自然の美しさを感じながら心をリフレッシュできる環境に魅力を感じませんか?
クロード・モネの描いた「散歩」を観るとそのような気持ちになります。
1994年(平成6年)にブリヂストン美術館で開催された「モネ展」の図録をもとに、様々なことを考えてみました。
クロード・モネ作「散歩」とは

- 制作年:1875年
- サイズ:59.5 × 80.0cm
- 油彩、キャンヴァス
モネの描いた作品で「散歩」という言葉を聞くと「散歩、日傘をさす女」(ワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵)を思い描くかもしれませんね。
今回は「散歩、日傘をさす女」と同じ1875年(明治8年)に制作された「散歩」をご紹介します。
1871年(明治4年)にアルジャントゥイユに居を構えモネは、その地を中心に絵画制作に取り組んでいました。自然に恵まれた環境と鉄道橋などの人工的な建造物がモネに豊富な画題を提供していたのでしょう。
モネの描いた「散歩」には人の手による建物などの建築物は一切描かれていません。美しい草原や木、花、空、雲、そして3人の人物で構成されています。
作品の優劣をを論じる訳ではありませんが、ワシントン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する「散歩、日傘をさす女」と比較すると、人物にグッとフォーカスするような構図のダイナミズムを感じません。
その反面、自然の美しさやのどかさが伝わってくる作品になっていると思います。
このような青空と草木の緑で埋め尽くされた風景の中を散歩できたら、「どれほど心が和むだろうか?」と想像してしまいます。それだけ、現在の私の身の回りには人工的なものが満ちています。(そのおかげで、便利な生活を送ることができているわけですが…)
「ないものねだり」というのか、現実とのギャップを求める心の欲求なのかはわかりませんが、「散歩」という作品からは自然に対する憧れのような気持ちを感じます。(そのくせ、虫は苦手です…)
作品に話を戻しますね。
「散歩」で手前に描かれている日傘を持った女性は、その周囲よりも濃い緑色の中に立っています。画面には描かれていない大きな木の影なのか、植物の種類が違うためなのかはわかりません。
おそらくですが、女性の服の色合いを考えると木陰のような気がします。画面の左後方には、木が立っていたのではないでしょうか。
手前の女性とともに視線を引き付けるのが、画面中央やや左に立つ一本の木です。画家(モネ)と手前の女性と一本の木の三点を結ぶ空間を広い草原が包み込んでいます。
モネの筆触の効果により、人物と自然が一体化しつつあるように見えます。そのことに対して違和感は感じず、むしろ個人的には受け入れやすさを感じてしまいます。
人物を描いているけれど、自然の景色の一部に同化させている美しい作品だと思います。
■クロード・モネ作「散歩」の所蔵について
今回ご紹介しているクロード・モネ作「散歩」は、モネ展の図録(1994年当時)ではISETAN、東京の所蔵となっています。
しかし現在は、ポーラ美術館の所蔵になっているかもしれません。
ポーラ美術館の公式サイトに同じと思われる作品が掲載されていました。
ポーラ美術館のモネ作「散歩」に関するリンクはこちらです。
正確な情報をお伝えできなくてすみません。
クロード・モネとは

クロード・モネについての紹介は『すぐわかる!クロード・モネとは|印象派を代表する画家の生涯』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:クロード・モネ作「散歩」について

「散歩」というと、病気の療養と何度目かの就職活動に耐えられる体力をつける目的で、ひたすら歩いていた時期を思い出します。1994年(平成6年)にブリヂストン美術館でモネ展を観賞させていただいた頃には、予想もできなかった人生の状況です。
病気の症状がひどい時には精神的負担が大きくて外出することすらできませんでした。働くことができない自分を受け入れるのも大変でしたね。
モネの描いた「散歩」という作品からは、そのような苦しい雰囲気は感じません。心の和む美しい風景です。
自然のなかでゆっくりと時間を過ごせること自体が、ある意味理想的環境に思えます。
私の現在の居住地の側には、散歩コースになる河川の土手があります。一時期、毎日のように歩いていたのですが、今では土手に行くのも億劫(おっくう)なくらいです。
いつかはモネが過ごした当時のアルジャントゥイユのような環境で生活してみたいものですが、今いるところで幸せを感じる場所を見つけることも大切なのかなと思っています。
最後に、いつものわたなび流の感想で終わりたいと思います。
クロード・モネ作「散歩」は、「建物の周りに自然あふれる美術館のような環境で鑑賞したい作品」です。
その方がムードが高まりそうですから。
まとめ
- 「散歩」は「散歩、日傘をさす女」と同じくらいの時期に制作された作品。
- 人物が自然と融合しそうな雰囲気を持つ美しい作品。
- モネ展のときと現在の所有者は違っている可能性がある。