クロード・モネは数多くの「睡蓮」を描いています。
今回ご紹介する作品は、1994年(平成6年)にブリヂストン美術館で開催されたモネ展と2020年(令和2年)にアーティゾン美術館で開催された開館記念展の2度に渡って鑑賞できた作品です。
名称は変わったものの同じ美術館に所蔵されている作品なので十分にあり得ることですが、26年の時を経て対峙した同一の作品というシチュエーションにおもしろさを感じました。
クロード・モネ作「睡蓮」とは

- 制作年:1903年
- サイズ:81.5 × 100.5cm
- 油彩、キャンヴァス
1903年(明治36年)以降のモネは拡張したジヴェルニーの庭で睡蓮を描くことに集中します。モネは1903から1908年(明治41年)の期間、「睡蓮」をモチーフに80点以上もの作品を制作しました。
ジヴェルニーについては『まるで緑の宝石!クロード・モネ作「睡蓮の池と日本の橋」|ブリヂストン美術館「モネ展」より』もご覧ください。
私は植物についての知識はほとんど持ち合わせていません。そこでウィキペディアで調べてみたのですが、「睡蓮」とはヒツジグサ(未草)の漢名だそうです。睡蓮は水生多年草ですが、日本ではヒツジグサ(未草)の1種だけが自生しているとのこと。
モネが関心を抱いたのが「睡蓮の花そのもの」なのか「睡蓮の咲く池」なのかはわかりません。
私個人としては、モネは睡蓮の咲く池に興味があったのではないかと思っています。
正直なところ、透き通っているとは言い難い池なのに、なぜ?とも考えたました。その反面モネの庭の池は、鏡のごとく水面に周囲の景色や光を映し出します。
その微妙なゆらぎにモネは関心を持っていたのではないかと思うのです。(単純にモネが睡蓮を好きだったからとも考えられますが…)
今回ご紹介している「睡蓮」は、華々しさはありませんが水面の色の移り変わりが非常に美しいです。画面上部に垂れ下がる枝もアクセントになっていて作品に奥行きを感じさせています。
モネの「睡蓮」、同じ作品に2度出会う
ここまではアーティゾン美術館がブリヂストン美術館と呼ばれていた頃に開催された「モネ展」で観た「睡蓮」についてお伝えしてきました。
ここで次の画像をご覧ください。

こちらは2020年1月にアーティゾン美術館で観たモネの「睡蓮」です。
同じ作品ですよね。
ちなみに画面左下のプレートを拡大してみますね。

1903年にモネが描いた作品であることが確認できます。ブリヂストン美術館のモネ展で観た「睡蓮」も1903年の作品です。
モネは「睡蓮」を多数描いているので、これだけで同じ作品だと断定するのは無理があるかもしれません。
さらに気がかりなのは、「モネ展」の図録でのアルファベットの解説に「Nymphéas」となっていることです。上図プレートでは「Water Lilies」となっていますよね。
こちらについては単なる言語の違いのようなので気にしなくてもよさそうです。「Nymphéas」とはフランス語で、「Water Lilies」は英語で「睡蓮」を意味します。
私は次の理由から、2つの「睡蓮」が同一作品であると思っています。
- 「モネ展」で鑑賞した「睡蓮」を所蔵しているのが「石橋財団ブリヂストン美術館」であること。
- 目視で同一だと思えること。
ブリヂストン美術館がリニューアルして誕生したのが「アーティゾン美術館」なのでまず間違いないでしょう。
私がブリヂストン美術館に足を運んだのは「モネ展」の1回のみだったので、「モネ展」後に常設展を観に行っていたなら同じ「睡蓮」が展示されてい可能性はあります。
しかし、さまざまな美術館の特別展に強い関心を抱いていたため、その機会はありませんでした。
その間にリニューアル工事があり、アーティゾン美術館として生まれ変わっていたのですね。約26年という時の経過が、同じ作品に再び出会えた喜びをより大きくしてくれたのだと思っています。
クロード・モネとは

クロード・モネについての紹介は『すぐわかる!クロード・モネとは|印象派を代表する画家の生涯』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:クロード・モネ作「睡蓮」について

上図は枝と睡蓮を拡大した画像です。
モネの筆触が感じられて興味深いですね。
アーティゾン美術館「見えてくる光景」展では、禁止されている作品は別として、作品の撮影が許可されていたのでこのように紹介することができました。
モネの「睡蓮」について思い巡らしていたら、古い記憶が蘇ってきました。
20年以上昔のこと、九州であるお宅にお邪魔させていただいた折、同席していた方が「花を育てられる人は心のやさしい人だ」とおっしゃっていたことを思い出しました。
そのお宅にはたくさんの花が咲き誇り、全てがきれいに手入れされていたので、上述の言葉に強い説得力を感じたのです。
人間の記憶はおもしろいですね。
時や場所、対象物が違っても何かで関連付けられていて、予期せぬタイミングで思い出すのですから。おそらく今回は「花」がキーワードだったのでしょう。
最後に、いつものわたなび流の感想で終わりたいと思います。
クロード・モネ作「睡蓮」は、「美術館で鑑賞したい(欲しいとまでは思わない)作品」です。
近い将来、もう少しモネについて学ぶ機会を作って、「なぜ睡蓮にこだわり続けたのか?」を調べてみたいと思います。
まとめ
- ブリヂストン美術館は現在アーティゾン美術館にリニューアルしている。
- 約26年を経て同じ作品を鑑賞できたことに感激。
- なぜモネが睡蓮を描くようになったのか興味が深まった。