ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」を聴きたくなって、レコードをに手を取りました。
クラシック音楽の定番中の定番ともいえる「運命」。様々な場面で耳にしてきた冒頭の「ダダダダーン」には少し嫌気がさしていますが、最後まで聴くと「やっぱりすばらしい」と思ってしまうのが不思議です。
指揮はヘルベルト・フォン・カラヤン、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、蒸し暑い日に活力を得ようと試みた次第です。
■カラヤン/ベートーヴェン「交響曲第5&9番」
- 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
- 演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- ソプラノ:ジャネット・ペリー
- アルト:アグネス・バルツァ
- テノール:ヴィンスン・コウル
- バリトン:ホセ・ヴァン・ダム
- ウィーン楽友協会合唱団
- 合唱指揮:ヘルムート・フロシャウアー
- Deutsche Grammophon
- 発売元:Polydor International GmBH【2LP 413 933-1]】
ベートーヴェン作曲 交響曲第5番「運命」とは

ベートーヴェンが交響曲第5番を完成させたのは1808年(文化5年)春のことでした。
ところがその制作期間を考えると、数年程遡ることになります。1804年(享和4年・文化元年)に交響曲第3番「英雄」を完成させたその直後にはスケッチ(絵を描く際の下書きにあたる作業)が始まっています。
交響曲第5番が完成するまでには、その他の作品も誕生しています。
いくつかご紹介しますね。
- ピアノ・ソナタ第23番「熱情」
- 歌劇「フィデリオ」
- ピアノ協奏曲第4番
- 弦楽四重奏曲第7~9番
- ヴァイオリン協奏曲
etc...
しかも交響曲第6番「田園」の作曲と並行して行われていたというのですから、ベートーヴェンの創作意欲と能力に驚くばかりです。
交響曲第5番に付された「運命」という名称は、作曲者のベートーヴェンが付けたものではありません。ベートーヴェンの弟子のひとりアントン・シントラーが、第1楽章の出だしの「ダダダダーン」は何を示しているのかという質問をした際に、「運命はこのように扉を叩く」と言ったことに由来しています。
ただし、このアントン・シントラーという人物をベートーヴェンはあまり信用していなかったようです。秘書や食事、病床についていたベートーヴェンの身の回りの世話をしてくれる便利な存在としてそばに置いていた節があります。
シントラーはその後、ベートーヴェンの唯一の後継者的立場を得てベートーヴェンの伝記を出版します。
シントラーはベートーヴェンの貴重な資料である「会話帳」の半数以上を破棄し、自身に都合の良いように改竄(かいざん)していたとも言われているので、彼の記した伝記も「運命」の由来も信憑性(しんぴょうせい)に疑いが残ります。
交響曲第5番の話に戻します。
この作品の初演は1808年(文化5年)12月22日にウィーンのアン・デア・ウィーン劇場で行なわれました。この演奏会では、交響曲第5番だけでなく、交響曲第6番、ピアノ協奏曲第4番などもプログラムに加えられていました。
おもしろいのは、この演奏会では「交響曲第5番が第6番として」、「交響曲第6番が第5番として」初演されたことです。
残念なことにこの初演は失敗に終わります。劇場の暖房設備の問題で寒い状況の中、プログラムが4時間を超える長さだったことなどが関係しています。
初演は失敗でしたがその後まもなく交響曲第5番は評価され、オーケストラも演奏するようになっていきます。
ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」は、誰もが知っているクラシック音楽のひとつと言っても過言ではないと思います。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンとは

ベートーヴェンについては『すぐわかる!ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンとは|その生涯と作品たち』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」について

クラシック音楽における交響曲第5番「運命」は、知名度の高さでは群を抜いていると思います。何と言っても「ダダダダーン」が有名ですよね。
ですが、交響曲第5番「運命」の魅力はそれだけではありません。「運命」を丸ごと聴いてみることをおすすめします。決して「ダダダダーン」のインパクトだけの曲ではありませんから。
ここからは各楽章ごとに感想をお伝えします。
■第1楽章
あの有名な「ダダダダーン」で始まります。この「ダダダダーン」が第1楽章の軸となるフレーズとなります。
だからといって怒濤のような響きだけでは終わりません。ホルンに続いて第2主題の穏やかで流麗な旋律が入り混じるので退屈しません。
中盤以降は音の厚みが増す場面と爽やかな表情を繰り返しながらクライマックスにむかいます。バサッと潔い終わり方です。
■第2楽章
穏やかで落ち着いた冒頭から、雄大な行進のような雰囲気に移ります。その後はゆったりと進行します。
音の厚みのメリハリが効いた楽章です。全体的に柔らかみのある面持ちで、時々アクセントがつく感じです。
終盤に差し掛かるころになると、少しユーモラスに感じる場面もあります。ラストは少し駆け足のようになりながら、ジャンと終わります。
■第3楽章
一番短い楽章ながら勇壮な雰囲気を持ち、ドラマチックに揺れ動く感じがたまりません。
コントラバスの刻むリズムがカッコいい。終盤は音量が低い状態が続きますが、ラストは途切れなく次の楽章に移行します。
■第4楽章
個人的に「運命」で最も好きな楽章です。
表情の豊かさが他の楽章に勝っています。チャイコフスキーの序曲「1812年」を思わせる場面もあります。
金管楽器の厳かさを伴った雄大な雰囲気が印象的です。「静と動」「明と暗」が上手く表現されています。
中盤以降は雄大で心地よいリズムを伴った流れが曲を支配します。
最後は堂々としていて、「これが交響曲だ!」と言わんばかりのフィナーレです。
指揮者によってテンポのとり方は様々ですが、カラヤンの指揮する交響曲第5番は間延びしないので軽快な印象を受けます。好みによりますが、「もっとゆっくりがいい」「重厚感がない」と感じる人もいることでしょう。
私は今回ご紹介しているカラヤン&ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の「運命」の演奏が好きです。
勝手な理想を述べるならば、ベートーヴェンが求めた「運命」の演奏と、指揮者&オーケストラが作曲者の予想しなかった魅力を引き出した演奏の聴き比べをしてみたいものです。
ベートーヴェンの交響曲第5番は「ダダダダーン」だけでなく魅力あふれる楽曲です。
ベートーヴェン生誕250周年の今年、交響曲第5番「運命」を楽しんでみてはいかがでしょうか。
まとめ
- 「運命」はベートーヴェンが付けたわけではない。
- 「ダダダダーン」は有名で、おそらくはクラシック音楽で最も知られたフレーズのひとつ。
- 個人的には第4楽章が好き。
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