クラシック音楽では古典派に分類される、偉大な作曲家ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン。
しかしベートーヴェンは、その生涯で歌劇(オペラ)は1作しか完成させていません。それが歌劇「フィデリオ」です。
これは少し意外な気がしますよね。
今回は、歌劇「フィデリオ」自体ではなく、歌劇「フィデリオ」序曲とレオノーレ序曲 第3番をレコードで聴いた感想をご紹介します。
■カラヤン/ベートーヴェン「交響曲第8番」,コリオラン序曲,歌劇「フィデリオ」序曲,レオノーレ序曲第3番
- 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
- 演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- グラモフォンレコード
- 発売元:ポリドール株式会社【28MG 4558[415 507-1]】
レオノーレ序曲第3番と歌劇「フィデリオ」序曲について(主に作曲の経緯)

まずは、歌劇「フィデリオ」について簡単にお伝えします。
ベートーヴェンの唯一の歌劇であることは冒頭でお伝えしましたね。
歌劇「フィデリオ」の原作の作者は、ジャン・ニコラス・ブイイです。台本(ドイツ語)はヨーゼフ・ゾンライトナーとゲオルク・フリードリヒ・トライチュケが担当しました。
歌劇「フィデリオ」の簡単なあらすじは、女性主人公の「レオノーレ」が投獄されている夫を救出するといった内容です。夫の収監されている監獄に潜入する際に、「フィデリオ」と名乗り男装したのです。
ブイイの原作に基づいた歌劇はベートーヴェンに先んじて2作あり、それぞれ「レオノール」と「レオノーラ」というタイトルが付けられていました。
ベートーヴェンに作曲の依頼が来たのはその後のこと。ブイイの原作はドイツ語に翻訳されていました。
作品を完成させたベートーヴェンは、タイトルを「レオノーレ」としたかったようですが、すでに存在している2作品との兼ね合いで「フィデリオ」に決定します。聴衆の混乱を避けるためですね。
「フィデリオ」、「レオノーレ」はいずれも同一の女性主人公のことですから、後発のベートーヴェンの作品が「フィデリオ」に決定されたことは英断だったと思います。
しかし、歌劇「フィデリオ」の初演は失敗に終わります。ドイツ語で書かれた作品なのに観客のほとんどがフランス人だったため、理解できなかったようです。
ベートーヴェンは、歌劇「フィデリオ」を見捨てずに改作します。それに伴い、序曲も変更されて「レオノーレ序曲第3番」になります。結果は無事に成功を収めます。
それから数年、楽譜の出版はあったものの、歌劇「フィデリオ」の上演はされていなかったようです。しかし、ウィーンでのベートーヴェン作品の人気上昇により、歌劇「フィデリオ」の上演依頼が届きます。
ベートーヴェンは、歌劇「フィデリオ」の台本と音楽の改定を条件に承諾。
歌劇「フィデリオ」の始まりは、マルツェリーネ(登場人物)が歌うハ短調のアリアからイ短調の二重唱に変更されます。そのため、序曲も新しく書き換えることに。
初演には間に合わなかったものの、それがホ短調の歌劇「フィデリオ」序曲でした。
これがレオノーレ序曲第3番と歌劇「フィデリオ」序曲の作曲の経緯となります。
レオノーレ序曲第3番と歌劇「フィデリオ」序曲。この2つの序曲の関係性には、少々混乱してしまいます。
最終的には「フィデリオ」というタイトルを受け入れたものの、ベートーヴェンの「レオノーレ」という作品名に対する強いこだわりが2つの序曲の複雑な経緯に関係していることは否めません。
作曲家の作品に対する「思い入れの強さ」として受け止めるのがいいようですね。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンとは

ベートーヴェンについては『すぐわかる!ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンとは|その生涯と作品たち』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:歌劇「フィデリオ」序曲&レオノーレ序曲第3番について

それでは、レオノーレ序曲第3番と歌劇「フィデリオ」序曲をレコードで聴いた感想をご紹介しますね。
指揮はヘルベルト・フォン・カラヤン、演奏はベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。1985年(昭和60年)にデジタル録音されています。
【 】は今回聴いたレコードの演奏時間です。
■レオノーレ序曲第3番【13分53秒】
「レオノーレ序曲第3番」はベートーヴェンの作曲した序曲の中で、一番演奏時間が長い作品です。約14分程でしょうか。
作曲されたのは1806年(文化3年)です。
音量は大きくありませんが、少し暗い感じで始まります。(曲全体の印象は決して暗いものではありません。)
徐々に盛り上がっていき、勇壮な旋律で気持ちが高揚しそうです。主題が雰囲気を変えて繰り返され、劇的で壮大さを感じます。
ベートーヴェンの作曲した序曲の中で、「一番重要な作品」と表現されるのもうなずけます。
最後は駆け足のような軽快な旋律に突き動かされるようで、聴いていて飽きのこない序曲です。
歌劇「フィデリオ」序曲に比べて、よりドラマチックな作品といえるでしょう。
序曲好きの私にとっては、魅力的な作品です。
■歌劇「フィデリオ」序曲【6分51秒】
歌劇「フィデリオ」序曲が作曲されたのは、1814年(文化11年)です。演奏時間は「レオノーレ序曲第3番」の半分ほどです。
レオノーレ序曲第3番とは少々趣きが違い、華々しい明るい印象を受けます。軽快で軽やかなので、歌劇のストーリーを知らなくても聴き心地の良い作品だと思います。
「これから何が始まるんだろう?」というような、ワクワク感を楽しめますよ!
まとめ
- フィデリオとレオノーレは歌劇中の同一の女性主人公。
- レオノーレ序曲 第3番はベートーヴェン序曲の中で最長&重要な1曲。
- 歌劇「フィデリオ」序曲は短いが軽快な作品。
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