美術作品

「聖女ルフィーナ」を連想?スルバラン、フランシスコ・デ作「聖エウフェミア」|国立西洋美術館「スペイン王室コレクションの美と栄光 プラド美術館展」より

プラド美術館展 スルバラン、フランシスコ・デ「聖エウフェミア」

2002年(平成14年)に国立西洋美術館で開催された「スペイン王室コレクションの美と栄光 プラド美術館展」。

そこでは17世紀スペイン・バロック期の画家フランシスコ・デ・スルバランの作品「聖エウフェミア」が展示されていました。

1994年(平成6年)伊勢丹美術館で開催された「アイルランド国立美術館名品展」の展示作品であった「聖女ルフィーナ」との類似点を感じずにはいられませんでした。

プラド美術館展の図録をもとに回想してみます。

  • 制作年:1636年頃
  • サイズ:83.0 × 73.0cm
  • 油彩、カンヴァス

フランシスコ・デ・スルバラン作「聖エウフェミア」とは

プラド美術館展 スルバラン、フランシスコ・デ「聖エウフェミア」

聖エウフェミアとは

聖エウフェミアとは、どのような人物だったのでしょうか?

エウフェミアは4世紀頃に生きたキリスト教徒で、殉教したとされる処女聖女です。

現在のトルコにあったとされる古代都市カルケドンでエウフェミアは生まれました。

「スペイン王室コレクションの美と栄光 プラド美術館展」の図録解説などを参考にまとめると、エウフェミアはキリスト教ではない異教(ギリシア神話に登場する戦を司る神アレース)の儀式で供物を捧げることを拒んだために捕縛され、拷問を受けました。

伝承によれば捕縛されたのは49人で、エウフェミアはその一人でした。

おそらくその拷問は、捕縛されたキリスト教徒の信仰を否定させるために行なわれたのでしょう。
その方法が恐ろしく、現代では想像しがたいものです。

  • 獅子の前に投げ出される。
  • 鋸(のこぎり)の刃が付いた車輪で轢(ひ)かれる。
  • 火の中に投げ込まれる。

etc...

こういった拷問を受けたにもかかわらず、誰一人信仰を捨てなかったそうです。
エウフェミアも拷問の都度、奇跡により助けられたというのです。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
獅子(ライオン)と言えば、旧約聖書の預言者ダニエルを連想するなぁ。

エウフェミアの最後については諸説あるようですが、プラド美術館展の図録解説によれば剣で刺されて絶命したようです。

亡くなったのは303年、カルケドンでのことだと言われています。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
2002年(平成14年)のプラド美術館展におけるスルバランの作品名(邦訳)には「聖」とあり、「聖女」とは記載されていないけれど、エウフェミアは「聖女」とされた人物のようだな。

ということは、女性の場合は「聖」=「聖女」という意味なのかな。

スルバランの描いた「聖エウフェミア」について

フランシスコ・デ・スルバランはスペイン・セビリアで活躍していた画家で、工房の作業組織化の手腕にも長けていた人物でした。

そのため今回ご紹介している「聖エウフェミア」の制作についても、全てをスルバランが一人で行なったとは考えられていないようです。
だからといって、100%彼の弟子による作品ともいえないのでしょう。

「聖エウフェミア」の左手に持たされているのは拷問を象徴する「鋸の刃」です。
(女性が鋸の刃を持つ姿って、多少なりとも違和感を感じませんか?)

少し面長で色白の肌、伏し目がちな表情からは清楚さを感じます。

表情、胸元に添えられている親指と人差し指を広げた右手の仕草、そして服装も含めて総合的に醸し出される雰囲気からは、「聖エウフェミア」の確固たる信仰心が表現されているようです。

小豆色の衣服の上に羽織っている黄緑色の外套のような生地からは、絹(シルク)のような質感が伝わってきます。
この絹地の質感も、「聖エウフェミア」の清楚な印象に影響を与えていると思えてなりません。

派手さは感じませんが、落ち着きと美しさを感じる作品です。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
「聖エウフェミア」については、全身が描かれているヴァージョンがイタリア・ジェノヴァのビアンコ宮に残っているそうだよ!

フランシスコ・デ・スルバランとは

スペイン・セビリア【スペイン広場】スペイン・セビリア【スペイン広場】

17世紀スペイン・バロック期にセビリアで活躍した画家フランシスコ・デ・スルバランについては、『すぐわかる!フランシスコ・デ・スルバランとは』をご参照ください。

すぐわかる!フランシスコ・デ・スルバランとは
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わたなびはじめの感想・スルバラン「聖エウフェミア」について

アイルランド国立美術館名品展 フランシスコ・デ・スルバラン「聖女ルフィーナ」

あらためて「スペイン王室コレクションの美と栄光 プラド美術館展」の図録で「聖エウフェミア」目にしたとき、「アイルランド国立美術館名品展」の「聖女ルフィーナ」を思い浮かべました。

表情や仕草(ポーズ)は違いますが、二人の女性の表情から「似た雰囲気」を感じたのです。

作者を確認するとやはりスルバランでした。

プラド美術館展の図録解説を読み、スルバラン(工房)が聖女像のシリーズを手掛けていたことを知りました。

わたなびはじめ
わたなびはじめ
女子修道院からの需要が高かったみたいだね。
それと、聖女像シリーズは海外にも輸出されていたようだよ。

同じ画家が手掛けた作品であれば、描く対象は違ってもその絵師特有の特徴(類似点)があってもおかしくないですよね。

私は「聖エウフェミア」と「聖女ルフィーナ」に、派手さはないけれど清楚で内面の強い女性像という共通点を感じ取ったのだと思います。

両作品を並べて鑑賞してみたい気持ちにかられました。

最後に、いつものわたなび流の感想で終わりたいと思います。
フランシスコ・デ・スルバランの描いた「聖エウフェミア」は、「自宅で鑑賞したい(欲しい)と思える作品」です。

私は聖人や聖女を信仰しているわけではありませんが、気持ちが落ち着きそうな気がするのです。
「聖女ルフィーナ」よりサイズも小さめですから。

アイルランド国立美術館名品展 フランシスコ・デ・スルバラン「聖女ルフィーナ」
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まとめ

スルバラン「聖エウフェミア」
  1. スルバランは自身の工房で聖女像シリーズを制作した。
  2. 聖女像シリーズは女子修道院からの依頼や輸出品としての需要もあった。
  3. 聖エウフェミアは、キリスト教の信仰を守って殉教したとされる女性のひとり。

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