点描で描かれた作品を初めて間近で鑑賞したのは、1994年(平成6年)に国立西洋美術館で開催された「バーンズ・コレクション展」においてでした。
緻密で美しい点描作品に対する感想を、ジョルジュ・スーラ作「オンフルール港の入口」をテーマにご紹介します。
ジョルジュ・スーラ作「オンフルール港の入口」とは
■ジョルジュ・スーラ作「オンフルール港の入口」
- 制作年:1886年
- サイズ:54.0 × 65.3cm
- 油彩、カンヴァス
ジョルジュ・スーラは1885年(明治18年)から亡くなるまでの期間、1度の例外を除いて毎年夏の海辺で風景画を描きました。
「オンフルール港の入口」で描かれているオンフルールは、フランス・ノルマンディー地方の港町で、セーヌ川の河口に位置します。
オンフルールが生んだ有名人としては、美術の世界では画家のウジェーヌ・ブーダンが、音楽においては作曲家のエリック・サティらがいます。
バーンズ・コレクション展の図録の解説によると、スーラが「オンフルール港の入口」を描くスタイルがわかります。
スーラはオンフルールの海景画を7点制作しているが、これらは最終的にパリに帰ってからアトリエで完成されている。
出典:『バーンズ・コレクション展 図録』冨田章著 80ページ
スーラが「オンフルール港の入口」を描いた1886年(明治19年)当時と、現在のオンフルールの景色が同じとは思えませんが、すてきな港町であることが想像できます。
空が青系統の色彩で統一されていないのは「雲」を描いたからなのでしょうか。
また、画面中央の手前に繋船柱が配置されているのも、単調さを避ける狙いがあったと思われます。
ヨットの帆柱や灯台などの白色が置かれることで、距離感が明確になっています。
遠景がぼやけて見える状態も点描で見事に表現されていますね。
上下左右に窓枠と思える輪郭が見えます。海辺のとある家の一室の窓から眺めた風景ということなのでしょう。さりげなく、控えめに描かれた窓枠?により、作品全体が画面から溢れ出すのを防いでいます。サンドイッチ構図とまではいかないのでしょうが、遠近感の表現には影響を与えていると思います。
何と言っても、やわらかくてやさしい光を感じるぞ!
ジョルジュ・スーラとは
19世紀、フランスに生きた新印象派の画家ジョルジュ・スーラの生涯については、『すぐわかる!ジョルジュ・スーラとは』をご参照ください。
わたなびはじめの感想:ジョルジュ・スーラ作「オンフルール港の入口」について
ジョルジュ・スーラの点描で描かれた作品を国立西洋美術館で実際に目にしたとき、制作工程を漠然と想像した記憶があります。
点描という技法で作品を描く際の労力を、他の画家の描き方と比較することはナンセンスですが、相当な手間がかかっているように思えて気が遠くなるようでした。
可能な限り、作品に近づいて鑑賞したのを覚えています。25年以上前の話ですが…
私はスーラの描いた「オンフルール港の入口」のような、のどかな作品も好きです。何か劇的な場面を描写したのではなく、ある意味、日常の景色を緻密に描いているところにも惹かれます。
現在は図録を通じてこの作品を観ていますが、心が落ち着く感じがして平穏を味わえます。
おそらく、空の青色に対する水面の緑色が温かみを帯びているからなのかもしれません。
最後におこがましいことを承知の上で、いつものわたなび流の感想で終わろうと思います。
スーラの描いた「オンフルール港の入口」は、「心の平静を保つためにも、家に飾りたい(欲しいと思う)作品」です。
あなたはどのような気持ちを感じますか?
まとめ
- スーラは新印象派の画家。
- 「オンフルール港の入口」は点描で描かれた作品。
- スーラは若くして亡くなっている画家。