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エルミタージュ美術館育ての親、エカテリーナ2世|江戸東京博物館 「エルミタージュ美術館展」より

211_エルミタージュ美術館展_フョ―ドル・スチェパノヴィチ・ロコトフ 「晩年のエカテリーナ2世」【アイキャッチ】
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世界最大級の美術館のひとつエルミタージュ美術館。サンクトペテルブルクにあるロシアの国立美術館です。

その育ての親といわれるエカテリーナ2世とは、どのような人物だったのでしょうか?

エカテリーナ2世の肖像画とともに、その人物像に迫ってみます。

この記事は、2004年に江戸東京博物館で開催された「サンクトペテルブルク古都物語 エルミタージュ美術館展 エカテリーナ2世の華麗なる遺産」(以下、エルミタージュ美術館展で統一)の図録を参考にしています。

エルミタージュ美術館の育ての親・エカテリーナ2世について

エルミタージュ美術館

エルミタージュ美術館のコレクションを充実させたのはエカテリーナ2世によるところが大きいと言われています。その意味でエカテリーナ2世は「エルミタージュ美術館の育ての親」と呼ばれるにふさわしいのです。

エカテリーナ2世はドイツ(プロイセン)出身で、ゾフィー・アウグスタ・フレデリカという名のプリンセスでした。1745年(延享2年)、後にロシア皇帝となるピョートル3世に嫁いだのは16歳のときでした。

いわゆるクーデターである「宮廷革命」を経て女帝となったのは、エカテリーナ2世が33歳でのこと。エカテリーナ2世の統治期間は1762年(宝暦12年)から1796年(寛政8年)の約34年間です。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
フランスではルイ15世からルイ16世の時代に代わり、ロココ文化から新古典主義へ移りつつあったんだよ。

サンクトペテルブルクでは、バロック、ロココの建築物の存在感が強く残っていました。

エルミタージュ美術館(冬の宮殿)は、バロック建築の代表的存在でした。もともとは皇帝の宮殿だったものを、エカテリーナ2世の美術コレクションの収蔵及び展示に用いるようになったのです。しかし1837年(天保8年)の火災により大半が焼失し、その後、再建されています。

現在のエルミタージュ美術館はひとつの建物ではなく、時代や様式の異なる複数の建造物の総称です。

ヨーロッパの文化を基準にした場合、エカテリーナ2世の時代ロシアは後進国でした。しかしエカテリーナ2世は、貴重な美術品を収集していきます。その数は、西洋の古典絵画だけでも4,000点にも上るようです。

収集した個人コレクションなどのいくつかをご紹介します。

  • 画商ゴツコウスキーから購入したオランダ・フランドル絵画約200点
  • フランスのクロザ・コレクション約400点
  • イギリスのウォルポール・コレクション約200点
  • ドイツのブリュール・コレクション

エカテリーナ2世のコレクションには、次のような有名作品も存在しています。

  • フランス・ハルス作「手袋を持つ若い男の肖像」
  • ラファエロ作「聖母子と髭のないヨセフ」
  • レンブラント作「放蕩息子の帰宅」
  • ルーベンス作「パリサイ人シモンの饗宴」
  • クロード・ロラン作「港の朝(または夕べ)」

エカテリーナ2世は、エルミタージュ美術館の収蔵作品を充実させ、文化的価値を高めたと言えるでしょう。

フョ―ドル・スチェパノヴィチ・ロコトフ作「晩年のエカテリーナ2世」とは

エルミタージュ美術館展_フョ―ドル・スチェパノヴィチ・ロコトフ 「晩年のエカテリーナ2世」

■フョ―ドル・スチェパノヴィチ・ロコトフ作「晩年のエカテリーナ2世」

  • 制作年:1770年代末~1780年代
  • サイズ:162.0 × 122.0cm
  • 油彩、カンヴァス

この作品の元になっているのは、スウェーデンの画家であるA.ロスリンが描いたエカテリーナ2世の全身像です。A.ロスリンの作品は、1776年(安永5年)から1777年(安永6年)に描かれたようです。

今回ご紹介しているフョ―ドル・スチェパノヴィチ・ロコトフ作「晩年のエカテリーナ2世」は、A.ロスリンの絵の模写ということになります。

タイトルには「晩年」と入っていますが、肌が白くて若々しい印象を受けます。右手に王笏を持ち、その先にあるのはピョートル1世の胸像です。

さらには、ドレスが豪華ですよね。この青みがかった色合いからは気品を感じます。ドレスの襞(ひだ)や艶(つや)が見事に表現されています。

それだけではありません。画面右上から垂れている束ねられたカーテンのような赤い生地の質感。その描写は実に見事です。

エルミタージュ美術館展の図録の解説には、「晩年のエカテリーナ2世」の描かれた目的と思われることが記されています。

ピョートル1世像の上に位置する大理石の板には「初志は貫徹されつつある」と刻まれており、この銘において、エカテリーナ2世がピョートル1世の改革の継承者であることを示すという作品の基本構成が表現されている。

出典:『サンクトペテルブルク古都物語 エルミタージュ美術館展-エカテリーナ2世の華麗なる遺産-』図録
ユーリー・グドィメンコ著 エルミタージュ美術館展事務局 31ページ

肖像画を通じて、人々に自分の立場や権威を伝えていたのでしょう。

絵画には作品を観て楽しむという要素だけでなく、視覚を通じた宣伝効果もあるということを再認識させられました。

わたなびはじめの感想:フョ―ドル・スチェパノヴィチ・ロコトフ作「晩年のエカテリーナ2世」について

エルミタージュ美術館展・図録エルミタージュ美術館展・図録

まずはじめに、「晩年のエカテリーナ2世」に対する私の感想からお伝えします。
私の家に飾りたいと思える作品ではありません。欲しいとも思えません。

この感想は「晩年のエカテリーナ2世」に対する批判ではありません。どう考えても、部屋に馴染まないからです。

描かれている人物、気品ある風貌の肖像画であることを考えると、やはり美術館や宮殿のような場所に飾られるべき作品です。

もしも一般的な日本の家庭にこの作品が飾られていたとしたら、ビックリ仰天してしまいます。ロシアの方が観ても首を傾げることでしょう。

話は変わりますが、私は自分の肖像画を描いて欲しいという思いがあります。子供が幼かった頃に家族の肖像を描いて欲しいと考えたのです。写真ではなく、絵画(肖像画)です。

その願いはまだ実現できていません。しかし、私には描いて欲しい画家の方がいます。

個人的にもお世話になったことのある金井訓志(かないさとし)さんです。奥様と共にユーモアのあるとてもすばらしい方で、作品が大好きなのです。

いつの日か、お願いできる日が来ることを願っています。

独立展サイト「金井訓志さんページ」のリンクを紹介しますね。
⇒ 独立展 金井訓志 

まとめ

晩年のエカテリーナ2世
  1. おおらかさと権威性を感じる肖像画。
  2. エカテリーナ2世の肖像画にはピョートル1世の遺志を継ぐというアピールが含まれている。
  3. エカテリーナ2世は膨大な美術品を収集した。

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