ベートーヴェン3大ピアノ・ソナタの1曲「月光」。
ピアニストでもあったベートーヴェンが30歳のときに作曲したピアノ・ソナタ「月光」は、ベートーヴェンの初恋にまつわるエピソードと相まって、センチメンタルでステキな楽曲です。
ピアニスト ヴィルヘルム・ケンプの演奏で、ベートーヴェンの「ピアノ・ソナタ第14番≪月光≫」を聴いた感想をお伝えします。
■ヴィルヘルム・ケンプ|ベートーヴェン ピアノ・ソナタ≪悲愴≫≪月光≫≪ワルトシュタイン≫≪熱情≫
- ピアノ:ヴィルヘルム・ケンプ
- ドイツ・グラモフォン
- 発売元:ユニバーサル ミュージック株式会社【UCCG-3344】
- 販売元:ビクターエンターテインメント株式会社
ベートーヴェン作曲「ピアノ・ソナタ第14番≪月光≫」とは

「ピアノ・ソナタ第14番≪月光≫」は、ベートーヴェンが1801年(寛政13年・享和元年)に作曲した楽曲です。
ベートーヴェン自身は「幻想曲風ソナタ」と名付けましたが、「月光」の通称で親しまれることになります。
「月光」と呼ばれるようになったの経緯には諸説あるようですが、次の説が有力なようです。
この題名に関してはいろいろな話が伝えられているが、後年レルシュタープという人がこの曲の第1楽章を評して、「月の輝く夜、スイスのルツェルン湖上を舟で行くがごとし」と述べたことから、のちにこの名前が付けられたというのがもっとも確からしい。
出典:『「ヴィルヘルム・ケンプ|ベートーヴェン ピアノ・ソナタ≪悲愴≫≪月光≫≪ワルトシュタイン≫≪熱情≫」ライナーノーツ』
渡邊學而著 5ページ
確かに、第1楽章は月の光に照らされた静けさが似合います。
もうひとつの「ピアノ・ソナタ第14番≪月光≫」にまつわるエピソードとしては、この曲を献呈された人物に関するものです。
その相手とは、ジュリエッタ・グィッチャルディ伯爵令嬢のことです。この女性は、ベートーヴェンの初恋の人だと言われています。
ジュリエッタ・グィッチャルディがベートーヴェンのピアノの弟子になったのは、10代半ばのこと。当時30歳だったベートーヴェンとは、身分も年齢も違い過ぎる状況でした。
結局、ベートーヴェンの初恋は実らず、ジュリエッタ・グィッチャルディは別の男性(ガルレンベルク伯爵)と結婚します。
当初、ジュリエッタ・グィッチャルディに献呈されるのは「ピアノ・ソナタ第14番≪月光≫」ではなかったようですが、結果的に「月光」になったとのこと。
「ピアノ・ソナタ第14番≪月光≫」は、ベートーヴェンの人生における重要な場面を象徴するかのような曲になっていると思います。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンとは

ベートーヴェンについては『すぐわかる!ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンとは|その生涯と作品たち』をご参照ください。

ヴィルヘルム・ケンプとは

20世紀のドイツでピアニストとしてだけでなく作曲家や著作家、教育者としても活動したヴィルヘルム・ケンプの生涯については、『すぐわかる!(ピアニスト)ヴィルヘルム・ケンプとは』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:ベートーヴェン作曲「ピアノ・ソナタ第14番≪月光≫」by ケンプについて

第1楽章がソナタ形式ではないことから、『ピアノ・ソナタについて理解しよう!ベートーヴェン 4大ピアノ・ソナタ|ピアニスト ヴィルヘルム・ケンプ』で紹介した「ピアノ・ソナタの定義」とは違っています。
しかし、ピアノ・ソナタにはこのような例外もあるようです。
第1楽章から第3楽章までを段階的に激しさを増していく感じが、刺激的でもあり、自然に受け入れられる感じがします。
ヴィルヘルム・ケンプの熟練の演奏の魅力を堪能できます。【 】は今回聴いたCDの演奏時間です。
■第1楽章【6分02秒】
薄暗い静寂の中、繰り返される3連音符が印象的。終始厳かな雰囲気で奏でられます。
深いところにある記憶をじっくりと想い巡らしているようです。
■第2楽章【2分20秒】
第1楽章とは対照的な明るい空気が全体を支配します。
2分30秒ほどの短い楽章で、ホッと一息付けそうな感じです。
■第3楽章【5分30秒】
ソナタ形式で書かれた楽章です。
突然の激しさで幕を開けます。熱い慟哭にも似た感情が弾けているかのようです。勢いを失うことなく、駆け抜けます。
おそらく、第1楽章や第3楽章はどこかで耳にしている旋律だと思います。ピアノ・ソナタに疎い私でもそうでしたから。
あらためて「月光」を聴いてみると、短い曲ではありますが、徐々に盛り上がっていくように構築されているすばらしい楽曲だと感じます。
もちろん「天国の階段」は、楽章に分かれていないひとつながりの楽曲です。
しかし、悲しみを帯びた静かなギターのイントロで始まり、途中からドラムなどが加わって膨らみを帯び、最後はハードに最高潮に達するといった楽曲構築イメージが似ています。
次の2点を重ね合わせて聴くと、勝手ながら幻想的な印象が強まります。
- 30歳のベートーヴェンが10代の少女に恋心を抱いていた。
- 「月光」は、ベートーヴェンが付けた呼び題名ではないが曲のイメージに合っている。
「幻想曲風ソナタ(月光)」は、結果的に名曲と呼ばれるにふさわしいピアノ・ソナタだと思います。
ヴィルヘルム・ケンプのピアノ演奏は「ピアノ・ソナタ第14番≪月光≫」を存分に堪能できますよ!
まとめ
- 第1楽章がソナタ形式ではないピアノ・ソナタ。
- 聴き手を引き付ける楽章構成。
- ケンプの演奏が見事!
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