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ヤン・シベレヒツ作「農村の荷車」|伊勢丹美術館「アイルランド国立美術館名品展」より

アイルランド国立美術館名品展_ヤン・シベレヒツ「農村の荷車」【アイキャッチ】
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絵画を観て心が和んだり、景色の美しさに感銘を受けることはありませんか?

ヤン・シベレヒツの描いた「農村の荷車」は、まさにそのような作品です。

1994年に伊勢丹美術館で開催された「アイルランド国立美術館名品展」で出会った作品を思い出してみました。

ヤン・シベレヒツ作「農村の荷車」とは

アイルランド国立美術館名品展_ヤン・シベレヒツ「農村の荷車」
  • 制作年:1671年
  • サイズ:72.4 × 85.5cm
  • 油彩、カンヴァス

ヤン・シベレヒツは「農村の荷車」において17世紀後半のフランドル地方の田舎の風景を描いています。

「フランドル」という呼称は、もとはフランス語に由来しているようで、その地域は現在の次の地域を指しています。

  • ベルギー西部
  • オランダ南部
  • フランス北部

「農村の荷車」には、荷馬車とそれに乗る人物だけでなく、犬、牛、ヤギ(?)、羊(?)などの動物も描き込まれています。画面右側には馬に乗った人物も描かれているようです。とてものどかな風景で、穏やかな流れの川と木々が自然の美しさを伝えています。

荷車を御しているのは赤い服の幼い少年です。勝手な想像ですが、収穫した野菜などを市場に売りに行く母を手伝っているのでしょう。

この時代は、少年といえども立派な働き手だったのですね。それは日本も同じだったことでしょう。

この少年は、小さい頃から大人の世界に接することでたくましく成長したのではないでしょうか。市場において、大の男たちを相手に商売をする母親を守ろうという気持ちも育っていたはずです。

「農村の荷車」は、とても美しい風景の中に人々の生活を感じられる作品です。

もう少し「農村の荷車」を眺めてみましょう。

女性が何を見つめているのが気になりませんか?

画家や鑑賞する私たちを見ているのかと思いましたが、よく見ると、少年と共に牛たちを御している犬に視線が注がれているようです。いわゆる「カメラ目線」ではなさそうです。

とはいえ、少年と女性が顔をこちら側に向けていることで、観る側は一瞬、見つめられているのかと思ってしまいます。ヤン・シベレヒツが意図的に狙った効果かもしれません。

少年の洋服の赤色は、「農村の荷車」という作品におけるアクセントになっています。花でも咲いていないかぎり、自然にはなかなか存在しない色ですから。

ヤン・シベレヒツが描いた「農村の荷車」は、具体的にはどこの景色なのかも気になりました。

画面中央右奥に大聖堂のような建造物が見えます。上から見ると十字形をしている建物のようなので探してみましたが特定できませんでした。

ヤン・シベレヒツはアントウェルペン(アントワープ)の出身です。アントウェルペン(アントワープ)は、ベルギー王国フランデレン地域・アントウェルペン州の州都でヨーロッパ有数の港湾都市のひとつです。

もしかすると、ルーベンスの作品があるアントウェルペン(アントワープ)の聖母大聖堂かもしれませんね。

ヤン・シベレヒツとは

ベルギー・アントワープベルギー・アントワープ

ヤン・シベレヒツは、1627年(寛永4年)にアントウェルペン(アントワープ)で生まれました。

彫刻家だった父親から美術について学んだ可能性が高いです。その後、1645年(正保2年)~1648年(正保5年・慶安元年)の期間にイタリアを旅しながら腕を磨いたようです。

それだけでなく、ルーベンスの影響もあったことでしょう。アントウェルペン(アントワープ)の聖母大聖堂には、「フランダースの犬」でも有名なルーベンスの作品があるのですから。

ヤン・シベレヒツはアントウェルペン(アントワープ)の画家組合に所属していました。

1670年代初頭、ヤン・シベレヒツは家族と共にイギリスに移り住んでいます。バッキンガム公ジョージ・ヴァリアーズに招かれてのことでした。

イギリスでは地元貴族からの注文に応じて作品を描いたようです。

ヤン・シベレヒツは1703年(元禄15年)頃、ロンドンで亡くなりました。

わたなびはじめの感想:ヤン・シベレヒツ作「農村の荷車」について

ベルギー アントワープPublicDomainPicturesによるPixabayからの画像:ベルギー アントワープ

現在の日本も50年前に比べるとだいぶ風景が変わっているはず。以前、久しぶりに故郷に帰った際に、自分が青春時代を過ごしたときの風景との違いに驚いたことがありました。

それが350年も前のこととなると想像するのも難しくなります。

ヤン・シベレヒツの描いた場所がどこなのか特定できなかったことは上述した通りです。ですが数百年を経た現在、「農村の荷車」の舞台となった場所の近くにはビルが建ち並んでいる可能性もありますよね。

「農村の荷車」を見ていると、日本の風景とは違いますが少し懐かしさを感じます。人と自然や動物との距離が近いことが関係しているのでしょう。

ヤン・シベレヒツが「農村の荷車」を描いた時期は、日本では江戸時代にあたります。江戸のや京都のような大きな町から少し離れると、田畑が広がり、自然に包まれるようにして人々が暮らしていたであろうことが想像できます。

いずれにしても、木々や川が描かれている風景にはやすらぎを感じます。ヤン・シベレヒツはとてもクリアで爽やかに風景を描いているので、心に違和感なくスーッと入り込んできます。

最後に、いつものわたなび流の感想で終わりたいと思います。
ヤン・シベレヒツの描いた「農村の荷車」は、「自宅で鑑賞したい(欲しい)と思える作品」です。

見るたびに心が落ち着きそうで、ステキですよね。

ヤン・シベレヒツ「農村の荷車」
  1. ヤン・シベレヒツはアントワープ出身の画家。
  2. ヤン・シベレヒツはロンドンに移り住んだ。
  3. 「農村の荷車」は、自然と人の営みが描かれている。

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