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レンブラント・ファン・レイン作「病人たちを癒すキリスト(100グルデン版画)」|国立西洋美術館 「レンブラントとレンブラント派-聖書、神話、物語」展より

レンブラントとレンブラント派_レンブラント・ファン・レイン「病人たちを癒すキリスト(100グルデン版画)」【アイキャッチ】
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2003年(平成15年)に国立西洋美術館 で開催された「レンブラントとレンブラント派-聖書、神話、物語」展では、レンブラントの2つの作品に強く感動したのを覚えています。

油彩画ではありませんでしたが、私の心を鷲掴みにするような作品に出会ったのです。

その作品のひとつは、レンブラント・ファン・レイン作「病人たちを癒すキリスト(100グルデン版画)」でした。

もうひとつ衝撃を受けた作品「三本の十字架」の話は別の機会に譲るとして、今回は「病人たちを癒すキリスト(100グルデン版画)」について振り返ってみます。

レンブラント・ファン・レイン作「病人たちを癒すキリスト(100グルデン版画)」とは

レンブラントとレンブラント派_15_レンブラント・ファン・レイン「病人たちを癒すキリスト(100グルデン版画)」

■レンブラント・ファン・レイン作「病人たちを癒すキリスト(100グルデン版画)」

  • 制作年:1648年頃
  • サイズ:27.8 × 38.8cm
  • エッチング、ドライポイント、ビュラン

新約聖書を読まれた方ならこの作品を目にした瞬間に、題材がイエス・キリストであることに気付かれることでしょう。

どの場面であるかは別として、私には圧倒的な存在感を持つ版画として心に刻まれました。光と影(明暗)の表現だけでなく、作品全体が空間を占める荘厳さと美しさに魅了されたのです。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
自由な色彩による絵画ではなく、版画でこの表現力を発揮するとは、やっぱりレンブラントはすごいぞ!
色彩の多様さといった基準は吹っ飛んじゃって、「これ以外にない」と思わせられる作品だな。

「病人たちを癒すキリスト(100グルデン版画)」は、聖書に記載されているひとつの場面を版画にしたものではありません。複数の出来事がひとつの画面に盛り込まれているのです。

その題材となっているのは、新約聖書のマタイによる福音書 第19章です。

マタイによる福音書 第19章には、おおよそ次のような内容が記されています。

  • 【 1~ 2節】
    イエス・キリストが、ついてきた大勢の群衆を癒した。
  • 【 3~12節】
    パリサイ人がイエス・キリストを試みた。
  • 【13~15節】
    人々がイエス・キリストに手をおいて祈っていただくために幼子らを連れて来た。
  • 【16~22節】
    多くの資産を持つ青年に永遠の生命を得るための方法を尋ねられ、イエス・キリストが答えた。
  • 【23~30節】
    天国(神の国)に入ることについて弟子たちに教えられた。

それでは「病人たちを癒すキリスト(100グルデン版画)」と見比べてみましょう。

画面中央に立っているのがイエス・キリストです。

その左隣に描かれているのはペテロでしょう。マタイによる福音書 第19章27節に、ペテロがイエス・キリストに答える場面があるからです。

ペテロの左下で口に手を当てて座っているのは、資産家の若者だと推察されます。

画面左上の人々はイエス・キリストを試みようとしたパリサイ人たち。その下には、腕に赤ちゃんを抱いた女性(鑑賞者に背を向けている)や別の赤ちゃんを抱く女性の衣服を引っ張る幼い子供が描かれています。犬もいますね。

イエス・キリストの右側の暗い部分に描かれているのは癒された群衆です。イエス・キリストの右下には、横たえられている人や手を合わせている人たちもいます。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
レンブラントは、イエス・キリストを中心に展開された別々の出来事をこの版画に凝縮したんだね。
スゴイよ!

この作品のタイトルについての疑問

上述したように複数の出来事を描きながら、この作品はなぜ「病人たちを癒すキリスト」というタイトルで呼ばれているのでしょうか?

私の勝手な想像でしかありませんが、マタイによる福音書 第19章の一番最初の出来事が人々を癒された話だからかもしれません。または、癒しに関する話題で、作品の右半分のスペースをゴッソリ使っているからかもしれません。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
ちなみにこの作品には、サインや年記などは無いようです。

もうひとつの疑問は「100グルデン版画」とは何かということ。

これについては、「レンブラントとレンブラント派-聖書、神話、物語」の図録から引用させていただきます。

「100グルデン版画」という通称は、この版画の価値が非常に高く、「100グルデン」で取引されていたところから名付けられたものであるが、かつて、この通称は18世紀に生まれたものと考えられていた。

出典:『レンブラントとレンブラント派-聖書、神話、物語 図録』
幸福輝著 113ページ

「100グルデン版画」とは、「病人たちを癒すキリスト」が高値で取引されていた版画であり、その通称だということになりますね。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
100グルデンの価値はわからないけれど、本当に素晴らしい版画だと思う。
マタイによる福音書 第19章を知っている人なら、より感慨深い価値を見出すかもしれないね。

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レインとは

レンブラントとは

「光と影の画家」と呼ばれ、オランダ・バロック絵画を代表する画家のひとりレンブラント・ファン・レインの生涯については、『すぐわかる!レンブラント・ファン・レインとは|「光と影の画家」の生涯について』をご参照ください。

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わたなびはじめの感想:レンブラント・ファン・レイン作「病人たちを癒すキリスト(100グルデン版画)」について

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最初に結論をお伝えします。

レンブラント・ファン・レイン作「病人たちを癒すキリスト(100グルデン版画)」は、「家に飾りたい(できるなら、心から欲しい)と思える作品」です。

私が可能であれば手に入れたいと本気で思ったのは、「病人たちを癒すキリスト(100グルデン版画)」ともう1作品だけです。(今後、増える可能性はありますよ。)

自分でも意外なのですが、油彩が好きの私が心から欲しいと思えた作品が油彩画でなかったのが不思議です。それだけ魅力的な版画だということです。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
マタイによる福音書 第19章 26節は、個人的に大好きな言葉です。

まとめ

レンブラント「病人たちを癒すキリスト」
  1. 「病人たちを癒すキリスト(100グルデン版画)」は、レンブラントの版画の代表作と言われる作品。
  2. タイトルに含まれている「100グルデン版画」とは、この作品の価値を表していた通称。
  3. 新約聖書 マタイによる福音書 第19章の逸話が凝縮された見事な作品。

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