ヤン・ブリューゲル(父)の描いた「動物の習作(騾馬、猫、猿)」は、何といっても猫の描写が可愛らしい!
画家が動物を描くための練習だったとはいえ、十分なほど鑑賞に堪えられる1点です。
2004年(平成16年)東京都美術館で開催された「ウィーン美術史美術館所蔵 栄光のオランダ・フランドル絵画展」の図録をもとに回想してみます。
ヤン・ブリューゲル(父)作「動物の習作(騾馬、猫、猿)」とは

- 制作年:1616年頃
- サイズ:34.2 × 55.5cm
- 油彩、木版
「習作」ですから、ブリューゲルは別の作品に描くつもりでこの動物たちを描いたはずです。
画面の隙間を埋め尽くすように、騾馬や馬、猿、猫たちがさまざまな角度やポーズで描かれています。
右側の猫から想像するに、ブリューゲルは木版の向きを変えて練習したのでしょう。そのように考えると、猫は最後に描かれたと推測できますね。
東京都美術館で開催された「ウィーン美術史美術館所蔵 栄光のオランダ・フランドル絵画展」では、「動物の習作(騾馬、猫、猿)」の他に動物の習作がもう1点展示されていました。
それが「動物の習作(犬)」(1616年頃)です。こちらの習作は画面に複数種類の犬が描きこまれています。
どちらの習作も、板に油彩で描かれたデッサンのようです。
想像の域を出ませんが、ブリューゲルは必ずしも静止状態を保つのが難しい動物たちを瞬時に観察しては素早く筆を走らせたのでしょう。
「習作ゆえに」と表現してよいと思うのですが、動物たちがさまざまな状態でひしめいている状態は、さながら動物園のようで楽しさを感じます。
個人的には「習作」といはいえ、「作品」と考えてもよいと思っています。
「動物の習作(騾馬、猫、猿)」は、作品としても、画家ヤン・ブリューゲル(父)の資料としても価値のある1枚だと思います。
ヤン・ブリューゲル(父)とは

ヤン・ブリューゲルの生涯については、『すぐわかる!ヤン・ブリューゲル(父)とは』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:ヤン・ブリューゲル(父)「動物の習作(騾馬、猫、猿)」について

2004年(平成16年 )当時、東京都美術館で「動物の習作(騾馬、猫、猿)」を鑑賞したときの印象はそれほど鮮明ではありません。
私がヤン・ブリューゲル(父)の「動物の習作(騾馬、猫、猿)」に再注目したのは、画面右側に猫が描かれていたからです。
特に子猫が丸まったような姿は、とっても愛らしいです。(猫エリアでは一番上で、右から2番目の猫ちゃんです。)
猫の毛のやわらかさと、後頭部から首にかけてのフワッとした表現には驚かされます。
よく観ると、猿たちの表情にも個性があるように思えてきます。
「ウィーン美術史美術館所蔵 栄光のオランダ・フランドル絵画展」の図録解説のよると、待ち伏せしている猫の姿は、プラド美術館が所蔵する「聴覚」という作品に登場しているそうです。
最後に、いつものわたなび流の感想で終わろうと思います。
ヤン・ブリューゲル(父)の描いた「動物の習作(騾馬、猫、猿)」は、「自宅で鑑賞したい(欲しい)と思える作品」です。

まとめ
- ヤン・ブリューゲルが他の作品に描くための練習で描いた動物たち。
- 隙間を埋め尽くすように猿や騾馬、猫たちが描かれている。
- おそらくブリューゲルは、木版を無駄にしないために向きを変えて猫を描いたと思われる。