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寂しげな母とあどけない少女の対比!ヘラルト・テル・ボルフ作「林檎の皮をむく女性」|東京都美術館「ウィーン美術史美術館所蔵 栄光のオランダ・フランドル絵画展」より

栄光のオランダ・フランドル絵画展_ヘラルト・テル・ボルフ「林檎の皮をむく女性」【アイキャッチ】
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寂しげな母とあどけない少女の対比が印象的なヘラルト・テル・ボルフ作「林檎の皮をむく女性」。

幼い子供の表情を見事に表現している作品です。

2004年(平成16年)に東京都美術館で開催された「ウィーン美術史美術館所蔵 栄光のオランダ・フランドル絵画展」の図録をもとに回想してみます。

ヘラルト・テル・ボルフ作「林檎の皮をむく女性」とは

栄光のオランダ・フランドル絵画展_ヘラルト・テル・ボルフ「林檎の皮をむく女性」
  • 制作年:1660年頃
  • サイズ:36.3 × 30.7cm
  • 油彩、木板で裏打ちしたカンヴァス

ヘラルト・テル・ボルフの描いた「林檎の皮をむく女性」は、蝋燭の灯も消え、薄暗い雰囲気を感じさせる作品です。

背景の壁には地図らしきものが掛けられています。

「ウィーン美術史美術館所蔵 栄光のオランダ・フランドル絵画展」の図録解説によると、リンゴの皮をむく女性のモデルはヘラルト・テル・ボルフの妹だとのこと。

風俗画の中に、皿に盛られた果物といった静物画的要素が組み込まれている感じがします。

なぜ女性は黒い頭巾をかぶっているのでしょう?

わたなびはじめ
わたなびはじめ
黒い頭巾は未亡人であることを示しているようだよ。

当時のオランダでは、女性がリンゴの皮をむく行為は「敬虔な主婦の美徳」を象徴していたのだそうです。

そのように考えると「林檎の皮をむく女性」という作品は、単なる風俗画ではなく、女性の美徳というメッセージ性を持った作品ということになりますね。

個人的には、母親を斜め下から見上げる少女のあどけない表情が印象的です。何とも可愛らしい、子供らしさを見事に表現しています。

母親とは対照的にオシャレな帽子を娘にかぶらせていることも、ヘラルト・テル・ボルフのメッセージが込められているのでしょう。

どことなく虚無感を感じさせる作品ではありますが、人物の表情には惹きつけられる何かを感じます。

ヘラルト・テル・ボルフとは

オランダ・デーフェンテルオランダ・デーフェンテル

ヘラルト・テル・ボルフは17世紀に活躍したオランダの画家です。
肖像画や風俗画の分野で知られています。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
ヘラルト・テル・ボルフの現存する作品は非常に少なくて、80作品ほどしかないらしいんだ!

ヘラルト・テル・ボルフは1617年(元和3年)12月にズヴォレで誕生しました。ズヴォレはオランダ東部に位置するオーファーアイセル州の基礎自治体です。

ズヴォレはアムステルダムから120km程の距離にあります。
その起源は、西暦800年頃まで遡ります。

父親が画家だったこともあり、幼少期から芸術教育を受けていました。ボルフ家は裕福な家庭だったようです。

1632年(寛永9年)にはアムステルダムに行き、デュイステルから絵画を学んだと考えられています。(コデという説もあります。)

その2年後の1634年(寛永11年)には、ハールレムにてピーテル・デ・モレインから学びました。

ハールレムは、オランダ北ホラント州の基礎自治体です。
中世以降は造船や毛織物といった産業で栄えました。
17世紀頃からはチューリップの球根栽培も盛んになったようです。

1635年(寛永12年)にハールレムの画家組合に加入したヘラルト・テル・ボルフ。

彼はヨーロッパ諸国(イギリス、イタリア、フランス、スペイン)を巡る旅をしました。

ヘラルト・テル・ボルフはスペイン・マドリードを訪れます。そしてスペイン国王フェリペ4世により騎士に叙せられました。

残念ながらヘラルト・テル・ボルフを取り巻く状況は安心できるものではありませんでした。陰謀によりオランダへの帰国を余儀なくされたようです。

ヘラルト・テル・ボルフはハールレムにも滞在したようですが、最後にはオランダ東部に位置するオーファーアイセル州の基礎自治体「デフェンテル」に落ち着きます。

1665年(寛文5年)にはデフェンテルの市民権を獲得し、翌年には市議会議会もなっています。

1681年(延宝9年・天和元年)12月8日、ヘラルト・テル・ボルフはデーフェンテルにて亡くなりました。

わたなびはじめの感想:ヘラルト・テル・ボルフ「林檎の皮をむく女性」について

オランダ・アムステルダムオランダ・アムステルダム

「林檎の皮をむく女性」に描かれている母親はリンゴの皮むきが上手ですね。

青い布で覆われた左側のテーブルには、長く剥かれたリンゴの皮が載っています。

正直なところ、2004年(平成16年)に東京都美術館でこの作品を鑑賞した際の印象はほとんど残っていません。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
フェルメールの作品のことばかり意識していたのだと思うな。

それから約16年の歳月を経て「ウィーン美術史美術館所蔵 栄光のオランダ・フランドル絵画展」の図録を見直すと、実物を観たときにはおそらく感じなかった「子供のあどけない表情」に視線が釘付けに…

私自身も歳をとり、作品を見つめる視点が変化してきているのかもしれません。

「林檎の皮をむく女性」からは質素さが伝わってきますが、よく観ると身に着けている衣類などはオシャレな感じがします。

オランダ絵画のしきたりというかメッセージ性(象徴)を理解すると、今とは違った印象を持つようになる気がします。

最後に、いつものわたなび流の感想で終わりたいと思います。
ヘラルト・テル・ボルフ作「林檎の皮をむく女性」は、「自宅で鑑賞したい(欲しい)と思える作品」です。

もっと突っ込んで表現するなら、子供の表情部分をクローズアップして、より明るい雰囲気にしたものが理想ですね。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
そうなると、もう別の作品になりかねませんが…

まとめ

ボルフ「林檎の皮をむく女性」
  1. ヘラルト・テル・ボルフは肖像画や風俗画を描いた17世紀オランダの画家。
  2. 現存する作品は80点ほどしかない。
  3. 「林檎の皮をむく女性」はあどけない子供の表情が印象的。

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