「文芸絵画作家」ってご存知でしたか?
私自身、ジョン・クイドアという画家について知るまで「文芸絵画作家」という呼称を知りませんでした。
今回は、1994年(平成6年)に東京都美術館で開催された「ニューヨークを生きたアーティストたち」展の図録から、ジョン・クイドア作「ドロシア」をご紹介します。
「ニューヨークを生きたアーティストたち」展の図録において、ジョン・クイドアという画家を表すのに「文芸絵画作家」という呼称が用いられています。私が思うに「文芸絵画作家」とは、小説などの文学作品等から着想を得て絵を描く画家のことをいうのだと解釈しました。
その当時、絵本をもとに描いたわけだけれど、仮に現在の僕が小説の1場面を描くとしたら何を書くかと想像してみた。
最近は小説をあまり読んでいけれど、司馬遼太郎氏の「菜の花の沖」か「燃えよ剣」から場面を拝借したかもしれない。
描く技量は皆無だけれどね…
ジョン・クイドア作「ドロシア」とは

■ジョン・クイドア作「ドロシア」
- 制作年:1823年
- サイズ:71.0 × 58.4cm
- 油彩、キャンヴァス
タイトルの「ドロシア」とは、「ドン・キホーテ」に描かれた女性の名前です。
実はこの作品、スペインの作家ミゲル・デ・セルバンテス・サーベドラの小説「ドン・キホーテ」の一場面を描いたものなのです。
ドロシアは「ドン・キホーテ」の作品に登場する人物(宿屋の娘)をもとに、ドン・キホーテが作り出した妄想上の高貴な女性です。邦訳では「ドロシア」ではなく「ドルシネア」や「ドゥルシネア」とされているかもしれませんね。
ジョン・クイドアが「ドン・キホーテ」のどの場面を描いたのかは不明です。しかし、「ニューヨークを生きたアーティストたち」展の図録に興味深い解説がありましたのでご紹介します。
「この絵がミゲル・デ・セルバンテス・サーベドラの1605年の小説の、正確にどのシーンなのかはよくわからないが、1820年の英語版の口絵がクイドアの作品のもとになっていることは確かである。」
引用元:『ニューヨークを生きたアーティストたち』図録 177ページ
発行:東京ルネッサンス推進委員会
絵を描くために使用したのが小説の口絵というのもおもしろいですよね。小説の口絵といっても1800年代だということを考えると、カラー刷りだったとは考えにくいですから、この「ドロシア」という絵画作品のような鮮烈な配色は、ジョン・クイドアの技量の高さを物語っていると思います。
ジョン・クイドアのイマジネーションが具現化したような作品と言えるのではないでしょうか?
文芸絵画作家ジョン・クイドアとは

19世紀のアメリカで活躍した文芸画作家ジョン・クイドアの生涯については、『すぐわかる!ジョン・クイドアとは』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:ジョン・クイドア作「ドロシア」について

森の中を流れる美しい小川の側に座っている女性を描いたこの作品。やわらかい芝生と木の葉の緑に対して、赤い服が鮮やかに映える感じが美しいですよね。
ドロシアの脇に置かれているのは袋と黒い帽子でしょうか?おそらく靴は黒い帽子と思われるものの下にあるのでしょう。
長く美しい髪をまとめて帽子をかぶっていたのかもしれませんね。
この絵はドロシアがまとめた髪をほどいてリラックスしている場面のように見えます。それでいて、爽やかで快活な印象を受けます。ドロシアの服装や表情から感じ取ることができます。
足を小川に入れているのかと思いきや、そうではないのですね。ドロシアの視線の先には、「一体何があるのか?」と想像してしまいます。視線の先の空間が広くなっていることで、作品には解放感が演出されています。
自然の景色とは一線を画したドロシアの赤い衣服は観る者の視線を惹きつけるアクセントに。違和感を感じさせません。
風景画のような人物(物語)画といった感じになるのでしょう。
ここでわたなび流の感想をお伝えします。
ジョン・クイドア作「ドロシア」は、「自宅で鑑賞したい(欲しいと思える)作品」です。部屋に飾ると雰囲気が明るくなるステキな作品だと思います。正直なところ、鑑賞するなら美術館の方がふさわしいとは思っていますが…
好きな女優やアイドルのポスターを飾っている方も多いと思うけれど、個人的な想いとしては自宅に飾るのは風景か抽象画かな。
大好きなレッドツェッペリンやMUSE(ミューズ)であっても、メンバー自身がドカーンと映っているポスターは飾らない気がする。
こちらは男性なので、例としては適切ではないかもね。
バンドのロゴを用いたデザインやアルバムのジャケットなら飾るかどうか迷うかもしれない…
まとめ
- 文芸絵画作家という呼称を初めて認識した作品が「ドロシア」。
- ドン・キホーテの場面を描いている。
- 美しい自然とドロシアの描かれ方が、爽やかで生き生きとしている。