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影が濃すぎる?ベルナルド・ベッロット「ドレスデンのアルトマルクト広場の眺め」|東京都庭園美術館 「プーシキン美術館所蔵 イタリア・バロック絵画展」より

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今回は1997年(平成9年)に東京都庭園美術館で開催された「イタリア・バロック絵画展」の図録から、ベルナルド・ベッロットの描いた「ドレスデンのアルトマルクト広場の眺め」をご紹介します。

写真で撮影したかのような精密な風景画です。

現在とは違った、270年ほど前のアルトマルクト広場。
この作品が描かれた当時も、クリスマスシーズンにはクリスマスマーケットが開催されていたのでしょうね。

ベルナルド・ベッロット作「ドレスデンのアルトマルクト広場の眺め」とは

プーシキン美術館所蔵 イタリア・バロック絵画展 ベルナルド・ベッロット「ドレスデンのアルトマルクト広場の眺め」

■ベルナルド・ベッロット作「ドレスデンのアルトマルクト広場の眺め」

  • 制作年:1750年~1752年
  • サイズ:135.0 × 241.0cm
  • 油彩、カンヴァス

ベルナルド・ベッロットは主に景観画を描いたヴェネツィア派の画家です。

ベルナルド・ベッロットの「ドレスデンのアルトマルクト広場の眺め」は、16~18世紀のドレスデンにある古い広場と街並みを描いたものです。

画面の左下には「ユスティーツィの噴水」が、画面中央付近にはそびえるように聖十字架教会が描かれています。

アルトマルクト広場は、左右と奥の三方を建物に囲まれていて奥行きを感じます。おそらくは似たような高さの建物が、奥に行くほど低くなり遠近感を生み出しています。

三方を建造物に囲まれると閉塞感を感じる場合もありますが、画面の上部(約半分)に空を描いたことで空間的な解放感があります。

アルトマルクト広場を主題としているのでしょうが、閑散とした状態です。ある意味、普段のアルトマルクト広場の様子を淡々と描いたという印象を受けます。別な表現をすると、景観画としての役割を十分に果たしていると言えますね。

ベルナルド・ベッロットはドレスデンのフォン・ブリュール伯爵の依頼でドレスデンとピルナの景色をシリーズで描きました。「ドレスデンのアルトマルクト広場の眺め」はその中のひとつです。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
ちなみに「アルトマルクト広場」は、現代もクリスマスマーケットで人気の広場です。
12月に行ってみたいなぁ!

ベルナルド・ベッロットとは

すぐわかる!ベルナルド・ベッロットとは

イタリアに生まれ、ウィーンやミュンヘンでもバロック絵画を描いた画家ベルナルド・ベッロットについては、『すぐわかる!ベルナルド・ベッロットとは』をご参照ください。

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わたなびはじめの感想:ベルナルド・ベッロット「ドレスデンのアルトマルクト広場の眺め」について

ドレスデン・アルトマルクト広場ドレスデン【アルトマルクト広場】

イタリア・バロック絵画展でベルナルド・ベッロットの「ドレスデンのアルトマルクト広場の眺め」を観たとき、絵の中に吸い込まれるような感覚を体験していました。

そして次の疑問が湧いてきたのです。

「ドレスデンのアルトマルクト広場の眺め」にみられる精巧かつ精緻さは、どのようにして実現されたのだろうか?

これほど直線的で立体的な建造物を、2次元のカンヴァスに描き込むことは難しいと思ったのです。

その答えのひとつは「カメラ・オブスキュラ」にありました。「カメラ・オブスキュラ」とは、ピンホールカメラの原理でできています。暗い箱に1点の穴を穿ち、そこから入ってくる光を箱の中に設置した鏡に反射させて投影するのです。

その後の一眼レフカメラに通じるものと理解していいと思います。

私も幼い頃に、紙の下にマンガ本を置いて透かしてなぞった経験があります。そのように考えると、「な~んだ」と思ってしまうかもしれません。

しかし、ベルナルド・ベッロットの油彩による色付けはどうでしょうか?

私は風景の輪郭が描かれた紙を用意されたとしても、目の前の風景のような色付けをすることはできません。そのように考えるとベルナルド・ベッロットの精密かつ精緻さは、カメラ・オブスキュラだけで実現されているわけではないのです。

「ドレスデンのアルトマルクト広場の眺め」に話を戻しますね。

この作品は、光と影がハッキリと描かれているのに、明るい印象を受けません。作品全体の色合いの影響もありますが、画面下部に広がる広場に大きく影が伸びているためだと思います。

カメラ・オブスキュラを使用するには、ある程度の明るさが求められるはず。

だとしたら、もっと天気の良い日を選ぶこともできたのではないでしょうか?
(実はこの作品を描いたのが最高の天気だったのかもしれませんが…)

もしかするとベルナルド・ベッロットが、ありのままの風景を残したかったからなのかもしれません。日常の生活をありままに表現するのがベルナルド・ベッロットの作風でもあります。それを考慮すると、敢えて明るすぎない日を選んだとも考えられます。

いや…とはいえ、画面右手には光が差しているし、あれほどのクッキリした暗い影を生じるには強烈な日差しが必要だったのではないか…

こんなことを書いたら失礼なのは承知しておりますがお許しください。もしかすると、270年程経過しているので絵画自体が汚れ気味なんてことはないでしょうか?

想像はここまでにしておきます。

わたなびはじめの絵画判定に移ります。
ベルナルド・ベッロットの「ドレスデンのアルトマルクト広場の眺め」は、「美術館で鑑賞するのがいい」作品だと感じました。

この判定は決して悪いものではなく、仮に自分の住まいに飾るとしたら部屋の雰囲気に馴染まないだろうと思ったからです。

私の絵画好きの出発点は、写実的絵画に魅力を感じたことでした。ベルナルド・ベッロットの「ドレスデンのアルトマルクト広場の眺め」は、まさにすばらしい景観画であり写実的風景画だと思います。

まとめ

ベッロット「ドレスデンのアルトマルクト広場の眺め」
  1. ベルナルド・ベッロットは、精巧かつ精緻な風景画家。
  2. カメラ・オブスキュラを活用。
  3. ドレスデンのアルトマルクト広場は現在もクリスマスマーケットで人気。

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