美術作品

んっ、この作品ルーベンスなの?ぺーテル・パウル・ルーベンス作「貢の銭を見出す聖ペテロ」|伊勢丹美術館「アイルランド国立美術館名品展」より

アイルランド国立美術館名品展 ぺーテル・パウル・ルーベンス「貢の銭を見出す聖ペテロ」

巨匠と呼ばれる画家の作品は実際に観たいものですよね。

アイルランド国立美術館名品展では、巨匠ルーベンスの作品を目にする機会がありました。
ところが…ぺーテル・パウル・ルーベンス作「貢の銭を見出す聖ペテロ」を観たときに、今ひとつピンとこなかったのです。

大変失礼な感想を述べましたが、ルーベンスと言えば「フランダースの犬」に出てくる聖母マリア大聖堂の「キリスト昇架」と「キリスト降架」のイメージくらいしか持っていなかった頃のこと。

自分の無知の影響が大きかったと反省しました。
その反面、画家の知名度に左右されない正直な感想であったことも事実です。

そのようなことを考えながら、1994年(平成6年)に伊勢丹美術館で開催された「アイルランド国立美術館名品展」の図録をもとに思い出してみました。

  • 制作年:1618年
  • サイズ:199.4 × 218.8cm
  • 油彩、カンヴァス

ぺーテル・パウル・ルーベンス作「貢の銭を見出す聖ペテロ」

アイルランド国立美術館名品展 ぺーテル・パウル・ルーベンス「貢の銭を見出す聖ペテロ」

ルーベンスが描いた「貢の銭を見出す聖ペテロ」は新約聖書 マタイによる福音書 第17章に基づいています。

イエス・キリストは弟子たちと共にガリラヤ湖の北西岸の町カペナウムに行かれます。
そのときに宮の納入金を集める人たちが、シモンと呼ばれたペテロに次のようなことを尋ねたのです。

「あなたたちの先生(イエス・キリストのこと)は、神殿の納入金を納めないのですか?」と。

その後の出来事は新約聖書から引用します。

ペテロは「納めておられます」と言った。そして彼が家にはいると、イエスから先に話しかけて言われた、「シモン、あなたはどう思うか。この世の王たちは税や貢をだれから取るのか。自分の子からか、それとも、ほかの人たちからか」。ペテロが「ほかの人たちからです」と答えると、イエスは言われた、「それでは、子は納めなくてもよいわけである。しかし、彼らをつまずかせないために、海に行って、つり針をたれなさい。そして最初につれた魚をとって、その口をあけると、銀貨一枚が見つかるであろう。それをとり出して、わたしとあなたのために収めなさい」。

出典:『新約聖書 マタイによる福音書第17章 25~27節』
28ページ 日本聖書協会

イエス・キリストは父なる神の御子であられたので、この世の王たちの徴税方法によるならば、ご自身の父である神の家すなわち神殿(宮)の納入金を納める必要がないことを伝えたのでした。

すなわちこのやり取りの中には、イエス・キリストが神の独り子であることを明確に宣言されたことが含まれています。

しかし、そのことを知らない、あるいは信じない人をつまずかせないために魚の口から銀貨を取り出すようにとペテロに言ったのでした。

魚の口から銀貨を取り出している場面は、マタイによる福音書には記されていません。
ルーベンスは、ペテロがイエス・キリストに指示されたことを実行に移した場面を描きました。

漁師だったペテロは、ルーベンスの描いたようにたくましい体つきをしていたのだと思います。
その右手には、魚から取り出した銀貨が一枚見られます。

他の弟子たちが驚く表情も、非常に豊かに描かれています。
赤い服を着て背中を見せている男性の足の裏についた砂がリアルですよね。

女性を描き込んでいるのも作品に華やかさを添えています。

たくましい体つきの男性が密集しているいて、画面中から力強さが発散されているかのようです。

アイルランド国立美術館名品展の図録には、この作品が当初、ルーベンスのものかどうか疑問視する専門家がいたことも記載されています。
現在は研究が進み、ルーベンスの作品だと認められているようです。

ぺーテル・パウル・ルーベンスとは

16世紀~17世紀に活躍したフランドル・バロック絵画の巨匠ルーベンスについては『すぐわかる!フランドル・バロック絵画の巨匠ルーベンスとは』をご参照ください。

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わたなびはじめの感想・ルーベンス作「貢の銭を見出す聖ペテロ」

ベルギー・アントワープベルギー・アントワープ

初めて「貢の銭を見出す聖ペテロ」を目にしたとき、正直なところルーベンスの作品とは思えませんでした。
上手く表現できませんが、何となく暗くてドラマチックさを感じなかったからだと思っています。

そのため美術館で目にしたときには、それほどしっかりと観ていなかったような微かな記憶があります。
今思えば、「もっとしっかりと目に焼き付けておけばよかった!」と感じずにはいられません。

ルーベンスは人体を詳しく観察していたのでしょう。
解剖学にも通じていたのかもしれません。
その結果が、ペテロの左腕や左脚に描き込まれているわけです。

赤い服の背を向けた男性の顔はハッキリと見えませんが、その心情が顔面以外の要素から伝わってくるのも興味深いです。

最後に、いつものわたなび流の感想で終わりたいと思います。

ぺーテル・パウル・ルーベンス作「貢の銭を見出す聖ペテロ」は、「美術館で鑑賞したい作品」です。
何となく、家で観るには迫力がありすぎると思いませんか?

まとめ

ルーベンス作「貢の銭を見出す聖ペテロ」
  1. ルーベンスは絵画だけでなく外交面でも優れた能力を発揮していた。
  2. この作品は新約聖書 マタイによる福音書をもとに描かれている。
  3. 青い服を着たペテロの肉体表現に迫力を感じる。

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