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表情が乏しい?ベルナルディーノ・ルイーニ作「聖エリザベツと幼い洗礼者聖ヨハネのいる聖母子」|東武美術館「ハンガリー国立ブダペスト美術館所蔵 ルネサンスの絵画」より

ルネサンスの絵画_ベルナルディーノ・ルイーニ「聖エリザベツと幼い洗礼者聖ヨハネのいる聖母子」【アイキャッチ】
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ベルナルディーノ・ルイーニ作「聖エリザベツと幼い洗礼者聖ヨハネのいる聖母子」は、1994年(平成6年)に東武美術館で開催された「ハンガリー国立ブダペスト美術館所蔵 ルネサンスの絵画」展の図録の表紙を飾った作品です。

ですが、ふたりの女性の表情が乏しい気がしませんか?
喜ばしい場面だと思うのですが…。

「ハンガリー国立ブダペスト美術館所蔵 ルネサンスの絵画」展の図録をもとに考察してみました。

ベルナルディーノ・ルイーニ作「聖エリザベツと幼い洗礼者聖ヨハネのいる聖母子」とは

ルネサンスの絵画_ベルナルディーノ・ルイーニ「聖エリザベツと幼い洗礼者聖ヨハネのいる聖母子」
  • 制作年:1515年~1520年
  • サイズ:89.0 × 66.0cm
  • 油彩、板

「聖エリザベツと幼い洗礼者聖ヨハネのいる聖母子」は、聖書外伝をもとに制作されたようです。

画面右側にはマリアとイエス・キリストが、左側にはエリサベツとバプテスマのヨハネが描かれています。

幼いイエス・キリストとヨハネからは、赤ちゃんらしいやわらかさを感じますね。ヨハネが右手を伸ばしているのは、イエス・キリストが黒い花(?)の付いた茎を手にしているからでしょう。

ヨハネが左側に体をひねっている様子が胸やお腹の表現から伝わってきます。

右側のマリアの頭上付近には蝶が描かれています。木と同化しているようにも見えますが…

ふたりの母親は非常に落ち着いた雰囲気で、子供たちを見守っているのでしょう。衣装の襞(ひだ)がゆったりとしていることも、おおらかさを感じさせる要素かもしれません。

背景には葉の生い茂った植物が、足元には土のかぶった平たい石と黄色い花が描かれています。

画面からは鮮やかさとか明るさは感じにくいです。何と言っても、ふたりの母親の表情が乏しいのが気になります。

マリアは薄っすらと微笑んでいるように見えなくもないですが、エリサベツはほぼ無表情です。

私はこの場面を読んだことはありませんが、聖書外伝を読めばこの二人の表情の理由がわかるのでしょうか?

ベルナルディーノ・ルイーニとは

イタリア・マッジョーレ湖【ターラント邸庭園からの眺め】イタリア・マッジョーレ湖【ターラント邸庭園からの眺め】

ベルナルディーノ・ルイーニはイタリア・ルネサンス期の画家です。レオナルド・ダ・ヴィンチとも仕事をしたと伝えれていて、ルイーニの作風にはレオナルドが大きく影響しています。

ベルナルディーノ・ルイーニが生まれたのは1480年(文明12年)~1482年(文明14年)頃だと考えられています。 出身地はイタリア北部のマッジョーレ湖近郊の街ドゥメンツァの分離集落ルーノです。

■分離集落とは

分離集落とは、イタリアにおける基礎自治体(コムーネ)の下位の行政区画のことです。
街から離れた場所にある村落や集落といったイメージだと思われます。

ベルナルディーノ・ルイーニの生涯についての情報は少ないため、詳しいことはわかりません。

1500年(明応9年)、ルイーニは父親とミラノに移り住んでいます。どうやら、ジョヴァン・ステファノ・スコットという人物の下で絵画を学んだようです。

ルイーニにはもう一人師匠と思われる人物がいます。アンブロジオ・ベルゴニョーネです。

1504年(文亀4年・永正元年)からの約3年間、ルイーニはヴェネツィアから北へ30km程離れたトレヴィーゾに滞在していたと考えられています。その根拠は、ルイーニのものと思われるサインの入った作品があるためです。

ルイーニが初めて描いたフレスコ画は、1505年(永正2年)頃に描かれた「聖マギの崇拝」と「聖ゲラールドと画家たち」です。

1509年(永正6年)になると、ルイーニはミラノに戻ります。そこではヴィッラ・ペルッカのフレスコ画等の制作を行ないました。

1516年(永正13年)にはサン・ジョルジョア・アル・パラッツォ教会(ミラノ)の礼拝堂にキリストの受難を描きました。

1521年(永正18年・大永元年)、ルイーニはローマを旅し、「アテナイの学堂」で有名なラファエロの影響を受けました。

ベルナルディーノ・ルイーニの作品をいくつかご紹介します。

  • 「聖母子と聖ヨハネ」ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵
  • 「サロメ」ボール州立大学美術館所蔵
  • 「聖家族」プラド美術館所蔵
  • 「聖カタリナ」エルミタージュ美術館所蔵

etc...

ベルナルディーノ・ルイーニは、1532年(享禄5年・天文元年)にミラノで亡くなりました。

わたなびはじめの感想:ベルナルディーノ・ルイーニ「聖エリザベツと幼い洗礼者聖ヨハネのいる聖母子」について

東武美術館 ルネサンスの絵画

ベルナルディーノ・ルイーニの描いた「聖エリザベツと幼い洗礼者聖ヨハネのいる聖母子」は、「ハンガリー国立ブダペスト美術館所蔵 ルネサンスの絵画」展の図録の表紙を飾っていることから、この特別展の目玉作品のひとつだったのでしょう。

ルイーニはレオナルド・ダ・ヴィンチの影響を受けているのですから、個人的には二人の女性がもう少し微笑んだ表情で描かれていたら、魅力がアップしたかもしれないと思うのです。レオナルドの「岩窟の聖母」で描かれているマリアのようなやわらかさが感じられたらと。

とはいえ、「モナ・リザ」も含めてレオナルド・ダ・ヴィンチの描く人物の表情は、それほど微笑んではいないようにも思います。

上述した「岩窟の聖母」のマリアにしても、「微笑んでいる」というよりは「やわらかく描かれている」と表現した方が適切なのかもしれません。そうであるならば、ルイーニはやはりレオナルド的に描いているとも言えますね。

「聖エリザベツと幼い洗礼者聖ヨハネのいる聖母子」の雰囲気は暗めで落ち着いていますが、色彩は豊かな作品です。

最後に、いつものわたなび流の感想で終わりたいと思います。
ベルナルディーノ・ルイーニ作「聖エリザベツと幼い洗礼者聖ヨハネのいる聖母子」は、「美術館で鑑賞したい作品」です。

板に描いたルイーニの筆触を、もう一度ジックリ鑑賞してみたいところです。

まとめ

聖エリザベツと幼い洗礼者聖ヨハネのいる聖母子
  1. ルイーニはレオナルド・ダ・ヴィンチの影響を大きく受けている画家。
  2. ルイーニの生涯についてはあまり知られていない。
  3. 「聖エリザベツと幼い洗礼者聖ヨハネのいる聖母子」は、「ハンガリー国立ブダペスト美術館所蔵 ルネサンスの絵画」展図録の表紙を飾っている。

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