チャイコフスキーの三大バレエ組曲の中から「白鳥の湖」をご紹介します。
カラヤンとウィーン・フィルの演奏は、音楽を聴いていながらにしてバレエの光景が浮かんでくるようです。リマスターされ、より音が鮮明になった演奏からは、さまざまな表情が感じられますよ。
白鳥の湖のあらすじもご紹介します。
それと同じCDに収録されている作品だよ。
通常、バレエの白鳥の湖では、オデット(白鳥)とオディール(黒鳥)は1人で演じられます。顔は同じでも性格の全く違う女性を踊り分けるのですから大変です。しかも高度な技術力も求められる役です。
組曲の場合は、バレエのストーリーにとらわれずに選択&編成された音楽を楽しむもの。音楽だけに集中して存分に楽しめますよ。
■チャイコフスキー:三大バレエ組曲 カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー
- 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
- 演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
- DECCA【UCCD-4401】
チャイコフスキーが白鳥の湖を作曲した経緯

バレエ「白鳥の湖」が作られたのはロシアですが、物語の舞台はドイツです。
チャイコフスキーはロシアを代表する大作曲家です。また、作曲の依頼をしたのもロシアの伝統あるボリショイ劇場でした。
しかし、白鳥の湖のストーリーの基になったのは、童話「奪われたヴェール」というドイツ人作家ヨハン・カール・アウグスト・ムゼーウスの作品です。
チャイコフスキーにとっては、「白鳥の湖」が初めてのバレエ音楽作品となりました。
ところが…バレエ「白鳥の湖」の初演当時の評判はイマイチだったようです。曲自体の問題というよりは、振り付けやダンサー、指揮者といった別の要素に問題があったからです。そうこうしている間に、いつしか上演されなくなっていくことに…
ところが、そんな「白鳥の湖」を蘇らせた人たちがいました。
プティパと弟子のイワノフです。
プティパたちによって改良されたバレエ「白鳥の湖」は1895年(明治28年)に蘇演されました。チャイコフスキーの亡くなった2年後のことでした。
今では「バレエと言えば、白鳥の湖!」といった連想をされるまでになった名作にも、不遇な時代があったのですね。
チャイコフスキーとは

チャイコフスキーについては、『すぐわかる!チャイコフスキーとは|チャイコフスキーの生涯と代表作について』をご参照ください。

組曲「白鳥の湖」とは

組曲「白鳥の湖」とは、管弦楽団による演奏会向けにバレエ音楽「白鳥の湖」からセレクトされたものです。
組曲の選曲そのものにチャイコフスキーは関係していません。チャイコフスキーにも組曲を作る計画らしきものはあったようですが、実際には実現していません。
組曲の場合には、バレエの曲順にとらわれずに構成されています。
組曲「白鳥の湖」は、チャイコフスキーが亡くなった後の1900年(明治33年)に選曲されています。チャイコフスキーに組曲を作る気持ちを伝えられていたユルゲンソンが、次の選曲をしたのでした。
- 情景【第2幕】
- ワルツ【第1幕】
- 四羽の白鳥の踊り【第2幕】
- 王子とオデットのグラン・アダージョ【第2幕】
- ハンガリーの踊り(チャールダーシュ)【第3幕】
- 終曲【第4幕】
作曲者自身がセレクトした組曲でないことも関係しているのでしょう。指揮者によっては、上述の選曲以外のケースもあります。
今回ご紹介しているCDに収録されているカラヤンの選曲は、曲名の違いはありますがユルゲンソンの選曲と同じものだと思います。
- 情景【第2幕】
- ワルツ【第1幕】
- 小さな白鳥たちの踊り【第2幕】
- 情景と白鳥の女王の踊り【第2幕】
- チャールダーシュ【第3幕】
- フィナーレ【第4幕】
白鳥の湖とは、そのストーリー(あらすじ)を紹介

「白鳥の湖」は「フランダースの犬」同様、終わり方に2パターンあります。
ハッピーエンドか、悲劇か、です。
ここでは、初演の悲劇のバージョンをご紹介します。
おもな登場人物は次の通りです。
- 美女:オデット
- 王子:ジークフリート
- 悪魔:ロットバルト
- ロットバルトの娘:オディール
ある日、花畑で花摘みをしていたオデットは、ロットバルトの呪いで白鳥に姿を変えられてしまします。
ジークフリート王子は21歳の誕生日に、王妃(母)に結婚相手を決めるように求められます。まだ結婚を意識していなかったジークフリートは、どうしたものかと気が重い状態で湖に出かけます。
湖には白鳥たちが泳いでいました。ところが…、月の光を浴びると白鳥の姿は女性に変わるのでした。
月の光で一時的に呪いの解けたオデットの姿に、ジークフリートは強烈な恋心を抱くことに。
オデットはジークフリートに言います。「呪いを解くには、まだ女性を愛したことのない男性による真実の愛の誓いが必要」だと。
ジークフリートはオデットを翌日の舞踏会に誘います。
さまざまな国の踊りが披露されている舞踏会。
ここにオディールが登場します。なんとオディールはオデットにそっくりだったのです。
ジークフリートを誘惑するオディール。王子は花嫁としてオディールを指名してしまいます。
それを目撃したオデットは、悲しみのうちに湖に帰ります。
湖に駆けつけ、オデットに必死の思いで許しを請うジークフリート。そこにロットバルトが姿を現します。
勝ち目はないと感じつつもジークフリートはロットバルトに戦いを挑みます。勝利したジークフリート。しかし、ロットバルトの呪いは解けませんでした。
絶望のうちにオデットとジークフリートは、湖に身を投げるのでした。次の世で結ばれると信じて。
わたなびはじめの感想:組曲「白鳥の湖」について

カラヤン&ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による組曲「白鳥の湖」は、艶やかで伸びのある演奏になっています。悲しくて切ない表情も音色から感じ取ることができます。バレエの光景も頭に浮かんでくるようです。
リマスタリングの効果もあると思いますが、音が非常に鮮明です。CDのデザインが、レコード模様になっています。(個人的にはあまり好きではありませんが…)
組曲「白鳥の湖」に収められている楽曲には、誰もが聴いたことのある名曲たちが含まれています。退屈するどころか、聞き入ってしまいます。
個人的には購入して良かったと思えるCDです。いつかはレコードも欲しいですね。
まとめ
- 耳馴染みのある曲多数あり。
- カラヤンとウィーン・フィルの組み合わせも抜群!
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