フランシスコ・デ・ゴヤの描いた「ボルドーのミルク売り娘」は、物憂げな女性を魅力的に描いた作品と言えるのではないでしょうか。
2002年(平成14年)に国立西洋美術館で開催された「スペイン王室コレクションの美と栄光 プラド美術館展」の図録をもとに回想してみます。
フランシスコ・デ・ゴヤ作「ボルドーのミルク売り娘」とは

- 制作年:1825年~1827年頃
- サイズ:74.0 × 68.0cm
- 油彩、カンヴァス
ゴヤは亡くなる約14年前にスペインを離れ、フランス・ボルドーに移り住みます。
ゴヤは1828年(文政11年)に亡くなったので、「ボルドーのミルク売り娘」はゴヤ最晩年の作品と言ってもよいのかもしれませんね。
ボルドーのミルク売り娘に関するちょっとした疑問
私にはこのミルク売りの娘が酪農家の関係者なのか、牛乳店の売り子さんなのかわかりませんでした。
ところが…「スペイン王室コレクションの美と栄光 プラド美術館展」の図録解説を読んではっきりしました。
本作品は、ゴヤのボルドー時代を象徴する作品である。朝の光のなかを、ロバの背に揺られながら牛乳を売りにくる近隣の農家の少女が下から仰ぎ見るように描かれており、牛乳の容器が画面左下に確認できる。
出典:『スペイン王室コレクションの美と栄光 プラド美術館展図録』木下亮著 200ページ
この作品に描かれている女性は、農家の少女だったんですね。
「ボルドーのミルク売り娘」に描かれている女性は何歳なの?
この女性が農家の関係者であることはわかりましたが、私の見たところ「娘」といっても10代の少女には見えません。
図録解説で「少女」と表現されているので若いだろうとは思いますが、随分と大人びた女性のように感じられます。
娘の表情からは血色の良さは感じられるものの、気持ちの面では決して楽しそうには見えません。勝手に、次のようなことを想像してしまいました。
- 牛乳の容器を持ち運ぶのが辛い労働だった…
- 販売に出る前にも搾乳等でひと働きして疲れている…
- 別の生き方をしたいと考えている。
- 今朝も売れなかったな…【妻の意見】
- どうしたらもっと効率よく売れるんだろう?【妻の意見】
いずれにしても楽しそうには見えず、年齢に見合わない物憂げな雰囲気を感じます。
「ボルドーのミルク売り娘」は、朝の光景を描いていた!
私には、ゴヤが描いた「ボルドーのミルク売り娘」の背景が、朝の光景であるということが少し意外に感じられました。
もちろん牛乳という生モノを扱う以上、長時間日光にさらすことは避けるべきでしょう。想像の域を出ませんが、牛乳を売る側にしてみれば、早い時間帯に売り切れる方がいいはずです。
そのように考えると、牛乳販売の光景は午前中によく見かけるものだったのかもしれません。
いずれにしても「ボルドーのミルク売り娘」は、不思議な魅力を感じさせる作品だと思います。
フランシスコ・デ・ゴヤとは

フランシスコ・デ・ゴヤの生涯については、『すぐわかる!フランシスコ・デ・ゴヤとは』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:フランシスコ・デ・ゴヤ「ボルドーのミルク売り娘」について

ゴヤの「ボルドーのミルク売り娘」は、不思議な魅力を感じる作品です。
画面左下の牛乳の容器が無ければ、全く違ったシチュエーションの作品として観ることができそうです。
最後に、いつものわたなび流の感想で終わります。
フランシスコ・デ・ゴヤ作「ボルドーのミルク売り娘」は、「自宅で鑑賞したい(欲しいと思える)作品」です。
もしかすると描かれた当初の背景は、もう少しきれいな青色系だったのかもしれません。(違っていたら失礼ですよね、すみません。)
まとめ
- 「ボルドーのミルク売り娘」は、スペインからフランス・ボルドーに移り住んだ時期のゴヤの象徴的作品。
- 「娘」というよりは、大人っぽい女性に感じられる。
- 「ボルドーのミルク売り娘」は、ゴヤの最晩年の作品のひとつ。