美術作品

イメージと違う?ルーベンス周辺の画家作「獅子の洞窟にいるダニエル」|東京都美術館「ウィーン美術史美術館所蔵 栄光のオランダ・フランドル絵画展」より

栄光のオランダ・フランドル絵画展 ルーベンス周辺の画家「獅子の洞窟にいるダニエル」

私の想い描いている旧約聖書のダニエルとはイメージが違う?
そんな印象を受けたのが、ルーベンス周辺の画家が描いた「獅子の洞窟にいるダニエル」です。

2004年(平成16年)に東京都美術館で開催された「ウィーン美術史美術館所蔵 栄光のオランダ・フランドル絵画展」の図録をもとに想いを巡らせてみました。

  • 制作年:1663年
  • サイズ:48.0 × 63.0cm
  • 油彩、木版

ルーベンス周辺の画家作「獅子の洞窟にいるダニエル」

栄光のオランダ・フランドル絵画展 ルーベンス周辺の画家「獅子の洞窟にいるダニエル」

旧約聖書に登場する預言者ダニエル。
ダニエル書 第6章に基づくこの作品には、個人的なダニエル像とは違う姿が描かれています。

そのことについてお伝えする前に、この作品の制作者についてご紹介しましょう。

ルーベンス周辺の画家とは?

ぺーテル・パウル・ルーベンスは、フランドル絵画・バロック期の巨匠です。

ルーベンスの代表作といえば、アントウェルペン(アントワープ)のノートルダム大聖堂【聖母(マリア)大聖堂】にある次の絵画でしょう。

  • キリスト昇架【1610年】
  • キリスト降架【1614年】
わたなびはじめ
わたなびはじめ
でも…ルーベンス周辺の画家って?

今回ご紹介している「獅子の洞窟にいるダニエル」は、「ルーベンス周辺の画家」によって描かれています。

ここで理解しておくべきことは、ルーベンスは自身の工房を持っていました。
そこには弟子たちがいたことでしょう。

「獅子の洞窟にいるダニエル」はルーベンスによって全て描かれたというよりは、ルーベンスや彼に親しい画家たちによって描かれていると考えられているのです。

それが「ルーベンス周辺の画家」とされる理由です。

ダニエルとは

「獅子の洞窟にいるダニエル」の場面についても触れておきましょう。

ダニエルは紀元前600年頃、新バビロニア王国のネブカデネザル王によりユダ王国(エルサレム)からバビロンに捕囚として連れていかれた人物のひとりです。

ダニエルの両親については不明ですが、貴族の出身であると考えられています。

バビロンに移ったダニエルは「ベルテシャザル」と呼ばれ、神の預言者としてネブカデネザル王のみた夢を解き明かし王の信頼を得ました。
ダニエルは、ネブカデネザル王、ベルシャザル王、ダリヨス王(ペルシャ)に仕えています。

さらにダニエルはダリヨス王の治世に、王の3人の代理人のひとりとして地方監督の総監にも選ばれます。

しかしダニエルのことを快く思わない人々がいたのも事実です。
それらの反対者の陰謀により、ダリヨス王は「30日の間、ダリヨス王以外を礼拝する者は獅子の穴に投げ入れられる」という命令を発します。

ダニエルはイスラエルの神に仕えることを止めず、その礼拝している姿を目撃されて、獅子の穴に投げ込まれることになりました。
王はダニエルを救おうとしますが、自身の発した命令を実行しないわけにはいきませんでした。

「獅子の洞窟にいるダニエル」はそのようにして獅子の穴に入れられたダニエルを描いた作品です。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
旧約聖書には獅子の穴の入り口を石でふさいだと記されていますが、「獅子の洞窟にいるダニエル」では空が見える状態ですね。

ダリヨス王はダニエルを心配し、夜も眠れなかったようです。
翌朝、獅子の穴に駆け寄ったダリヨス王は、悲し気な声でダニエルに呼びかけました。

その際のダニエルの言葉を旧約聖書からご紹介しましょう。

ダニエルは王に言った、「王よ、どうか、とこしえに生きながらえられますように。わたしの神はその使をおくって、ししの口を閉ざされたので、ししはわたしを害しませんでした。これはわたしに罪のないことが、神の前に認められたからです。王よ、わたしはあなたの前にも、何も悪いことをしなかったのです」。

出典:『旧約聖書 ダニエル書 第6章21~22節』
1232~1233ページ 日本聖書協会

神によりライオンから守られたダニエルの無事を、ダリヨス王は喜びました。

そしてダニエルを陥れようとした人々を獅子の穴に投げ込ませたのでした。

わたなびはじめの感想・ルーベンス周辺の画家「獅子の洞窟にいるダニエル」

アントウェルペン(アントワープ)市庁舎アントウェルペン(アントワープ)市庁舎

私が旧約聖書のダニエル書を読んでイメージしていたダニエル像は、ルーベンス周辺の画家による「獅子の洞窟にいるダニエル」に描かれているよりも謙虚で聡明さが漂うものです。

若いころから、自身の信じる神に常に忠実であろうとしたダニエルです。

そのように考えると、「獅子の洞窟にいるダニエル」に描かれているダニエルの姿はちょっと横柄に見えてしまいます。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
私が「獅子の洞窟にいるダニエル」から感じる違和感は、ダニエルのポーズが原因ですね。

それとは別に、ライオンたちの迫力ある姿にはすばらしさを感じます。
獰猛(どうもう)な表情をしたライオン(ダニエルの右下)はすさまじいですよね。

ちなみに、この作品に似た構図で「ライオンの穴の中のダニエル」という作品があります。
ワシントン・ナショナル・ギャラリーに収蔵されているその作品は、ルーベンスの描いたものです。
作品も大きいですよ!

最後に、いつものわたなび流の感想で終わります。
ルーベンス周辺の画家の描いた「獅子の洞窟にいるダニエル」は、「美術館で鑑賞したい作品」です。

残念ながら、ダニエルの印象に対する違和感を拭い去ることができませんでした。

まとめ

ルーベンス周辺の画家「獅子の洞窟にいるダニエル」
  1. ルーベンスや親しいが画家によって描かれたと思われる作品。
  2. ダニエルは旧約聖書に登場する神の預言者。
  3. 獅子の穴に入れられるも神によって守られた。

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