幸せそうな男女を描いた作品、フランシスコ・デ・ゴヤの「日傘」。
先日は、ビゼーのカルメン組曲やアルルの女組曲のレコードジャケットで使用されていたことをご紹介しました。
今回は、2002年(平成14年)に国立西洋美術館で開催された「スペイン王室コレクションの美と栄光 プラド美術館展」の図録をもとに、鑑賞した際の印象や作品の背景などを回想してみます。
フランシスコ・デ・ゴヤ作「日傘」とは

- 制作年:1777年
- サイズ:104.0 × 152.0cm
- 油彩、カンヴァス
この作品は、スペイン・マドリードの近くに位置するエル・パルド宮の食堂を彩るタペストリーの原画のひとつです。
エル・パルド宮には、後の国王カルロス4世とその王妃マリア・ルイサ(王太子夫妻)がお住まいでした。
「スペイン王室コレクションの美と栄光 プラド美術館展」の図録解説によると、ゴヤは1777年(安永6年)3月~8月の期間に「日傘」を制作したと考えられているようです。
「日傘」という作品は、フランス・ロココの「雅宴画(フェート・ギャラント)」に着想を得ているように思います。
ゴヤはそれに応えたんだね。
「日傘」に描かれている女性の衣服の青色がとても鮮やかで、黄色いスカートに似合っています。
右手には扇子を持ち、黒い子犬を膝に乗せて微笑んでいる女性の姿は、人生における不安のない一場面を切り取ったかのようです。
日傘を差す男性も、温和で人の良さが伝わってきます。
雲が迫ってきそうな天候のようですが、屋外でくつろぐ男女のいる場所には日差しが差し込んでいますよね。この男女の姿には、微笑ましさを感じさせられてしまいます。
この作品でゴヤは、マリア・ルイサ妃の要望にしっかりと応えたのではないでしょうか?
フランシスコ・デ・ゴヤとは

フランシスコ・デ・ゴヤの生涯については、『すぐわかる!フランシスコ・デ・ゴヤとは』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:フランシスコ・デ・ゴヤ「日傘」について

ゴヤの「日傘」は、温かみと明るさを感じるステキな作品だと思います。
女性の衣類について上述しましたが、頭の飾りは「赤色」、胴衣は「きれいに輝く青色」、スカートは「黄色」といったように、配色がキッチリしているのを感じます。
二人の若者の表情の温和さと頬の紅潮が、作品の魅力を増す要素になっているのでしょう。
個人的にひとつ疑問なのは、日傘が「緑色」であることです。
屋外の光景ですし、周囲の緑と馴染んで違和感は少ないのですが…
現代の私の感覚による日傘のイメージでは、黒や紺色、白の方が一般的なのかなぁ?と感じてしまいました。
おぼろげながら、2002年(平成14年)に国立西洋美術館で開催された「スペイン王室コレクションの美と栄光 プラド美術館展」を鑑賞した際には、ゴヤの「巨人」などに自分の意識が持っていかれていたような記憶があります。
その後、レコードジャケットに使用されているのを知ったり、あらためて「スペイン王室コレクションの美と栄光 プラド美術館展」の図録を見直すことで、徐々に「日傘」の魅力が増してきたような感じです。
最後に、いつものわたなび流の感想で終わります。
フランシスコ・デ・ゴヤの描いた「日傘」は、「自宅で鑑賞したい(欲しい)と思える作品」です。
もう一度、じっくりと鑑賞したい作品です。
まとめ
- 後の国王カルロス4世とその王妃マリア・ルイサ(王太子夫妻)の宮殿の食堂を飾った作品の原画のひとつ。
- 優雅で楽し気な雰囲気を感じる作品。
- 将来を楽観しているような微笑ましさを感じる作品。