2020年(令和2年)8月12日にご紹介したドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」に登場した牧神が、モーリス・ラヴェル作曲の「ダフニスとクロエ」にも登場します!
「ダフニスとクロエ」第2組曲の感想だけでなく、バレエ「ダフニスとクロエ」のあらすじもご紹介します。
今回は第2組曲をカラヤン指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で楽しみました。
■カラヤン / ドビュッシー「海」:ラヴェル「ダフニスとクロエ」第2組曲他
- 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
- 演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- ドイツ・グラモフォン カラヤン・ゴールドシリーズ
- 発売:ポリドール株式会社【POCG-9368】
モーリス・ラヴェル作曲「ダフニスとクロエ」第2組曲とは

バレエ「ダフニスとクロエ」は、ミハイル・フォーキン(ロシアのバレエダンサー&振付師)とレオン・バクスト(ロシアの画家)、そしてモーリス・ラヴェル(フランスの作曲家)が中心となって作り上げた作品です。
古代ローマの小説家ロンゴスの物語「ダフニスとクロエ」が原作になっています。
ラヴェルがセルゲイ・ディアギレフ(ロシアの芸術プロデューサー)の依頼を受けて「ダフニスとクロエ」を作曲したのは、1909年(明治42年)~1912年(明治45年・大正元年)にかけてのことでした。
バレエ「ダフニスとクロエ」の初演は、1912年(明治45年・大正元年)6月にセルゲイ・ディアギレフのバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)によってパリのシャトレー劇場にて行なわれました。指揮者を務めたのはピエール・モルトゥーです。
「ダフニスとクロエ」は、後に「バレエ全曲(合唱付き)」「第1組曲」「第2組曲」といった管弦楽曲としてもとして演奏されています。
「ダフニスとクロエ」のあらすじ
ここでは「ダフニスとクロエ」のあらすじをご紹介します。
主な登場人物は次の通りです。
- ダフニス : 山羊飼いの少年。
- クロエ : ダフニスに恋する羊飼いの少女。
- ドルコン : クロエに想いを寄せる若こ牛飼い。
- リュセイオン : ダフニスを誘惑する人妻。
- ブリュアクシス : 海賊のボス。
- パン神(牧神) : 羊飼いや羊の群れを監視する半獣神。
- ラモン : 老人の山羊飼い。
ニンフの神殿が建つ森の近くにある牧草地。ある春の日の昼過ぎ、若い牧人たちがニンフの祭壇への供物を持ち寄り、踊りを楽しんでしました。ダフニスとクロエもその中にいました。
クロエに好意を持つドルコンは、ダフニスの存在が気に入りません。クロエとのキスを賭けて、ドルコンとダフニスは踊りで対決します。
対決の勝者となったダフニス。若者たちが去り、一人になったダフニスにリュセイオンが誘惑しようと言い寄ってきます。
ところが突然、海賊の襲撃によりクロエは誘拐されてしまいます。
あまりのショックに倒れてしまうダフニス。
そこに3人のニンフ(精霊)が登場し、ダフニスを蘇生させます。ニンフらの勧めで、ダフニスはクロエの無事をパン神に祈るのでした。
その頃、ブリュアクシス率いる海賊の夜営地では宴会が行なわれていました。海賊のボス・ブリュアクシスはクロエに舞いを強要します。
踊りながら逃走のチャンスを狙うクロエでしたが、ブリュアクシスに手籠めにされそうになってしまいます。
そのとき、海賊たちの前にパン神の大きな影が出現したのです。驚き、怯えた海賊たちは退散していきました。
ニンフの神殿近くの牧草地で再会を果たすダフニスとクロエ。喜ぶ二人のそばに老年のラモンが登場します。
ラモンはパン神がクロエを救出した理由を二人に告げます。パン神はかつて愛したシリンクスの想い出をクロエに重ねて救出に至ったのでした。
ダフニスとクロエは、身振り(無言劇)でパン神とシリンクスの物語を表現することで感謝の気持ちを伝えます。そこに牧人らも集まり、ダフニスとクロエを祝福しつつ全員で踊るのでした。
「ダフニスとクロエ」では主人公を助ける役で登場しているんだな。
「ダフニスとクロエ」第2組曲について
今回ご紹介する「第2組曲」は、クロエが海賊の手から逃れた後の場面の曲になります。波乱が去って、ダフニスとクロエが再会を果たし、牧人らが踊る場面ですね。
■「ダフニスとクロエ」第2組曲
- 夜明け
- 無言劇
- 全員の踊り
この3曲が連続して演奏されます。
モーリス・ラヴェルとは

フランスの作曲家モーリス・ラヴェルについては、『すぐわかる!モーリス・ラヴェルとは|その生涯と代表作』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:ラヴェル「ダフニスとクロエ」第2組曲について

ここからはカラヤン指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で「ダフニスとクロエ」第2組曲を聴いた感想をお伝えします。
【 】は今回聴いたCDの演奏時間です。
■ダフニスとクロエ」第2組曲【15分20秒】
フルートとクラリネットのアルペジオで始まります。弦楽器(チェロ、コントラバス)の演奏から、徐々に夜が明けていく感じが伝わってきます。
優雅なヴァイオリンに鳥のさえずりのようなピッコロ、フルートが加わります。
ひときわ盛り上がった場面がダフニスとクロエの再会を表現しています。
フルートの独奏部分も聴きどころですね。ダフニスとクロエがパン神の物語を無言劇で表現しています。
ヴァイオリンとフルートの演奏から、ダフニスとクロエの幸福感が伝わってきます。
急激にテンポが変わり、全員の踊りが始まります。引き込まれそうになるほどの迫力です。
ラストは興奮が最高潮に達したかの如くドラマチックに終わります。
音の強弱、テンポの緩急などにより、聴きごたえのあるドラマチックな印象を受ける組曲です。
演奏している方々も楽しいのではないかと思ってしまいました。
もともとストーリーのある楽曲なので、場面を思い浮かべながら楽しむことができます。
フルートの長い独奏も見事ですが、弦楽器や金管楽器、打楽器の活用の仕方を含めて、「ダフニスとクロエ」第2組曲はラヴェルのオーケストレーションの妙が凝縮されている作品です。
まとめ
- 「ダフニスとクロエ」は古代ギリシアの小説がもとになっている。
- 「ダフニスとクロエ」第2組曲は、ストーリーの後半部分の楽曲が連続して演奏される。
- フルートの長い独奏が印象的な作品。
■関連CDのご案内です。
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