1994年(平成6年)に東京都美術館で開催された「ニューヨークを生きたアーティストたち」展の図録から、ハリー・ウィルソン・ワトラス作「乙女のごとく」をご紹介します。
「乙女のごとく」は、写真のように緻密かつ繊細な筆遣いで描かれた油彩画です。
この記事では、画家ハリー・ウィルソン・ワトラスについてと私の個人的考察及び感想をお伝えします。
ハリー・ウィルソン・ワトラス作「乙女のごとく」とは

■ハリー・ウィルソン・ワトラス作「乙女のごとく」
- 制作年:1915年
- サイズ:107.3 × 132.0cm
- 油彩、キャンヴァス
「乙女のごとく」という作品の原題は「Just a Couple of Girls」です。わたしの英語力は現役の中学生にも及びませんが、「乙女のごとく」という邦題をつけられた方には感服します。
ハリー・ウィルソン・ワトラスがどんなニュアンスで「Just a Couple of Girls」と付けたのかはわからないけれど、作品から受ける印象としては「乙女のごとく」の方が、より美しい雰囲気を伝えているように感じるぞ。
「乙女のごとく」は非常に上品で緻密なタッチで描かれています。印象派の絵画と比べると、保守的な作風といえるでしょう。
しかし、背景に描かれている壁紙からはモダンさを感じます。鯉がアイリスの花の下で飛び跳ねている様子でしょうか?
上品にデフォルメされたデザインチックな雰囲気の背景の前に、あたかも写真であるかのように緻密なタッチで描かれた人物が置かれている光景は、「抽象とリアル」「平面と立体」が同居しているような興味深い印象を醸し出しています。
この二人の乙女が、どういった経緯でこのような状態(ポージング)になっているのかはよくわかりません。単にハリー・ウィルソン・ワトラスが「そうしてくれ」と依頼しただけなのかもしれません。おそらく、そんな気がしてきました。
ハリー・ウィルソン・ワトラスの女性を描いた作品の印象としては、正面からの構図というよりは、この「乙女のごとく」のように横向きのものが多いと感じます。
ハリー・ウィルソン・ワトラスの美学というか、女性を美しく絵画(作品)に描き込むための必勝パターン(理想的構図)だったのかもしれませんね。
ハリー・ウィルソン・ワトラスとは

19~20世紀に活躍したアメリカの画家ハリー・ウィルソン・ワトラスの生涯については、『すぐわかる!ハリー・ウィルソン・ワトラスとは』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:ハリー・ウィルソン・ワトラス「乙女のごとく」について

ハリー・ウィルソン・ワトラスの「乙女のごとく」を一文字で表現するならば、「美」が最もふさわしいのではないでしょうか?
私がそのように感じた理由は次の通りです。
- 描かれている女性の美しさ。
- 筆のタッチの繊細で緻密さから感じる美しさ。
- 全体的に淡い色合いであることから受ける美しい印象。
二人の女性の衣装で表現している「黒と白のコントラスト」も作品に落ち着きを与えているように感じます。本を読んでいる女性が着ている衣類の柔らかさからも、絶妙な表現力が伝わってきます。
いつものごとくわたなび流の感想を述べるならば、「この作品は美術館やモダンな喫茶店で観るのがベスト!」となります。
私の絵画鑑賞基準の柱である「自宅に飾りたいかどうか」を思ったときに、自分の普段の生活空間に「乙女のごとく」が存在している様子をイメージすることができませんでした。
最後にわたなび流の感想で終わります。
ハリー・ウィルソン・ワトラス作「乙女のごとく」は、「美術館で鑑賞したい(欲しいとまでは思えない)作品」です。
ステキな作品ではありますが、鑑賞する場所は(私の)自宅でない方が良いという結論に達しました。もう少しハッキリとした言葉をつけ加えると、とどのつまりは「私には似合わない」ということです。
まとめ
- 緻密さと繊細さを感じる作品
- 描き方を含め、作品全体から「美」を感じる。
- 美術館やお洒落な喫茶店で観たい作品