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険しい表情の男性!レンブラント工房作「黄金の兜の男(マルス)」|国立西洋美術館館「レンブラントとレンブラント派-聖書、神話、物語」展(2003年)より

レンブラントとレンブラント派_レンブラント工房「黄金の兜の男(マルス)」【アイキャッチ】
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印象的な険しい表情の男性!レンブラント工房作「黄金の兜の男(マルス)」という作品です。

2003年(平成15年)に国立西洋美術館館で開催された「レンブラントとレンブラント派-聖書、神話、物語」展の図録を基に回想してみます。

レンブラント工房作「黄金の兜の男(マルス)」とは

レンブラントとレンブラント派_14_レンブラント工房「黄金の兜の男(マルス)」

■レンブラント工房作「黄金の兜の男(マルス)」

  • 制作年:1650年頃
  • サイズ:67.5 × 50.7cm
  • 油彩、カンヴァス

「レンブラントとレンブラント派-聖書、神話、物語」展の図録解説によると、この作品は1897年(明治30年)に、ヴィルヘルム・フォン・ボーデ氏によりベルリンの美術館のために購入されました。この美術館がベルリン国立絵画館のことなのかどうかは不明です。おそらくはそうなのだろうと推察しています。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
ヴィルヘルム・フォン・ボーデは、カイザー・フリードリヒ美術館の館長で、伝説的美術史家と形容されているぞ。

現在は科学的な調査も経て、この作品を描いた人物がレンブラントでないことはわかっています。しかし、作者の特定まではできていないようです。ベルリンでは長らくレンブラントの作品だと思われていたとのこと。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
これはレンブラントの作品だと思ってもおかしくないでしょう。

作品自体に目を向けてみましょう。

タイトルにある「マルス」とは、ローマ神話に登場する戦いと農耕の神のことを指しているのでしょう。鎧を着用していることから考えても、軍神を描いたと推察するのが妥当なのかもしれません。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
そうだとすれば、火星の呼び名とも同じだな。
「マルス」「マーズ」って呼び方もされるよね。

この作品を肖像画として認識するべきなのか、それとも「軍神」を描いた物語画とするべきなのかはわかりません。男性モデルを「マルス」に見立てて描いた肖像画の可能性もあります。

いずれにしてもこのような険しい表情をしているのですから、ただならぬ人物なのでしょう。眉間にしわを寄せ、口は真一文字にキッと閉じられています。その鋭い眼光は右下方向に向かっていて、何かを睨みつけているようです。髭も威厳を増し加えている要素でしょう。眉が薄めな点が、より強さを演出しているかのようです。

画面のほぼ中央に位置する男性の目の先には空間が広くとられているので、自然に観る側の視線は見えない何に向けて誘導されます。そして、その先に何があるのかをイメージしようとするのです。これはおそらく作者の狙いであり、この静かな作品において、観る人の頭の中で物語を生み出させようとしたのだと思います。

「黄金の兜の男(マルス)」の最大の特徴は、羽の付いた黄金の兜だと言えるでしょう。この人物に向かって左上から注がれている光で、兜の一部が白く輝いて見えます。作者が最も力を注ぎこんだ感じが伝わってきますよね。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
本当に金属のような質感だな。

男性の衣装は兜以外はシンプルなようです。首周りには黒くて光沢のある素材の鎧を纏(まと)っているようです。胸元は鎖帷子(くさりかたびら)のようにも見えます。

左肩から斜めに掛けられているのは、マントの留め具でしょうか?袖部分は動物の皮のような素材の着衣(マント?)に感じられます。

背景に赤色系の具材が用いられていることで、この男性の立っている場所は、真っ暗な部屋というよりは戦場にいるかのように感じられます。夜中に遠くで街が燃えているような…

背景の影響を考えると、漆黒の空間よりも不気味に感じられますね。

迫力とリアリティを兼ね備えた、肖像画的な物語画だと表現しても差し支えなさそうです。

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レインとは

レンブラントとは

「黄金の兜の男(マルス)」はレンブラントの作品ではありませんが、レンブラント・ファン・レインの生涯にご興味のある方は『すぐわかる!レンブラント・ファン・レインとは|「光と影の画家」の生涯について』をご参照ください。

レンブラントとは
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わたなびはじめの感想:レンブラント工房「黄金の兜の男(マルス)」について

国立西洋美術館

私が国立西洋美術館でこの作品を観たのは、もう18年程昔のことです。その際、レンブラントの作品だと勘違いしたような微かな記憶があります。勘違いというよりも、レンブラントの作品だと思って疑わなかったのです。

私は作品の説明を読まずに絵画作品のみをザッと観て、もう一度ゆっくりと鑑賞し直すことが多々あります。混雑しているときは別ですが。

このような鑑賞スタイルの場合、往々にして思い込みや勘違いが生じます。「黄金の兜の男(マルス)」についても思い込みがあったはず。

レンブラント工房の作品であることに美術館内で気が付いたのか、帰宅後図録を観たときに驚いたかは記憶が定かでありません。いずれにしてもこれだけの作品ですから、レンブラントの下で修業を積んだ画家が大きく関わっていることは間違いないでしょう。

作者が誰なのかは別としても、この作品の存在感は変わりません。特に黄金の兜の描写・表現には驚くばかりです。

最後に、いつものわたなび流の感想で終わります。

レンブラント工房作「黄金の兜の男(マルス)」は、「美術館で鑑賞したい(欲しいとは思わない)作品」です。

もしも自宅に飾られていたら、威厳ある眼差しに腰が引けてしまいそうですから。

まとめ

レンブラント工房「黄金の兜の男」
  1. レンブラントの作品だと思われていた時期もあったが、科学的な調査により別人によるものだと判明している。
  2. タイトルにある通り、「黄金の兜」の描写が印象的な作品。
  3. 視線と空間の使い方の効果で、男性の眼差しの先には何があるのか?と、ついつい空想してしまう。

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