「花のブリューゲル」との異名をとる画家、ヤン・ブリューゲル(父)。
2004年(平成16年)、東京都美術館で開催された「ウィーン美術史美術館所蔵 栄光のオランダ・フランドル絵画展」の図録をもとに「小さい花卉画-陶製壷の-」を回想してみます。
ヤン・ブリューゲル(父)作「小さい花卉画-陶製壷の-」とは

- 制作年:1607年頃
- サイズ:51.0 × 40.0cm
- 油彩、木版
精密かつ緻密に描かれた花卉画(かきが)で「花のブリューゲル」として名を馳せた、ヤン・ブリューゲル(父)。
花卉画(かきが)は17世紀初頭のオランダで、絵画のジャンルとして成立しました。
ジャンルとして確立されるためには、おもに2つの経路が考えられます。
- とびきり有名な画家が絶対的な人気を博す。
- 複数の画家が類似の作品を制作し、一般に定着する。
花卉画(かきが)の場合は②のケースで、複数の画家がこの種の作品を手がけました。その中でも特に重要な存在の画家が、ヤン・ブリューゲル(父)でした。
ヤン・ブリューゲル(父)ほど多種の花々を、忠実かつ自然な作品として描いた画家はいませんでした。
通常は時期が違って咲く花も、画家による構成でひとつの画面に収められることもあるのです。
ヤン・ブリューゲル(父)の「小さい花卉画-陶製壷の-」には、バラ、チューリップ、水仙、アイリス、ユリ、菊(?)、カーネーション等が描き込まれています。
私の視線は、画面右上の水色の花(アイリス)に向いてしまいます。
花を生けたことのない私にとって、「これほどのボリューム感のある花々をあの花瓶(陶製壷)で支えることはできるのか?」といった疑問も湧いてきます。
背景の暗さとは対照的に花々にスポットライトが当たっているような描かれ方は、花を際立たせるだけでなく、画家の精緻な技巧をアピールする効果も発揮しているように思えてなりません。
花瓶の横に散らばっている指輪や硬貨は、どのような意図で描かれているのか不明です。
いずれにしても「小さい花卉画-陶製壷の-」は、ヤン・ブリューゲル(父)の花に対する観察力と表現力が見事に調和した作品です。
ヤン・ブリューゲル(父)とは

ヤン・ブリューゲルの生涯については、『すぐわかる!ヤン・ブリューゲル(父)とは』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:ヤン・ブリューゲル(父)「小さい花卉画-陶製壷の-」について

我が家では生花は飾っておりません。花が嫌いなわけではありません。
ただ…お花をすぐダメにしてしまうんです。
これまでにお花をいただいたこともありましたが、ほんの数日で枯らしてしまって申し訳ない気持ちになることが何度かありました。
ちなみに妻は若い頃、花の名前も知らないのにお花屋さんでアルバイトしたことがありました。1週間でクビになったそうです。
そんな夫婦なので花を飾るなら絵画がいいかなと思っています。
個人的にはヤン・ブリューゲル(父)の「小さい花卉画-陶製壷の-」よりもシンプルな作品の方が好きですね。たくさんの花々を描き込むというよりは、一輪挿しの方が落ち着くように思えるからです。
最後に、いつものわたなび流の感想で終わりたいと思います。
ヤン・ブリューゲル(父)作「小さい花卉画-陶製壷の-」は、「美術館で鑑賞したい作品」です。
美しい作品ですが、私の生活空間には少し合わない気がします。
まとめ
- ヤン・ブリューゲル(父)は花卉画(かきが)で有名。
- 花の観察力と描き込む技量に感嘆。
- 花卉画(かきが)は17世紀初め頃にオランダで確立されたジャンル。