美術作品

よく観たら違う?ヤン・ファン・デ・カペレ作「冬の河川風景」|伊勢丹美術館「アイルランド国立美術館名品展」より

アイルランド国立美術館名品展 ヤン・ファン・デ・カペレ「冬の河川風景」

よく観ると、思っていたのと違う!なんてことありませんか?

ヤン・ファン・デ・カペレが描いた「冬の河川風景」を観たら、あなたもきっとギャップを感じるはず。

1994年に伊勢丹美術館で開催された「アイルランド国立美術館名品展」の図録をもとに振り返ってみました。

  • 制作年:1653年頃
  • サイズ:45 × 54.7cm
  • 油彩、カンヴァス

ヤン・ファン・デ・カペレ作「冬の河川風景」

アイルランド国立美術館名品展 ヤン・ファン・デ・カペレ「冬の河川風景」

「冬景色」という言葉がありますが、ヤン・ファン・デ・カペレの「冬の河川風景」にピッタリだと思いませんか?

私がこの作品を目にしたとき、300年以上昔のヨーロッパの凍てつく大地のうえで寡黙に生きている人々を描いた作品だと思いました。

しかし「アイルランド国立美術館名品展」の図録によると、2つの間違いに気が付きました。

  1. 人々が立っているのは大地ではなく、凍った川のうえだった!
  2. 寡黙な姿ではなく、コルフというゲームをしている姿だった!

コルフについては図録の解説をご紹介しますね。

「コルフ」とは、ゴルフに似た、氷上で行なわれる17世紀のゲームである。

出典:『アイルランド国立美術館名品展図録』
Dr.Brain P.Kennedy著 斎藤郁夫訳 78ページ

確かに人が立っているのは氷の上のように見えますし、棒状のクラブのようなものを持っています。
ゲートボールかアイスホッケーのようにも見えますね。

まさか寒い冬を乗り切るためにゲームをして楽しんでいる光景だったとは…。
ジックリと観ていなかった証拠です。

もう少し想像力を働かせるなら、氷上の4人は画面右側にある屋根に雪の積もった家に住んでいる家族なのでしょう。
そして、家の側に立っているのはおばあさん。
さすがにゲームをする気にはなれないといった感じでしょう。

「冬の河川風景」にはもう一人描かれていますね。
画面中央付近に掛かっている橋の側に、後ろ姿で描かれています。
気づかれましたか?

それと…よくわからないものも描かれていますね。

画面中央下段の川と陸地の境目付近に、円形の穴のようなものがあります。
左に氷の塊があるということは、ワカサギ釣りのような感じで穿った穴なのでしょうか?
もしかすると、飲み水を汲むための穴かもしれません。

わからないことがあると、どんどん想像力が働いて楽しくなってきます。
正しいかどうかはわかりませんが…。

私も一応北国で育ったので冬の寒さはそれなりに知っているつもりです。
それなりにというのは、北国の割には暖かい場所だったからです。
東京も冬は寒いのですが、上京してから一度も起床時に布団から出たくないほどの寒さは感じた記憶がありません。

故郷(函館)と東京で共通しているのは、寒い冬は空気が澄んでいる日が多いということです。
この作品もそんな冬の一日なのでしょう。

ヤン・ファン・デ・カペレは「冬の河川風景」を通じて、寒い冬とゲームに興じる家族の一体感(温かさ)を対比しているかのようです。

景色からは、本当に寒さが伝わってくる感じがします。
葉が一枚も残っていない木も寒々しい限りです。
ヤン・ファン・デ・カペレの画家としての力量を感じずにはいられません。

ヤン・ファン・デ・カペレとは

ヤン・ファン・デ・カペレは現存する作品が少ない画家です。
わずか20点にも満たないようです。

ヤン・ファン・デ・カペレは1626年(寛永3年)にアムステルダムで誕生しています。

父親は染色工場を経営していました。
父親亡き後、ヤン・ファン・デ・カペレが工場を引き継いだようで、画家だけでなく染色業者でもありました。
奥様の方からも家などを相続していたようです。

いわゆるセレブリティな感じだったのでしょうか。
高級住宅街に住み、莫大な富を残したそうです。

その豊かな財力で、個人の絵画コレクション持っていました。
絵画だけで約200点、素描が約6,000点というのですから、さぞかし充実したコレクションだったことでしょう。

アイルランド国立美術館名品展の図録によると、ヤン・ファン・デ・カペレの絵画は独学だったらしいとのこと。
すばらしい作品を数多く観て、学び取ったのでしょうか。
そうだとするならば、相当の努力家か天才的能力の持ち主ですね。

ヤン・ファン・デ・カペレはその生涯を生まれ故郷のアムステルダムで過ごし、1679年(延宝7年)に亡くなりました。

わたなびはじめの感想・ヤン・ファン・デ・カペレ作「冬の河川風景」

雪の函館 八幡坂雪の函館 八幡坂

ヤン・ファン・デ・カペレの「冬の河川風景」について書いてきましたが、あたなは冬の景色を描いた作品をどのように思われますか?

共感できる方もいれば、寒々しいのはちょっと…と敬遠したくなる方もいるかもしれませんね。
私は前者の「共感できる」立場です。

上京後、故郷が恋しくて函館の絵の購入もしました。
その中の1作品は、雪の降る函館のリトグラフでした。

私の妻は寒いと頭痛を起こしてしまうので、北海道での生活は無理そうです。

そんなことも考えて、いつかは湘南エリア(江の島が見える場所)に小さい部屋でも借りて住めたらと考えています。
湘南? 江ノ島? と、少し唐突感がありますが、どことなく似ているんですよ。
函館に。

そこで次の写真を家族に見せて、どこを撮影した写真か質問してみました。

雪の函館 大森浜雪の函館 大森浜

家族は、どこか違和感を感じながらも「江ノ島?」と回答しました。
実はこの写真、大森海岸・湯の川側から見た函館山の景色なのです。

私の頭の中には次のような図式ができあがっています。

  • 函館山 ≒ 江ノ島
  • 函館駅前~末広町方面 ≒ 弁天橋
  • 大森浜 ≒ 七里ヶ浜

江ノ島シーキャンドルからの眺めに、函館山から見た景色を重ねてしまうのです。
故郷(函館)と同じくらい湘南エリアが大好きです。

話が冬の風景画からだいぶ逸れてしまいました。

逸れたついでにもうひとつ。
GLAYの「Winter,again」を聴くと、函館の景色が脳裏に蘇ってきますね。

ヤン・ファン・デ・カペレが描いた「冬の河川風景」は、想像ですが画家自身とのゆかりはそれほど深くなかったと思われます。
なぜなら、ヤン・ファン・デ・カペレは高級住宅街に住んでいたのですから。

この作品のために足を運んだのでしょう。

ゆかりの有無に関わらず、すばらしい作品を遺してくれたことに感謝したい気持ちになります。

最後に、いつものわたなび流の感想で終わりたいと思います。
ヤン・ファン・デ・カペレの描いた「冬の河川風景」は、「秋から冬にかけて、自宅で鑑賞したい(欲しいと思える)作品」です。

たまには、「あなたにとっての大切な景色」を思い出してみるのもいいものですよ。

まとめ

ヤン・ファン・デ・カペレ「冬の河川風景」
  1. ヤン・ファン・デ・カペレは独学で絵を学んだとみられている。
  2. 「冬の河川風景」で描かれているのはコルフというゲームの光景。
  3. ヤン・ファン・デ・カペレは財力豊富で、絵画の収集を行なっていた。

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