2020年、美術検定2級合格のための学習経過報告です。
ようやくルネサンス美術まで到達しました。
今回はイタリアにおける初期ルネサンスの美術について学んだことを中心にシェアします。
この記事でご紹介している画像は、私のセレクト・ミスなどにより本物の画像ではない(レプリカを含む)可能性がありますのでご了承ください。
あらかじめご了承ください。
イタリア・ルネサンスの美術・概要

「ルネサンス」とはフランス語で、「再生」や「復活」を意味する言葉です。
では、何を「再生」しようとしたのでしょうか?
それはギリシアやローマにおける古典古代の文化の「再生」や、中世では制限されていた人間性を「回復」しようしたのです。そのためルネサンスは、創造力にあふれ、人間性を尊重した文化の復興運動でもあるのです。
ルネサンスの影響はイタリア国内にとどまらず、その後、ヨーロッパ全体に広がっていきます。
ルネサンスの始まりを論じるには諸説ありますが、ここではルネサンス発祥の地フィレンツェに重点を置いて考えてみましょう。
ルネサンスは、1400年代初頭のイタリア・フィレンツェで始まりました。この当時のフィレンツェは、イタリアを支配しようとするミラノ大公の勢力の脅威にさらされていました。
平和と秩序をもたらそうとする新カエサル的な支持を得たミラノ大公に対して、フィレンツェの人々は暴虐に対抗し自由を擁護するという立場を取りました。
そのような状況で、視覚芸術はフィレンツェの精神復興になくてはならないものと位置づけられました。
それまで美術は論理的な基礎を持たず、技術的側面の強い手仕事の結果とみなされていました。それが自由学芸(哲学、音楽理論を含む数学、弁証法、文法、修辞学)に加えられるようになったのです。
この動きは芸術家の地位向上にもつながりました。
ルネサンスの分類
ルネサンスは次のように分類することができます。
- イタリアにおける初期ルネサンス美術
- イタリアにおける盛期ルネサンス美術
- ヨーロッパ北方におけるルネサンス美術
- マニエリスムの美術
今回は、「イタリアにおける初期ルネサンス美術」にフォーカスしています。
初期ルネサンス美術の作品紹介

イタリアにおける初期ルネサンスを代表する芸術家たちは、建築や彫刻、絵画などの分野に存在していました。
まずは各分野における代表的な芸術家と代表作を紹介します。
■建築
●フィリッポ・ブルネッレスキ【1377年~1446年】
・サンタ・マリア・デル・フィオーレ(フィレンツェ)大聖堂円蓋
●レオン・バッティスタ・アルベルティ【1404年~1472年】
・サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂
■彫刻
●ドナテッロ【1386年~1466年】
・ダヴィデ
●ロレンツォ・ギベルティ【1378年頃~1455年】
・ヤコブとエサウの物語「天国の門」|サン・ジョヴァンニ洗礼堂(フィレンツェ)
■絵画
●マザッチョ【1401年~1428年】
・貢の銭|サンタ・マリア・デル・カルミネ大聖堂ブランカッチ礼拝堂(フィレンツェ)
・聖三位一体|サンタ・マリア・ノヴェッラ教会(フィレンツェ)
●ジョット・ディ・ボンドーネ【1267年頃~1337年】
・ユダの接吻|スクロヴェーニ礼拝堂(パドヴァ)
●フラ・アンジェリコ【1387年~1455年頃】
・受胎告知|サン・マルコ修道院美術館(フィレンツェ)
●ピエロ・デッラ・フランチェスカ【1415年頃~1492年】
・聖十字架物語|サン・フランチェスコ聖堂(アレッツォ)
●アンドレア・デル・ヴェロッキオ【1435年~1488年】
・イルカを抱くプット|パラッツォ・ヴェッキオ(フィレンツェ)
・キリストの洗礼|ウフィツィ美術館(フィレンツェ)
●サンドロ・ボッティチェリ【1445年頃~1510年】
・ヴィーナスの誕生|ウフィツィ美術館(フィレンツェ)
●ジョヴァンニ・ベッリーニ【1430年頃~1516年】(ヴェネツィア)
・ヴェネツィア総督ロレダーノ|ナショナル ギャラリー(ロンドン)
ここからは、画像とともに初期ルネサンス美術を観ていきましょう。
初期ルネサンス美術・サンタ・マリア・デル・フィオーレ(フィレンツェ)大聖堂円蓋

フィリッポ・ブルネッレスキは彫刻家であり建築家でもあった人物です。
ブルネッレスキはローマの建築物の調査を行なっています。
ブルネッレスキの功績のひとつは科学的遠近法(線遠近法)を発見したことです。
ブルネッレスキはフィレンツェ大聖堂円蓋の設計を巡り、ギルベルティと競っています。
当時を代表する芸術家がしのぎを削ったわけですね。
初期ルネサンス美術・サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂ファサード

レオン・バッティスタ・アルベルティが建築家として活躍するのはブルネッレスキが亡くなった後のこと。
アルベルティは古典文学や哲学なども身に付けていました。それだけでなく、絵画や彫刻にも秀でた多彩な人物でした。
ブルネッレスキやドナテッロ、マザッチョなどとも交流していたようです。
アルベルティは論理的著作物を3冊書いていて、そのうちの「絵画論」はブルネッレスキに献呈しています。
初期ルネサンス美術・ヴェロッキオ「キリストの洗礼」と「イルカを抱くプット」

アンドレア・デル・ヴェロッキオも多彩な人物で、画家だけでなく彫刻家、彫塑家、鋳造家、金細工師、建築家など幅広く活躍していました。
ヴェロッキオを有名にしているのは彼の作品もさることながら、あのレオナルド・ダ・ヴィンチの絵画の師匠だったということでしょう。
「キリストの洗礼」においても、レオナルド・ダ・ヴィンチが画面左の天使を描いています。


「イルカを抱くプット」は、フィレンツェ近郊のメディチ家の噴水用に作られました。イルカの口から水が噴射される仕様です。
プットとは翼を持った裸の子供のことで、キューピットとも関連があるようです。ちなみに複数形は「プッティ」だそうです。
初期ルネサンス美術・ボッティチェリ「ヴィーナスの誕生」

サンドロ・ボッティチェリは、実質的にフィレンツェを支配していたメディチ家当主ロレンツォ・イル・マニフィーコをはじめとする貴族や知識人に人気の画家だったようです。
ボッティチェリの代表作といえば、「ヴィーナスの誕生」と「春(プリマヴェーラ)」です。
ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」は、フィレンツェにおける初期ルネサンスの最盛期を物語っている作品です。
まとめ
- イタリア・ルネサンスはフィレンツェで始まった。
- イタリア・初期ルネサンスは、レオナルド・ダ・ヴィンチの師匠の時代。
- ボッティチェリ「ヴィーナスの誕生」など、私たちに馴染みのある作品が登場。
■参考文献
- 「改訂版 西洋・日本美術史の基本」監修 横山勝彦、半田滋男/編集 美術検定実行委員会/発行 美術出版社
- 「西洋美術の歴史」著者 H・W・ジャンソン、アンソニー・F・ジャンソン/訳者 木村重信、藤田治彦/発行 創元社