私の妻はワーグナー作品のファンです。
しかし…正直なところ、私はワーグナーの作品が苦手です。もちろん全てではありません。上手く説明できませんが、壮大ではあるけれど表面を撫でているような印象を受けてしまうのです。重厚さを感じ取りにくいのかもしれません。
こんなことを書いてしまい、ワーグナーファンの方には申し訳ないと思っています。
誤解しないでいただきたいのは、ワーグナー作品を否定しているわけではありません。私の個人的な感じ方を正直にお伝えしたいだけなのです。
キライなら避けていればいいだけです。でも、避けては通れない気がします。それだけ、クラシック音楽におけるワーグナーの存在は偉大であると感じています。
今回は、ワーグナーの歌劇「タンホイザー」から序曲とバッカナール(ヴェヌスベルクの音楽)をご紹介します。
これを機会に、ワーグナー作品を改めて観てみようと思います。私の理解が表面的なだけなのかもしれませんから。
■カラヤン / ワーグナー管弦楽作品集
- 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
- 演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- ドイツ・グラモフォン カラヤン・ゴールドシリーズ
- 発売:ポリドール株式会社【POCG-9510】
ワーグナー作曲・歌劇「タンホイザー」とは

歌劇「タンホイザー」は、リヒャルト・ワーグナーの作曲したオペラ(以下、歌劇で統一)です。全3幕で構成されています。
歌劇「タンホイザー」は、1845年(弘化2年)10月19日にドレスデンの宮廷歌劇場で初演されました。指揮は作曲者でもあるワーグナー自身が行なっています。初演の評判はイマイチ。観客が内容を理解できなかったためであると言われています。
歌劇「タンホイザー」もそうだったんでだね。
タンホイザーとは劇中に登場する騎士の名前(主役)で、実在の人物がモデルになっているようです。(その人物も快楽に身を投じた人だったのでしょうか?)
歌劇「タンホイザー」には複数の版があります。どうやら初演の際にお客さんが理解できなかったことを考慮して改訂されたようです。ここでは初演以外の版を3つ列記しますが、もうひとつあるようです。
- ドレスデン版(1845年版)
- パリ版(1861年版)
- ウィーン版(1875年版)
歌劇「タンホイザー」のあらすじ

歌劇「タンホイザー」の舞台は13世紀。中世ドイツのテューリンゲン・ヴァルトブルク城です。
そこに登場するのが騎士タンホイザーです。タンホイザーにはエリーザベトという女性がいて、結ばれていました。
ところが…清い愛よりも官能的な欲情に溺れるようになってしまいます。タンホイザーは、愛欲を司る女神ヴェーヌスのいる異界(ヴェーヌスベルク)にまで行き、肉欲に溺れてしまいます。
そんな日々を送っていたタンホイザーですが、ある日故郷の夢をみます。そしてヴェーヌスの誘惑を退け、異界から逃れます。
しかし、自分のとった行為に後ろめたさを感じるタンホイザーは、ヴァルトブルクに戻る気持ちになれませんでした。それでも、親友の説得により故郷に帰ることに。
エリーザベトと再会したタンホイザーは、夫婦で喜びをかみしめます。
ところがその日、歌合戦が開かれることになっていました。参加者が純真な愛について歌う中、タンホイザーは奔放な愛を歌い、挙句の果てにはヴェーヌスを讃える始末です。観衆はタンホイザーに対して、怒りと反感を抱きます。
周囲に注意されて我に返ったタンホイザーでしたが、領主はそれを見過ごしませんでした。今度は出奔ではなく、追放されてしまいます。タンホイザーにとって救いだったのは、ローマ教皇の許しが得られたならば戻ることができるという条件が加えられたことです。
タンホイザーはローマ巡礼の旅に出かけます。
エリザベートは、タンホイザーが無事に帰還できるように願い続けています。(なんて心の広い女性なのでしょう?)
月日が流れ、ローマから巡礼者が戻ってきます。必死にタンホイザーを探すエリザベートでしたが、彼の姿を見つけることができませんでした。エリザベートは自らの命と引き換えに、タンホイザーの許しを得ようと決意します。
彼女が去った後、ボロボロになったタンホイザーが戻ってきます。親友はタンホイザーにローマ巡礼の経緯を尋ねます。残念ながら、タンホイザーは苦難の末にローマにたどり着くも、教皇の許しを得ることができませんでした。
やけを起こしたタンホイザーは、再び冥界に戻ろうとしてさ迷っていたのでした。
タンホイザーの呼びかけに応えるように出現した冥界。愛欲を司るヴェーヌスがタンホイザーを誘惑します。
親友は必死にタンホイザーを引き留めようとします。
そのときです。タンホイザーの妻エリザベートの葬列が視界に入ります。
我に返ったタンホイザーに、親友はエリザベートの決意とその結果を告げます。タンホイザーは妻の亡骸の横で死んでいきます。
最後にローマから特赦の知らせが届いて物語は終了します。
対照的に、献身的な妻と友を想う親友の誠実さが際立つ。
もしかするとワーグナーは、人間の欲望とそれにも勝る徳を表現したのかもしれないな。
リヒャルト・ワーグナーとは

19世紀ドイツで楽劇王と呼ばれたリヒャルト・ワーグナーについては、『すぐわかる!リヒャルト・ワーグナーとは』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:ワーグナー作曲・歌劇「タンホイザー」から序曲&バッカナールについて

私は中学校の音楽の時間に「タンホイザー行進曲」を聴きました。非常に印象的だったため、メロディーが頭の中に残ったのを覚えています。しかしそれ以降、「タンホイザー行進曲」を聴く機会はほとんどありませんでした。
歌劇「タンホイザー」の楽曲では、「序曲」の方が耳にしているような気がします。
私の個人的な気持ちを先にお伝えすると、タンホイザー序曲は嫌いではありません。というか、好きです。
序曲好きということも関係しているかもしれません。タンホイザー序曲は、聴いていて元気が出てくる気がします。
ここからはヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が演奏する「タンホイザー序曲&バッカナール」の感想をお伝えします。
【 】は今回聴いたCDの演奏時間です。
■「序曲」【10分49秒】
■「バッカナール(ヴェヌスベルクの音楽)」【12分52秒】
約11分のタンホイザー序曲の始まりは静かです。靄が取り除かれていくように、徐々に雄大さを帯びていきます。
そして耳なれた旋律が、心を躍らせるように弾み出します。ゆっくりと鳴り響く金管楽器の下を、リズミカルに刻んでいく弦楽器&木管楽器。そして再び静寂が訪れます。
曲の後半に入ると、明るい表情を見せ始めます。まるで小鳥のさえずりのように。やはり金管楽器が効果的に曲を印象付けている気がします。
そして雄大、かつ壮大な旋律にたどり着きます。
三度の静寂の後、バイオリンの奏でる音に続いてクライマックスに入ります。最高潮に達した感情が爆発します!
序曲が終わったあと、演奏は「バッカナール(ヴェヌスベルクの音楽)」へと自然な流れのまま突入します。
※「カラヤン / ワーグナー管弦楽作品集」では、序曲とバッカナールがひとつながりの曲のように演奏されています。
ワーグナーは苦手とか言っていたのに、結局この曲を褒めている私。(矛盾なのか、例外なのか…)タンホイザー序曲は名曲ですよ。
カラヤンとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏も見事というほかありません。できる事なら、生の演奏を聴いてみたかったです。
でも、カラヤン&ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団は数多くの録音作品を残してくれています。このように収録された演奏を聴けるだけでも幸せだと思います。
まとめ
- タンホイザー序曲は、ワーグナーの傑作曲のひとつ。
- 歌劇「タンホイザー」もあらためて見てみたい気持ちに!
- カラヤン&ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏も最高!
■関連CDのご案内です。(ゴールドシリーズではありません。)
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