました。
アルバイトの友人の中には、図録を購入しない派の人もいました。その人は、「自分の目で観た印象を自分の記憶にとどめることが重要だ」といった主旨のことを言っていました。
「なるほど、いろんな考えの人がいるなぁ」と思いはしましたが、私は記憶に自信がなかったので図録購入する道を選択しました。
病気の影響で、趣味にも無関心になった時期なども含めて中断していた期間もありました。今は再び絵画鑑賞&美術館探訪にも意欲が出てきています。
バーンズ・コレクション展という、すばらしい機会をいただけたという思いでいっぱいです。
バイト先の仲間や国立西洋美術館、バーンズ・コレクション展とその実現に協力してくださった方々に感謝しています。
バーンズ・コレクションについて

バーンズ・コレクションは、バーンズ財団が所蔵する芸術作品のコレクションです。バーンズ財団は、アメリカのフィラデルフィア郊外にある美術財団です。
バーンズ・コレクションは、美術コレクターだったアルバート・C・バーンズが集めたものです。そのコレクションは、印象派や後期印象派、フォーヴィスム、エコール・ド・パリといった19世紀後半~20世紀前半にかけての近代絵画を中心に2,500点を超えると言われています。
バーンズ・コレクションに含まれる主な画家を紹介します。
- アメデオ・モディリアーニ
- アンリ・ド・トゥールーズ・ロートレック
- アンリ・マティス
- アンリ・ルソー
- エドゥアール・マネ
- エドガー・ドガ
- クロード・モネ
- シャイム・スーティン
- ジョルジュ・スーラ
- パブロ・ピカソ
- ピエール=オーギュスト・ルノワール
- フィンセント・ファン・ゴッホ
- ポール・ゴーガン
- ポール・セザンヌ
バーンズ・コレクションは、アルバート・C・バーンズの遺言により長い期間、門外不出とされていました。
その一部が1994年に国立西洋美術館でも公開されたのですから、美術ファンにとっては歓喜に沸いた出来事だったと思います。1994年(平成6年)1月22日~4月3日の約2ヶ月半に、国立西洋美術館には107万人を超えるの来館者があったそうです。
107万人って、もの凄い人数ですよね。例えるなら、東京都の江戸川区と葛飾区の人口を合わせたくらいです。
私もその107万人の中のひとりだったわけです。私にとっては、上京していたからこそ巡り合えた機会だったと言えます。
ウィリアム・グラッケンズは、友人であるアルバート・C・バーンズの「エージェント兼アドバイザー」をしていたんだ。

国立西洋美術館について

- JR上野駅・公園口改札を出て横断歩道を渡ると東京文化会館あります。
- 東京文化会館の建物に添って右に少し進むと、すぐに太い道が現れます。
- その道の右側にあるのが国立西洋美術館です。
鉄筋コンクリートで作られた建物は、フランス人建築家ル・コルビュジエの設計によるものです。現在は世界文化遺産に登録されています。
庭にはロダンの「考える人」や「地獄の門」などが設置されています。
国立西洋美術館には、松方コレクションと呼ばれる松方幸次郎氏の収集した芸術作品が常設展示されています。松方幸次郎氏は川崎造船所(現在・川崎重工業)の社長を務めた方です。
松方コレクションには、中世末期から20世紀はじめにかけての西洋絵画などが集められています。
国立西洋美術館は、1959年(昭和34年)、松方コレクションを展示・収蔵するために建てられました。
■所在地
〒110-0007
東京都台東区上野公園7番7号
まとめ
- 私にとっては、長期間、門外不出とされていた美術作品を観ることができた特別な出来事。
- 絵画鑑賞と美術館探訪の原点。
- 人の多さに驚いた!