フランスの作曲家ビゼーの代表作を問われたなら、「カルメン」と答えることでしょう。
ビゼーの作品については『ビゼー「アルルの女」第1・2組曲』をご紹介したことがありました。
今回はビゼー作曲のフランス語によるオペラ、歌劇「カルメン」及び「カルメン」組曲に焦点を当ててみます。
(この記事では以降、「オペラ」を「歌劇」で統一します。)
■ビゼー「カルメン組曲 / アルルの女 第1組曲&第2組曲」
- 指揮:小澤征爾
- 演奏:フランス国立管弦楽団
- 東芝EMI【EAC-90213 STEREO】
ビゼー作曲・歌劇「カルメン」とは

歌劇「カルメン」は、フランス・ロマン派の作家プロスペル・メリメの小説「カルメン」が基になっています。
ビゼーと親交のあったリュドヴィク・アレヴィとアンリ・メイヤックが台本(リブレット)を共同制作。
歌劇「カルメン」の初演は、1875年(明治8年)3月3日にパリのオペラ=コミック座にて行なわれました。初演の評判は残念なものだったと伝えられています。
今では、カルメンの人気の高さは世界規模と表現しても過言ではないからね。
少なくともカルメンの楽曲は、どこかで耳にしている人が多いはずだよ。
初演では大成功とは言えませんでしたが、その後のお客さんの感想はそれほど悪くはなかったようです。それを証明するかの如く、ビゼーのもとにはカルメンのウィーン公演の依頼が届きます。但し、次の条件付きでのことでした。
その条件とは、台詞をレチタティーヴォ(話をするような独唱法)に改作して「グランド・オペラ版」にするというものでした。
しかしビゼーは、持病で養生することに…
そして、初演から3か月後に心臓発作により急死します。
ウィーン公演に間に合わせたのは、ビゼーの友人である作曲家のエルネスト・ギローでした。
その後、カルメンにはいくつかの版が存在することになります。
主要なものをピックアップしますね。
- 原典版
- オペラ・コミック版
- グランド・オペラ版
- メトロポリタン歌劇場版
歌劇「カルメン」のあらすじ

歌劇「カルメン」は全4幕で構成されています。
カルメンの舞台は、1820年代のスペイン・セヴィリアです。フランスではありません。
カルメンは、タバコ工場で働くジプシーの妖艶な女性です。カルメンに想いを寄せるのは、竜騎兵伍長ドン・ホセと闘牛士エスカミーリョ。
恋の物語と言っても、ちょっとドロドロした三角関係です。
騒ぎを起こして牢屋に入れられることになったカルメン。その護送中にカルメンの誘惑に負けて逃がしてしまうドン・ホセ。カルメンは酒場で会うと言い残します。
ところがドン・ホセには許嫁(いいなずけ)がいました。許嫁をあとに残してカルメンを追うドン・ホセでしたが、そのころカルメンはエスカミーリョに想いを寄せるようになっていました。
ドン・ホセのもとには許嫁がやってきます。もちろん、思い直すように説得するためです。
そこにエスカミーリョが現れて、ドン・ホセと決闘することに。しかし、カルメンの心はドン・ホセに戻ることはなかったのです。
話は闘牛場へと移ります。
エスカミーリョと付き合っていたカルメン。闘牛場にエスカミーリョが入っていったあとに、ドン・ホセが姿を現します。
ドン・ホセはカルメンへの想いを捨てきれていなかったのです。
カルメンに復縁を迫りますが拒絶されるドン・ホセ。逆上したドン・ホセはカルメンを刺し殺してしまいます。
ドン・ホセは嫉妬に狂い、冷静さを失った挙句の果てに、人を殺めてしまうんだからね。
そういえば、アルルの女の場合も「嫉妬」が悲劇を招いたね。
「カルメン」組曲とは

声楽無しのオーケストラ演奏のみで演奏されることもある「カルメン」組曲。作曲者であるビゼー自身がチョイスしたわけではありません。
ホフマン版やシチェドリン版といった編成の「カルメン」組曲が存在します。さらには収録なども関係するためか、指揮者によっても違いが見られます。
とはいえ、もっとも耳に馴染んでいて、独立して演奏されることも多い「第1幕への前奏曲」は組み込まれるのが一般的です。
今回のレコードにおける「カルメン」組曲の編成をご紹介します。
■第1組曲より
- 第5番「前奏曲」:歌劇開幕前に演奏される曲。カルメン全曲を通じて最もポピュラー。
- 第1番「前奏曲」:暗い旋律は「運命の動機」と呼ばれる。悲惨な結末を暗示。
- 第2番「間奏曲」(アラゴネーズ):第4幕への間奏曲。
- 第3番「間奏曲」:当初は「アルルの女」用に作られた曲。
■第2組曲
- 第2番「ハバネラ」:劇中においては第1幕でカルメンが歌う名曲。スペインを感じる曲。
- 第5番「ジプシーの踊り」:静かに始まり徐々に興奮へと盛り上がっていく。
ジョルジュ・ビゼーとは

歌劇「カルメン」や「アルルの女」で有名な、19世紀のフランスを代表する作曲家のひとりジョルジュ・ビゼーについては『すぐわかる!ジョルジュ・ビゼーとは|歌劇「カルメン」「アルルの女」で有名な音楽家』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:ビゼー「カルメン」組曲について

「カルメン」組曲からは、熱く・激しいスペイン情緒が感じられます。歌劇のストーリーに関係なく、どこかで聴いたことある曲が盛り込まれています。そのため、親しみやすい組曲です。
組曲を劇中から分離されたものとして受け入れるなら、自分のフィーリングで生活音の一部として聴くのもありだと思います。
「カルメン」組曲を聴くのにおすすめのシチュエーション
私の個人的独断で、各曲を聴くにふさわしいと思われるシチュエーションをご紹介します。
【第1組曲】第5番「前奏曲」 | 元気になりたいとき。自分を奮い立たせたいとき。 |
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【第1組曲】第1番「前奏曲」 | 劇中で聴くのはいいが、自分で聴こうとは思わないかな。 |
【第1組曲】第2番「間奏曲」 | 大事なプレゼンがある日の朝。激しく始まり落ち着きも与えてくれる気がするから。 |
【第1組曲】第3番「間奏曲」 | 仕事や家事の合間の、ほっと一息つきたいとき。 |
【第2組曲】第2番「ハバネラ」 | 一日の労務から解放され、くつろいだ気分のとき。 |
【第2組曲】第5番「ジプシーの踊り」 | 天気のいい日のお出掛け前。ワクワク感が高まりそう! |
あなたなりに「カルメン」組曲の楽しみ方を探してみてはいかがでしょうか?
まとめ
- 「カルメン」は最もポピュラーな歌劇。
- ストーリーは血なまぐさい恋の三角関係の悲劇
- 「カルメン」組曲の選曲は指揮者によって違うことも…。
■CD版のご紹介になります。
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