なんと凛々しい肖像画でしょう!
アントーン・ファン・ダイクの描いた「男の肖像(画家パウル・デ・フォス《?》の肖像)」は。
フランドル・バロック期を代表する画家ファン・ダイクの作品と考えられています。
2004年(平成16年)に東京都美術館で開催された「ウィーン美術史美術館所蔵 栄光のオランダ・フランドル絵画展」の図録をもとに回想します。
アントーン・ファン・ダイク作「男の肖像(画家パウル・デ・フォス《?》の肖像)」とは

- 制作年:1620~1621年頃
- サイズ:75.5 × 58.0cm
- 油彩、カンヴァス
はじめにお伝えしますが、「ウィーン美術史美術館所蔵 栄光のオランダ・フランドル絵画展」の図録解説によると、「男の肖像(画家パウル・デ・フォス《?》の肖像)」はアントーン・ファン・ダイクが描いたのかどうか疑問視されているようです。
描かれている人物についても、画家パウル・デ・フォスなのかどうかハッキリとしていません。
そのうえで、パウル・デ・フォスという人物についてご紹介しましょう。
パウル・デ・フォスは16~17世紀にかけてアントウェルペン(アントワープ)で動物画などを描いていた画家です。
その兄はコルネリアス・デ・フォスで、肖像画や歴史画を描いた画家でした。
アントーン・ファン・ダイクの描いたとされる「男の肖像(画家パウル・デ・フォス《?》の肖像)」は、非常に凛々しい男性像を表現しています。
おそらくはそれほど歳はとっていない男性なのでしょう。
前髪をナチュラルにかき揚げ額を露わにし、口元をキュッと引き締めた顔立ちは美男子といえるでしょう。さらに見開かれた大きな瞳には、艶やかさを感じます。
服装は黒を基調とした落ち着きのあるいで立ちで、全体的な品格を高めているように思えます。
背景は外の風景(夜空)なのか、それとも室内の黒壁なのかはわかりませんが、画面左上の赤色のカーテンが作品のアクセントになっています。
個人的に気になるのは、男性の左肩付近に横一本に引かれた線です。夜警が描かれているとすれば、街の灯を表現しているのかもしれません。
この横線のおかげで、観る側の視線が安定するように感じています。
いずれにしても凛々しき美男子の肖像ですね。
アントーン・ファン・ダイクとは

ヴァン・ダイクの生涯については、『すぐわかる!アンソニー・ヴァン・ダイクとは』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:ヴァン・ダイク「男の肖像(画家パウル・デ・フォス《?》の肖像)」について

アンソニー・ヴァン・ダイク(英名:アントーン・ファン・ダイク)ファンにとっては、「男の肖像(画家パウル・デ・フォス《?》の肖像)」を描いた人物が誰なのか非常に気になることでしょう。
私個人としては、誰が誰を描いたにしても「魅力的な肖像画」であることに変わりありません。
アンソニー・ヴァン・ダイクはイングランドで大成功している画家です。
しかし「男の肖像(画家パウル・デ・フォス《?》の肖像)」が描かれたのは、アントウェルペン時代にルーベンスと仕事をした直後くらいなのではないでしょうか? 1620年(元和6年)には短期間のイングランド旅行に行っていますが…
図録で振り返ると非常に印象的な作品であるにもかかわらず、2004年(平成16年)に東京都美術館で鑑賞したときの記憶は曖昧です。もっと印象に残っていてもおかしくない作品だと思うのですが、不思議ですね。
最後に、いつものわたなび流の感想で終わります。
アントーン・ファン・ダイクの描いた「男の肖像(画家パウル・デ・フォス《?》の肖像)」は、「美術館で鑑賞したい作品」です。
非常にすばらしい作品ではありますが、自宅で鑑賞する感じではないかなと思いました。
とはいえ、いつの日か画家に肖像画を描いていただく機会に恵まれたなら、この男性のように描いてほしいと思ってしまいました。(現実を、だいぶ歪めなければならなくなると思いますが…)
まとめ
- 作者がアントーン・ファン・ダイクなのかどうか疑問が残っている作品。
- 肖像画に描かれている男性がパウル・デ・フォスかどうかも怪しい。
- 作品としては、凛々しい男性像を描いたすばらしい肖像画。