雨の景色をこんなにも美しく描けるのか!と思わされるクロード・モネ作「セーヌ河の朝、雨」。
世界一美しい雨の風景といっても過言ではないかもしれません。
1994年(平成6年)にブリヂストン美術館(現:アーティゾン美術館)で開催された「モネ展」の図録をもとに回想してみました。
クロード・モネ作「セーヌ河の朝、雨」とは

- 制作年:1897年~1898年
- サイズ:73.0 × 91.5cm
- 油彩、キャンヴァス
セーヌ河といえば、全長780kmにも及ぶフランスの河川です。ちなみにセーヌ河は、フランスで2番目に長い河だそうです。1番長い河川はロワール河で、1,012kmです。
セーヌ河クルーズで水上からフランスの街並みを拝見したいものです。クルーズと言えば「船」。少し飛躍しますが、古くはヴァイキングがセーヌ河を利用してパリに出現したこともあるとか…
モネの描いた「セーヌ河の朝、雨」は全面が緑色で覆われて、非常に美しい作品です。
モネは「セーヌ河の朝」を連作で描いています。ブリヂストン美術館(現:アーティゾン美術館)で開催されたモネ展では「セーヌ河の朝、雨」の他に、次の2作品が展示されていました。
- セーヌ河の朝、曙
- セーヌ河の朝、清澄
モネが「セーヌ河の朝」を描いた場所について、モネ展の図録から紹介します。
モネはこれらを描くために、毎朝3時半に起床していたという。ジヴェルニーからセーヌ河を少し下った地点から上流(すなわち南西の方角)を見ている。左にジヴェルニーの河岸があり、右にはリール・オー・ゾルティー(いらくさじま)という中の島が見えている。
出典:『モネ展図録』宮崎克己著 183ページ
ちなみにモネは、1883年(明治16年)からジヴェルニーに住んでいました。
「セーヌ河の朝、雨」は上記2作品と趣きがだいぶ違った作品です。
「曙」「清澄(せいちょう)」は、鏡のようなセーヌ河の川面に川辺の木々が映り込み、木々の間からは空や雲が顔をのぞかせています。それに対して「雨」は、河であると判別するのが難しいほど緑色です。本当に同じセーヌ河を描いているのか?と思ってしまいます。
図録によると、モネは「セーヌ河の朝」の連作を制作するにあたり、14枚のキャンバスを並行して作業していたというのです。そのような場面を目にした人がいたのですね。(この連作自体は、21作品確認されているようです。)
夜明け前から準備して、その日の天気によって描き分けていたのでしょう。
「セーヌ河の朝、雨」に描かれているセーヌ河は、雨か風の影響のためか川面にはさざ波が立っているように見えます。その様子が実に美しい。
モネの光をとらえる目とその光景を描く腕は、どのように脳内で統制されていたのでしょうか?
近くで観ると無造作に殴りつけられた筆の跡にしか見えません。それが少し離れて観ることで、まるでエメラルドを覗き込んだような光景に変わるのです。
同じ光景をカラー写真で見たなら、この作品のような感動を味わうことができるのか疑問です。
すでに絵画に対する写実性の要求は薄らいでいた時代だったのだと思いますが、画家モネの表現する光景はまるで別世界の景色に仕上げられています。
大胆な表現なのに、繊細に光を紡いでいるすばらしい作品です。
クロード・モネとは

クロード・モネについての紹介は『すぐわかる!クロード・モネとは|印象派を代表する画家の生涯』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:クロード・モネ「セーヌ河の朝、雨」について

私にとってブリヂストン美術館(現:アーティゾン美術館)に足を運んだ最初の特別展が、1994年(平成6年)に開催された「モネ展」でした。バーンズコレクション展で印象派の絵画に衝撃を受けて、美術鑑賞欲が高まっていたのです。
上京して数年経っていたにもかかわらず仕事-学校-社員寮の往復ばかり。いわゆる東京っぽいところにはほとんど行ったことがありませんでした。
ブリヂストン美術館(現:アーティゾン美術館)のモネ展を観賞したのは土曜日だったと記憶しています。週末の中央区京橋ではビジネスマンの姿はほとんど見かけませんでしたが、洗練された街並みに驚きました。今でも垢抜けてはいませんが、当時は生粋(きっすい)の田舎者でしたね。
モネ展の会場は、それほど混雑していなかったと思います。(私が行った日がたまたまそうだっただけだと思いますが…)そのためゆっくり鑑賞できました。

モネと言えば「睡蓮」のイメージしか持っていなかった私にとって、「セーヌ河の朝、雨」は衝撃的な作品でした。雨のはずなのに緑色で覆われて、雨粒が降っているようには見えないし、しかも河を描いているというのにパッと目にした瞬間は草原のように見えるのですから…
もしかすると、雨上がりの直後に朝日が差し込んでいる光景なのかもしれません。そうでなければ、黄色い光が川面に移り込むこともないでしょうから。
今、図録で観ても「セーヌ河の朝、雨」という作品からは、画家のイマジネーションの塊が色彩と筆跡により別次元の景色に昇華されたような感覚を受け、圧倒されてしまいます。
絵画鑑賞に興味を抱くようになって間もない頃、このようなすばらしい作品からも影響を受け、その絵を観る楽しさに魅了されていったのだと思います。
最後にいつものように、わたなび流の感想を書かせていただきます。
クロード・モネ作「セーヌ河の朝、雨」は、「自宅で鑑賞したい(欲しい)と思える作品」です。
もう一度と言わず、何回でも鑑賞したいものです。
まとめ
- 「セーヌ河の朝、雨」はモネの連作「セーヌ河の朝」のひとつ。
- 緑色で非常に美しい作品。
- 同時に展示された「セーヌ河の朝」の他の2作とは趣の違う作品。