木陰で読書できるとは、なんと優雅な時間の使い方でしょう。
クロード・モネが描いた「読書する女」は、私の願望にも似た思いを刺激します。
1994年(平成6年)にブリヂストン美術館で開催された「モネ展」の図録をもとに想いを馳せてみました。
クロード・モネ作「読書する女」とは

- 制作年:1872年
- サイズ:48.5 × 65.1cm
- 油彩、キャンヴァス
クロード・モネが「読書する女」を描いたのは、アルジャントゥイユにある自宅の庭でのことだったようです。
モネがアルジャントゥイユに居を構えたのが1871年(明治4年)の12月頃のことです。「読書する女」はその翌年である1872年(明治5年)に描かれた作品です。
アルジャントゥイユについては『当時、一番印象に残った作品!クロード・モネ作「アルジャントゥイユの散歩道」|ブリヂストン美術館「モネ展」より』でも触れましたが、1870年代、この場所では多くの画家が活動していました。
モネと同じ時期にアルジャントゥイユで活動していた画家を列挙してみます。モネにとっては親しい友人たちでもあったわけです。
- ピエール=オーギュスト・ルノワール
- ベルト・モリゾ
- アルフレッド・シスレー
- ギュスターヴ・カイユボット
- エドゥアール・マネ
etc...
アルジャントゥイユはパリから近く、鉄道で15分の距離にあります。近代化が進む過程で、牧歌的な風景やそれまでになかった新しいモノ(建造物など)が混在するアルジャントゥイユは、画家たちにとって絵画を制作する上で多くの画題を提供したのでしょう。
「読書する女」に話を戻しますね。
この作品に描かれている女性についてはハッキリしていないようですが、2つの説に絞られるようです。
- モネの奥さんであるカミーユ
- 画家仲間のシスレーの妻
モネ展の図録の解説では、モネ婦人のカミーユである可能性が高いとのこと。
モネが作品で人物を大きく扱うのは依頼主の肖像画を描くときくらいで、それ以外のほとんどは家族をモデルにしていたことを理由に挙げています。
人物を取り巻く画面のほとんどは植物の緑色が占めていて、読書する女性の薄いピンク色の衣類が映えて見えます。よく晴れた日の木陰であることは、差し込んでいる木漏れ日や画面右の木の枝が及ばない草の色でわかります。
人物は写実性が高いですが、木の枝葉は粗めの筆触で描かれています。
否が応でも読書する女性に視線が向くように仕向けられていて、美しい植物たちは女性を含めた作品を引き立てるかのような役割を担っています。
当時のフランス人女性の服装に疎いためか、スカートの面積が広いことに驚いてしまいます。こういうものなのでしょうか? (服装に対する知識・関心の乏しさは現代でも変わりません…)
作品のタイトルは「La liseuse」で「読書する女」と邦訳されていますが、もう少しステキな感じの方が良かったのではないかというのが個人的な感想です。「木陰で読書する女性」とかはどうでしょうか。
いずれにしてもモネの「読書する女」からは、春の日の清々しさと優雅な雰囲気を感じます。このような環境で、読書を楽しみたいものです。
クロード・モネとは

クロード・モネについての紹介は『すぐわかる!クロード・モネとは|印象派を代表する画家の生涯』をご参照ください。

わたなびはじめの感想:クロード・モネ「読書する女」について

モネは「読書する女」という作品で、人物と自然を融合させることに成功していると思います。緑色と白に近いピンクの組み合わせは、花にもある組み合わせなので違和感を感じません。
この作品のシチュエーションに憧れる一方で、虫の存在が気になります。もちろん作品に描くことはないでしょうが、屋外で読書する際に気付かないうちに虫が身体を這っているなんてことは起こり得ることです。
小さい頃には抵抗を感じなかった虫ですが、いつの間には触れなくなっていました。上京したての頃には、ゴキブリを目にしても動じなかったのに…(単に実物を目にしたことが無かったからかもしれませんが…)
私は植物についても詳しくはありません。
この記事で何度か「木陰」という表現をしていますが、よく見ると女性の背後には細い茎が密集しているようにもみえます。太い幹の周りにある細い枝なのか、そもそもが細い茎の植物の集合体なのかよくわかないところです。
モネ展の図録の解説を読み直したところ、どうやら「ライラック」が描かれているようでした。
ライラックはヨーロッパ原産の落葉樹で、「リラ」とも呼ばれます。
花は春に咲くようです。
いずれにしても、植物の緑の色合いや木漏れ日などから季節感も伝わってくるステキな作品です。
最後に、いつものわたなび流の感想で終わりたいと思います。
クロード・モネ作「読書する女」は「春から夏にかけて、自宅で鑑賞したい(欲しい)と思える作品」です。
新緑の季節の雰囲気を感じられそうで、部屋が華やぎそうですから。
秋冬は美術館でじっくり鑑賞したいですね。
まとめ
- アルジャントゥイユの自宅の庭で描かれたと思われる作品。
- モデルはおそらくモネの妻カミーユ。
- 緑の中に人物が溶け込んでいるような、自然の魅力を感じる作品。