2002年(平成14年)に国立西洋美術館で開催された「スペイン王室コレクションの美と栄光 プラド美術館展」で鑑賞した、ベラスケス・デ・シルバ、ディエゴの作品「フェリペ4世」。
当時の私はフェリペ4世についての知識が現在以上に乏しかったので、ベラスケスの作品のひとつとしてしか鑑賞できませんでした。
プラド美術館のコレクションを充実化させた人物だと認識できていたら、もう少し真剣に向き合えたかもしれません。
残念な気持ちを抱えつつ、図録をもとに回想してみます。
ディエゴ・ベラスケス・デ・シルバ作「フェリペ4世」とは

- 制作年:1625年~1628年頃
- サイズ:57.0 × 44.0cm
- 油彩、カンヴァス
ベラスケスの肖像画に描かれたフェリペ4世は、スペイン及びナポリ・シチリア、ポルトガルの国王でした。
フェリペ4世とは
フェリペ4世はの国王としての在位期間は次の通りです。
1621年~1665年 (元和7年~寛文5年) |
スペイン ナポリ・シチリア |
---|---|
1621年~1640年 (元和7年~寛永17年) |
ポルトガル |
フェリペ4世は、1605年(慶長10年)4月8日にバリャドリッドで誕生しました。
現在のバリャドリッドは、スペイン北西部最大の都市です。
もともとはケルト人が住んでいましたが、歴史が進むとともにローマ帝国、西ゴート王国、イスラムのウマイヤ朝の征服・支配、侵入を受けることに。
11世紀にはキリスト教勢力のレオン王国により都市化されていきました。
1469年(応仁3年・文明元年)、カスティーリャ王で後にイサベル1世となるイザベル女王と、アラゴン国王で後にフェルナンド2世となるフェルナンドがバリャドリッドにて婚礼を挙げ、スペイン王国が成立します。
フェリペ4世は大変若くしてスペイン国王になっています。国王になった当初は、国政への関与は難しかったことでしょう。
その後1643年(寛永20年)に、それまで国政を仕切っていたオリバーレス公伯爵を更迭。自身の甥に当たるルイス・メンデス・デ・アロを首席大臣に任命しています。
ヨーロッパにおけるスペインの存在感は、フェリペ4世統治時代の前半は保たれていました。しかしその後は、イングランドやオランダ(ネーデルラント)、フランスといった国々が影響力を持つことになっていきますが...
結局、フェリペ4世の時代にスペインは衰退していきます。
フェリペ4世は善良な人柄で、乗馬や射撃をたしなみ、民からは愛されていたようです。
フェリペ4世の功績は、政治というよりも芸術・文化面で高い評価を得ていると言えます。何といっても、後のプラド美術館のコレクションの充実化に寄与した人物ですから。
フェリペ4世の宮廷画家には偉大な巨匠が招かれていました。それがディエゴ・ベラスケスです。
フェリペ4世にゆかりのある画家を数人ご紹介しましょう。
- ディエゴ・ベラスケス
- フランシスコ・デ・スルバラン
- バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
- ホセ・デ・リベーラ
- ピーテル・パウル・ルーベンス
プラド美術館の世界に名だたるコレクションの礎を築いたのはフェリペ2世です。コレクションをさらに充実化させたのがフェリペ2世の孫であるフェリペ4世でした。
フェリペ4世は1665年(寛文5年)9月17日に死亡しました。
ベラスケスの描いた「フェリペ4世」の肖像画について
面長な顔で、温和な雰囲気がにじみ出ているこの肖像画は、「スペイン王室コレクションの美と栄光 プラド美術館展」の図録解説によると22歳頃のフェリペ4世だそうです。
丸い円盤のような襟の衣装は軍服です。というよりは、甲冑ですよね。
緋色の飾り帯も作品のアクセントになっています。
フェリペ4世の容姿に目を向けると、次のような特徴を感じます。
- 色白の肌に血色の良い頬と唇。
- いかにも柔らかそうな頭髪。
- 鑑賞者を見つめ返す真面目な視線。
こういった要素が、軍服を身に纏(まと)っている厳(いか)つさを中和しているようですね。
この作品の描かれた経緯についてはハッキリしていません。騎馬像の一部として描かれた可能性や、その習作なのではないか等といった推測がなされているようです。
いずれにしても、この「フェリペ4世」の肖像画からは、軍人、政治家というよりも、芸術を愛した国王の姿が伝わってきますね。
ディエゴ・ベラスケスとは

17世紀スペイン絵画最大の巨匠ディエゴ・ベラスケス生涯については、『すぐわかる!ディエゴ・ベラスケス・デ・シルバとは|17世紀スペイン絵画の巨匠の生涯について』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:ディエゴ・ベラスケス「フェリペ4世」について

なんてやさしそうな王様なのでしょう...
ベラスケスの描いた「フェリペ4世」の肖像画を観て感じた正直な気持ちです。
ですが...この感想は2002年(平成14年)に国立西洋美術館で実物を鑑賞したときのものではありません。正直なところ、記憶にほとんど残っていないのです。
「スペイン王室コレクションの美と栄光 プラド美術館展」の図録を観返して、あらためて感じた思いでした。
ベラスケスがどこまで実際のフェリペ4世を忠実に描いたのかはわかりません。現代と違い、当時の肖像画は国王のイメージ形成に大きく影響したはずですから、フェリペ4世の要望が反映されているのは間違いないでしょうね。
もしも肖像画をお願いするとしたら、私も多少は若く・細めに描いてほしいところです。
最後に、いつものわたなび流の感想で終わります。
ベラスケスの描いた「フェリペ4世」は、「美術館で鑑賞したい作品」です。
できることなら、プラド美術館でお目にかかりたい作品ですね。
まとめ
- 芸術を愛した国王の肖像画。
- フェリペ4世の芸術作品収集は、プラド美術館のコレクションの充実化につながった。
- 「フェリペ4世」は、17世紀スペイン最大の絵画の巨匠の作品のひとつ。